同級生のお兄ちゃん

若草なぎ

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柏木マオの場合

side:柏木マオ 回想②

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先に音楽室前に着いたメンバーは脚本確認を行なっていた。

ボタンちゃんとモミジさんはいつも見ている教室のためか、一旦椅子でも並べようか?と

音楽室に入って行った。

「じゃあ、私も…」と言いかけて、私はドアの縁につまづいてしまった。

これは転ぶ、と思った瞬間、斜め後ろから腕を掴まれた。

「気をつけて。怪我しちゃうよ」

耳元で声を掛けられた。

桜井くんだった。

私はお礼も言えず、何とも言えない気持ちが湧き上がってきた。

腕を掴んでいた手はいつの間にか離れていて、桜井くんも教室内に移動していた。

「マオさん、大丈夫だったぁ?」とモミジさん。

うん、と答えたものの私の中に現れた謎の気持ちが気になっていた。

桜井くんに対するこのよくわからない気持ちは

先生への尊敬?…違う

友達への感謝?…違う

もっと近いような存在………

きょうだい……との会話?

そうだ。

近いかもしれない。

注意をしてくれる、、、きょうだい………

おにいちゃん、、、

そう思った瞬間に私の中のモヤが晴れるのを感じた。

桜井くんが危ないと注意してくれた優しい言い方、まるで妹を心配するかのようだったし、

元々の近寄り難さも引っくるめて私の中で桜井くんがお兄ちゃんに変換されてしまった。

私は高揚した気持ちのまま桜井くんを見る。

桜井くんが輝いて見えた。

こ、これが兄妹愛っ!!と一人目を輝かせる私。

勝手ながら、桜井くんを《お兄ちゃん》と呼ぶことに決めた。
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