溺愛の価値、初恋の値段

C音

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火曜日のお花見 16

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「な……何を言ってるのかわからないんだけど」

「うん。愛は、言葉では伝えきれないものだからね」

「…………」


雅は、白い頬を赤く染めて、開きっぱなしだった口に最後のお肉を放り込んだ。

鍋を恨めしそうに見つめる飛鷹くんは、最後の具となった一枚の白菜を箸で摘まみ上げる。

具材はすべて食べきってしまい、あとはシメにうどんを投入するだけ。
飛鷹くんの「入れろ」という目配せを受けて、わたしは用意していたうどんを鍋へ入れた。

沈黙を埋めるのは、ぐつぐつと鍋のだし汁が煮える音のみ。
普段は、あんなに饒舌なロメオさんも口を閉ざしている。


「雅、うどん食べる? 卵も入れる? 雑炊のほうがよかった?」


沈黙が気まずくて、おそらくまだ食べ足りないはずの雅に尋ねる。


「いらない……ごちそうさま。片づけるね」


雅は、顔を赤くしたまま、わたしと目も合わせずに立ち上がった。


「い、いいよ、雅。あとで、まとめて洗うから。お茶飲む? 温かいお茶が好きだよね? あ、それとも、もう少しビール飲む?」

「ありがとう海音。でも、明日早いから、わたし帰るね」


鞄を手に、さっさと玄関へ向かう。


「雅っ! もう遅いから、タクシー……タクシー呼ぶから、待ってっ!」


なんだか様子のおかしい雅が心配になり、慌てて後を追う。


「大丈夫、まだそんなに遅くないし……」


素早く靴を履いて玄関のドアに雅が手をかけた時、わたしの背後からぬっと突き出した腕が、ドアを押さえた。


「僕が送るよ」

「ちょっ……ちょっとっ!」


ドアを開けられなくなった雅が憤怒の表情で、ロメオさんを振り返る。


「行こうか、雅。海音ちゃん、ごめんね? 後片付けお願いできるかな?」

「は、はい」

 
にっこり笑い、もがく雅の腕をがっちり掴んだまま、ロメオさんはにやりと笑ってわたしの耳へ囁いた。


「今夜は、覚悟しておいたほうがいいよ? 海音ちゃん」

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