素直になれなくて

吉野ゆき

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暗闇の中で

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病院に着き、病室へと繋がる少しざわめきのある廊下を歩く。

病室はもうすぐそこなのに―
私の足が止まる。


動かない。
動けない。


仕事がひとつなくなった。
バレてはいけない。
顔にだしちゃダメ。
いつも通りに振る舞って、早く変わりの仕事を見つけなきゃ。

でも、夜の仕事なんてどこも一緒。
私に堪えられる?


いつまで?
こんな生活いつまで続くの?
ずっと?一生?


誰か、助けて――――。



気づいたら私は、その場にしゃがみ込んでいた。



いつまでそうしていただろう。



「大丈夫か?」


ふと上から低く透る声と、甘い香りが降りてくる。


顔を上げて声の主を見る。

あ、この人、ケーキの…


私はバッと立ち上がり

「大丈夫です」

視線を逸らして答えた。


なぜか目を見たら、泣いてしまいそうだったから。


人前でなんか、泣きたくない。

弱いと思われたくない。
同情されたいわけでもない。


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