上 下
21 / 88

坂上 幸 3

しおりを挟む
最初は俺にも怖がって、近寄っては来なかった。

でも、たった1回、母親の外出中に、いつもと同じように外に出されていた幸を家に入れてやったことがあった。

ほんの気まぐれ。

ただそれだけなのに、俺より6コも下の幸は、俺に懐いてくるようになった。


幸の身体にはいつも決まって痣があった。

日常的に虐待を受けていたんだろう。

だからちょっとした優しさでも、まるで救いの神のように感じる。

俺はそれを利用した。

罪悪感なんてない。
無理矢理ではないし、あっちも喜んでいるのだから。


時が過ぎ、俺が大学を卒業して家を出ると決めたとき、幸に一緒に来ないかと誘った。

幸は迷わずOKしてくれた。

あんなところにいるくらいなら、俺のところのほうがいいに決まってるからな。


幸の母親の反対を押し切って、幸は親子の縁を切ってまで俺についてきた。


もちろん、俺が誘ったのは特別な意味なんかじゃなく、家政婦代わりとしてだけど。

金欠になればメシを頼み、時には性欲の捌け口に。

幸は俺には逆らわない。
俺にとって最高のお人形だった。
しおりを挟む

処理中です...