溺愛の価値、初恋の値段

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月曜日の決着 4

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食器を片づけた後は、窓を大きく開け放ち、掃除をした。

一度始めたら、気になるところが次々と出てきて、押し入れの中にまで手をつけた。

お母さんの持ち物は、服や靴、宝飾品こそ処分したものの、箱に入れたままにしているものがかなりある。

わたしが幼い頃に描いた宇宙人にしか見えない絵とか。判読不明の夏休みの絵日記とか。何を作ったのか思い出せない、奇天烈な工作物とか。

自分に関するものは処分しようと思い、選り分けることにした。

結果、捨てるものが大半になった。

手元に残すことにしたのは、アルバム。お母さんがお気に入りだったマグカップ。わたしが小さい頃に書き留めたお母さんのレシピ。


そして、一度開いたきりの、わたし名義の一冊の通帳。


お母さんが亡くなった後、わたしが十八歳の時に満期を迎えた学資保険の三百万円は、手つかずのままだった。

お母さんは、このお金を使って進学するようわたしに言い遺した。

でも、進学しなかったので、使わなかった。
使ってはいけないと思っていた。


(もし……いまからでも、学校へ行こうと思ったら、お母さんは使いなさいと言ってくれるかな……?)


ふとそんなことを思い、自嘲する。


(学校って……何を考えてるんだろ、わたし。諦めたはずなのに)


通帳をそのほかのものと一緒に、再び押し入れの奥にしまいこみ、鞄の中に入れっぱなしだった水色の封筒を取り出して、捨てるものを詰め込んだ箱へ入れた。


一段落した頃には、もう一時近くになっていた。

葉月さんと向き合っている最中に、お腹が鳴るのは避けたかったので、戸棚にあった賞味期限ぎりぎりの素麺を手早く茹でて、ネギと納豆を具にして食べる。

時間がないならゼリー飲料で済ませればよかったのかもしれない。
けれど、冷蔵庫にぎっしり詰まった銀色の袋を見ても、手を伸ばそうとは思わなかった。

幾分、すっきりした部屋を見回し、すぐにコーヒーを出せるように一度お湯を沸かす。
砂糖やミルクはストックしていないから、ブラックで飲める人であることを願うばかりだ。

準備を整えてから、すっぴんだということに気づき、慌てて鏡へ向かう。
少なくとも、失礼にはあたらない程度にメイクを終えた時、来客を告げるチャイムが鳴った。
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