同級生のお兄ちゃん

若草なぎ

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桜井リョウスケの場合

side:桜井リョウスケ クリスマス②

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クリスマス当日。

コンビニに寄った時にたまたま吉岡さんと合流した。

彼氏と途中まで一緒だったらしい。

ってか、ほっといていいのか?

そんな疑問を抱いたが、俺には関係ないので………考えるのをやめた。

「あら?水無月くん?」

「あ、吉岡さん!桜井も!おっす!」

「何してんの?」

「ちょっと電話してた。って、もう時間じゃん!一緒行くわ」

3人で集合場所に向かうこととなった。





到着すると、すでにみんな揃っているようだった。

「遅くなっちゃったかしら」

軽く手を振る吉岡さん。

俺は「お誘い頂きありがとうございます」とお辞儀をした。

「リョウ、挨拶堅すぎでしょ」

「ども」と水無月が挨拶する。

「文化祭のチームメンバー全員に声かけたんだけど

やっぱ無理な人もいてさ。今日はこの6人!」

「長谷川さん、あざっす!クラスでの打ち上げなかったもんな」

「兎川くんが提案しないからだと思うけど?」

「俺ぇ!?」

「はいはい。人数揃ってるんだから受付するわよ」

吉岡さんが受付に向かう。

誰も手伝わない感じなので、そっと着いていく。

「桜井くん、ちょっとだけ荷物持っててくれないかしら」

「はいよ」

吉岡さんのバッグを肩にかける。

後ろを振り向くと水無月と柏木さんが話をしているようだった。

「はーい、206号室~!行くわよ~」

吉岡さんがみんなに声をかける。

「バッグとマイク、どっち持つ?」

「どっちでもいい」

「じゃあ、そのままバッグ、よろしくね♪」

部屋までバッグを預かることになった。

俺は召使いではないんだが…





部屋に着くとそれぞれ席に座り、歓談タイム。

それにしても……みんな歌上手過ぎ。

自信ないけど、もう好きな曲いくしかないよな、と思いよく聞くアーティストの曲を入れた

歌い終わった後、無意識に柏木さんが目に入ってきた。

キラキラした目でこちらを見ている所からすると、ちゃんと歌えていたようだ。

柏木さんは、可愛らしいアニソンを歌っていた。

なんだろ…癒やし??





「あれ?そういえばマオちゃん、戻ってくるの遅くない?」

長谷川さんが歌い終わるとそう言った。

「柏木さん、迷子?」とうっちゃん。

「まっさかー!」

「女子トイレ、確か遠かったのよねぇ…」

というか、水無月も戻っていない。

……………。

「俺も、トイレ行ってくるわ」

そう言って席を立った。

「じゃあ、マオちゃん見かけたら連れてきてよ~」

「はいはい」

バタン、とドアが閉まった。

別に心配してるわけじゃない。

迷子ならケータイで連絡すればいいのに。

そんなことを思いながらトイレの方に向かった。

「…………とこ好きだわー、話しやすい」

水無月の声?

角を曲がると、水無月と柏木さんがいた。

水無月が柏木さんを撫でている。

俺は思わず、水無月の腕を掴んだ。

「帰ってこないと思ったら何してんだよ」

「あー…ごめんごめん。サトミに良くやってるから癖で」

水無月は俺から目を逸らしながら話を続けた。

「女子にこういうことすんのやめろよ、セクハラだぞ」

「え、でも、食べ物で餌付けしてるから大丈夫かな、って」

ちらりと柏木さんを見る。

「私をなんだと思ってんのよ!猫や犬じゃないからね!」と柏木さん。

水無月は、笑いながら部屋に戻って行った。

「柏木さんも、戻るよ」

「お兄ちゃん」

「ん?」

「ちょっと怒ってない?」

「なんで俺が怒るの?」

柏木さんが戸惑っているのがわかる。

「いやぁ…、そうなのかな…って」

「戻るよ」

怒ってる?

俺が?

なんで?

イラついたのは、間違いない。

水無月に?柏木さんに?

どっちもだな。

考えがまとまらないうちに部屋に着いた。

戻ったのはいいが、トイレに行くのを忘れていた。

もう一度、部屋を出て頭を冷やすことにした。
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