精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第1章

精霊召喚 2

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「えっと、主様って?」

「主様は主様です。貴方が私を呼び出したんですよね?」



 右足をぎゅっと掴む少女、その姿は小学生か中学生だろう。

 青みがかった白髪に発展途上の胸元、大人になれば可愛くなるであろう顔立ち。
 そして幼さが残る容姿とは真逆のウサギの目のような赤いドレスを完璧に着こなしている。
 そんな少女は僕の目の前に現れてから、何故か僕の右足をぎゅっと掴んでくる、なんだか我が子のような愛くるしさを感じる。



「えっと、僕は少女を呼び出したつもりは無いんだけど━━」

「いや、お前が呼び出したんだろう……自分の耳とそのガキの耳を見てみろ。それがなによりの証拠だ」

「耳って……あっ!!」



 仲神の言葉を聞いて、僕は自分の耳元に触れる。
 するとイヤリングの様な装飾品の感触が━━、そして幼女の耳には小指の爪くらいの大きさの赤い宝石が付いていた。

 精霊《スピリット》召喚士《サモナー》は自身の精霊と契約を交わすと、お揃いの精霊石を一つ身に付ける。
 それは耳だけに現れるわけではなく指や腕、足や頭等、色々な箇所に現れる。
 そして契約できる精霊は精霊召喚士一人につき一体の精霊まで━━、契約を解除する事も新しい精霊を契約する事もできない。



「この辺をチョロチョロされても迷惑だ……とりあえずそのガキを理想郷《シャングリラ》に戻せ」

「えっ、あっはい、返還《リテスト》!! ━━あれ? 返還!! あのー、返還してもらえないですか?」

「返還とはなんですか? 私に帰る場所なんてありません、これから私は主様とずっと一緒です」



 返還《リテスト》、精霊を呼び出しておくにはそれなりの霊力《コスト》を使う、霊力が無くなっていくと精霊召喚士はどんどん体が重く、まるで急に風邪を引いた様な気だるさに襲われる。

 なので必要な時以外は精霊は理想郷《シャングリラ》と呼ばれる精霊達の住む世界に送るのだが━━、この幼女は全く理想郷へ消える気配を見せない、先程よりも強く僕の右足に掴んで頭をすりすりしている。



「チッ━━、謎精霊《イレギュラー》かよ……しかも同じ学年に二人も」

「二人?」

「あれを見ろ」


 仲神は綺麗な顔を崩し、舌打ちをしながら他の精霊の石盤を指差す。
 指差された方向に顔を向けると、そこには困惑した顔の女子生徒と、その周りを走る小人達が周囲の視線を独占している。



「おいっ兄ちゃん!! この女こんな短い服で俺達を誘惑してるぞ!!」

「ああユキト、こいつは変態女だ!!」

「ヤキト兄ちゃん、変態女って何?」

「ヨキト、変態女ってのは……痴女の事で、要するに危険な女って事だ!!」

「危険な女!? 危険な女が主様なのか!? 」

「なっ━━私は痴女じゃない!! 返還《リテスト》、返還《リテスト》リテスト!!!! なんで戻らないのよ!!」



 女子生徒の周りをグルグルと走り、馬鹿にする赤、青、緑色の三角帽子を被った三匹の小人。
 その中心にいるのがどうやら彼等の主様である精霊召喚士なのだろう。

 確か同じクラスの柊《ひいらぎ》 雅《みやび》。
 まだ幼さが残る黒髪長髪で可愛い系の容姿の女の子なのだが、いつもクラスでは静かに端に座っている、当然話した事は無く、声を発している所を見た事も滅多に無い。

 そんな大人しさが魅力的な雅だが、周りの注目を浴び、赤面しながらひたすら返還と叫んでいる。
 そんな馬鹿騒ぎを見ていたら、自分の精霊はまだマシなのかと思ってしまった、右足を掴む姿が可愛いから━━。



「はぁ、もういい……そのまま戻れ!!」

「えっはい……行くよ、えーっと名前わからないや」

「私の名前はアグニル!!」



 アグニルと名乗る幼女を抱き抱え、皆の視線を感じながら柚木はもといた場所に戻る。
 雅のお陰で注目は少しだったが、それでも痛い視線を感じてる。



「いやー、宣言通り最強の精霊を召喚したな!?」

「どこがだよ!! 何でこんな━━」

「不服ですか、主様? 私は他の精霊よりも強力ですよ!!」



 一人だけ座っている恵斗はこちら指差しゲラゲラと笑っている、そんな恵斗を見ながらため息がこぼれた。

 両手から離れ無い胸を張るアグニル。
 頬を膨らませて少し怒っているのだろうが、その表情はまるで我が子が拗ねているようで可愛い。
 そんな拗ねてるアグニルの頭を撫でると、機嫌を直したのか、再び僕の右足を掴みくっついてくる。



「それじゃ、全員の精霊召喚儀式が終わったから説明を始めるぞ!!」

「ヤキト兄ちゃん!! あの女めっちゃ美人だぞ!! 俺あっちが━━」

「うるさい!! お願いだから静かにしなさい!!」



 仲神の説明の途中で再び騒ぎだす小人達、それを必死に止める雅、その姿は不敏としか言えない。

 仲神は鋭い眼差しで雅の小人達を睨み付ける、その眼差しは美人とは程遠く悪鬼の様だ。
 小人達は蛇に睨まれた蛙の様に怯え、その場に正座する。



「明日からの侵略者《アンドロット》討伐の組み合わせを発表するぞ、名前を呼ばれた者からこっちに来い」



 明日から実技訓練を兼ねた侵略者討伐が始まる。
 侵略者は基本的には前触れもなく上空から出現する門から生まれ、少ししたら侵略者達は門へと戻り、門と共に何処かへ消える。

 だがこの世界には門へと戻らなかった侵略者が存在する、それも無数にだ。
 明日から始まるのはその残党の討伐。

 基本的には組み合わせは四人一組なのだが、



「次、如月《きさらぎ》柚木、逢坂《おうさか》恵斗《けいと》……チッ、柊《ひいらぎ》雅《みやび》━━。お前らは三人だ」

「「「えっ?」」」




 三人の言葉は共鳴した。

 上級精霊と契約した恵斗。

 幼女精霊と契約した僕。

 三匹の小人の精霊と契約した雅。


 それぞれの表情は不安しかない。

 
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