素直になれなくて

吉野ゆき

文字の大きさ
上 下
35 / 50

浮上

しおりを挟む
中にはショートケーキにモンブラン、レアチーズケーキなど、いろいろな種類のケーキが10個も入っていた。

きっと、何が好きかわかんなくて一種類ずつ買ってきたんだろう。

この無愛想な人が。
そう考えると少し可笑しかった。
悪い人じゃないのかな?


私はレアチーズケーキを、母はショートケーキ選んだ。

ゴクリと喉がなる。

「いただきます」

一口ケーキを口に運ぶと、口いっぱいにケーキの甘さが広がる。
体中に浸みわたるみたいだ。

「おいしい~!!」


私達は同時に声をあげる。
お母さんのこんな笑顔、いつくらいぶりだろう。



あ、私今、心から笑ってる。

私はケーキの箱を見つめる。


お父さんもきっと喜ぶぞ!

甘いものがストレスにいいって本当だな。

こんな気持ち、久しぶり!



有原さん…か。


お金持ちなのに、イヤな感じの人じゃなかったな…。
無愛想だったけど。


私はまた、無意識のうちに口の端が上がっていた。



少しだけ、病院へ行くのがイヤじゃなくなった気がした。
しおりを挟む

処理中です...