君がいれば、楽園

C音

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「え?」

「というわけで、XX社の仕事はできるところまで、一人で頑張ってくれ。手が空いた奴をサポートに回すから。みんなで力を合わせれば、なんとかなる。な? 頼むよ」

 課長はフロアを見回したが、同僚たちはPCの画面を見つめて微動だにしなかった。

 引きつった笑みを浮かべ、「は、はは……頑張りまーす」と返事をする。

 誰もが自分の仕事で手一杯だ。他人の手助けなんかしている場合ではない。わたしだって、にっこり笑って「手伝います!」なんて言えない。

 派遣社員が辞めたのは、わたしの教え方が悪かったせいかもしれないと、ネガティブな思いが脳裏を過ったが、落ち込んでいる時間がもったいない。

 今夜は、総務課にいる同期のカナコと飲みにいく約束をしている。

 カナコとは、同期入社。一緒に研修を受けたのをきっかけに、仲良くなった。

 ランチを一緒にしたり、時々飲みにいったりするだけで、休日に会うことはないけれど、ほどよく心地のいい関係だ。
 冬麻と付き合っていることも、彼と一緒の時、街中でバッタリ会ったことがあるので知っている。

 昨夜連絡した時には、「クリスマスイブに女同士で飲みに行くなんて終わってる」と文句を言っていたカナコだが、彼氏と別れたばかりでおひとり様なのは彼女も一緒。断りはしなかった。
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