君がいれば、楽園

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「ぎゃっ!……いったぁ……」

 真冬の凍結した路面は、凶器だ。
 無駄に踏ん張ろうとした右の足首がぐにゃりと曲がり、激痛が走る。
 鞄の中身も盛大に飛び散った。

「なにやってんのっ! マジ、ウケる。鞄の中身、これで全部だと思うけど。あー、スマホ死んでるかも。ディスプレイ見事に割れてるし。ほら、いつまでもぴょんぴょんしてないで、早く歩いて……え、ちょっと本気で痛いの? 大丈夫?」

 笑いながらも、両足で立っていられないほど痛がるわたしを見て、さすがに鬼畜のカナコも気の毒に思ったようだ。

「ちょっとここで待ってて」

 わたしをカフェまで担いでカフェオレと共に置き去りにし、最寄りのドラッグストアで湿布やら包帯やらを買って来てくれた。

 たくましく広い肩で私を支え、タクシー乗り場まで連れて行き、後部座席に放り込む。

「今夜は、大人しく寝たほうがいいわね。話は明日聞いてあげるから」

「……うん」

「痛みが治まらなければ、病院に行ったほうがいいわよ」

「大丈夫。折れてはいないと思うから」

 クリスマスイブを祝う人で賑わう街を後にして、しんと静まり返った住宅街にあるアパートへ帰りついた。
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