精霊召喚したら、幼女の精霊を召喚してしまいました

アロマサキ

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第2章

変わってしまった世界

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『次のニュースです━━先日、反日本政府というテロ組織が、日本全域を攻撃し、今もなおその戦闘は続いております』



 テレビの光だけが唯一の明かり、そう呼べるほどに薄暗い部屋の中、テレビの中に映る二人の男性の話を僕はまじまじと見ていた。

 被害があったのは僕達の住んでいた学園と付近の街だけではなかった。
 日本各地でも、同じような状況だった、全国各地で奇襲を行い、一気に日本を占領しようとしている、そう思った━━だけど、



『反日本政府から受け取った手紙によると、目的は如月 柚木という少年の受け渡し、という事ですが、笹原さん、どういう事でしょうか?』

『んー、その如月 柚木っていう子が何かしら、反日本政府と関わってるのでしょうかね』



 違う、僕は狙われてるだけだ。
 仲間でもなければ、何の関わりもない。
 それなのに、話は憶測ばかりでどんどん先に進んでいく。



『要するに、この如月 柚木という人物が反日本政府から逃げてるから、探す為に日本全域を攻撃してるんでしょ? いい迷惑だよね、早く捕まって━━』

「主様……ご飯買ってきたぞ?」

「えっ、ああ、ありがとう」



 テレビの明かりが消え、真っ暗にしていたカーテンが急に開かれた。
 外は明るかった、それはそうか━━もう時間は昼間なんだから。
 カーテンを開けたのはアグニル、テレビを消し声をかけてくれたのはエンリヒート、荷物を持たされているのはカノンと柚葉だった。



「こんな辛気臭い部屋にいたら……キノコでも生えますよ?」

「そうだね……もしキノコが生えたら、それを食べようか」

「お兄ちゃん、それは絶対毒茸だよ?」



 柚葉のツッコミに、部屋中に笑いが広がった。

 あの日から二十四時間後、顔写真もばっちり公開され、僕は全国民から追われる扱いをされた。
 理由は反日本政府からの要求で、僕を見つけ、捕まえた人には莫大な金が入るから、そのため、街の一般人も、反日本政府の神宮寺の手下達も捜索をしている。

 僕は明るい内は外には出ない、というより、明るい内から外に出ると、すぐに誰かに追われる事になる━━これは立証済みだ。
 だから買い出しは他の皆にお願いしてる。

 そして、近くのコンビニで買った物を袋から取り出し、アグニルは笑顔を向け、



「主様! 今日はおにぎりが全品半額だったんですよ、だから沢山買ってきてしまいました」

「半額!? 最近のコンビニは凄いな!」

「最近のって……お兄ちゃん、いつの時代の人さ」



 また柚葉にツッコミを入れられた、だけど、みんな笑ってくれて良かった。
 ニュースを初めて見た時、正直落胆した、こんな扱いをされたのは初めてだから━━でも、僕の元気が無くなれば、皆も元気が無くなる事に気付いた、それから、僕は明るく振る舞う事を意識している、それは皆の為でもあり、僕自身の為でもある。

 僕らは一人二個のおにぎりを頬張りながら、これからの事を相談した。



「とりあえず、街中で話を聞いてきましたが━━喜んでください! 街中では主様の話題で持ちきりでしたよ。まあ理由はあれでしたけど、やれ何処で見つけた、とか、何処にいたとかですが」

「カノン、それ……全く喜べないんだけど?」

「まあ、モテるのは良い事だと、私は思うぞ? 嫌なモテ方だけどな」



 カノンとエンリヒートは素直に笑っているのだろうけど、どうして笑えるのか、僕には不思議でしかない。
 だが、二人の笑みを横目で見ていたアグニルは、ぼそっと呟く。



「……無駄な噂を流していたのは、そこの二人ですけどね」

「━━なっ、何してんの二人とも!?」

「いやー、主様の噂してたから嬉しくてさ……でも、どうでもいい噂もついでに流しといたから安心してくれよ!」

「どうでもいい……どうでもいいってどんな?」



 僕の問い掛けに、「あっ、やばい」と声に出すエンリヒート。
 何を吹き込んだんだ? だが、エンリヒートは目を反らし、手に持つ鮭おにぎりを頬張っている。
 彼女は答えない、代わりに柚葉がため息をつき、口を開く。



「如月柚木は……胸のでかい女が好きらしいぞ、だって」

「━━なっ、何言ってんのさ!? なんでそんなでたらめを」

「いやー、だってさ、ベッドの下でそれらしき本が置いてあったからさ」

「なっ!」



 なんでそんな事を言った、というより何故その事を知っている━━あれは絶対にばれないように隠したはずなのに。



「私には隠し場所を見つける霊力術《コストアート》がある、私から隠そうなんて、百年早いぜっ!」

「そんな霊力術があったなんて……」

「いや、そんな霊力術は無いですよ主様。というより本当なんですか、胸が大きいのが好きって」



 皆の痛い視線を感じる。

 ━━無いのか、一瞬信じてしまった。

 それに、なんで皆はいきなり自分の胸を触る、しかも柚葉まで。



「お兄ちゃんが胸の大きな人を好きなんて知らなかったな━━私は小さいのかな?」

「エンリヒート! その本の女は……どれくらいの大きさだった? 私のは」

「いや……アグニルのとは比較にならないし、それに━━アグニルのは無いと言っても間違いではないよな?」

「なっ━━私は、私は。本来の私はこんなもんじゃ」

「いや、前のお姉ちゃんも対して変わらなかったはずだけど?」



 カノンの一撃で、アグニルは倒れた━━正真正銘、床にだ。
 まあ、その本を集めていたのは三年前の事で、今は小さい胸に魅力を感じている、という事は秘密にしておこう、なんか面白そうだし。

 そんなくだらない話をしていたら、すぐに食事を終えてしまった。
 一段落した空気の中、カノンはお茶を一口飲み、



「私達は今、一番危ない事があります━━それが何だかわかりますか?」

「えっ、ほとんど危ない状況だから全くわからないな」

「主様が胸が大きい女が好きって事でしょ!?」



 正直、全てに困っているから何が一番とかっていうのはわからない。
 それに……アグニルは悲しそうな表情をしながらまだ言ってる。
 そんなアグニルをじっと睨み付けながら、カノンは「こほん」というわざとらしい咳払いをして、



「主様の胸の大きい女が好き、というのは後でしっかり聞くとして、私達には━━お金がありません」

「えっ、でも昨日はちゃんと三万円持ってきたよね?」

「今、私達の手元には二万五千円あります……ですが、これでは目的地である最北端、日本第一支部に行く為の交通費が足りません」



 後でしっかり聞かれるんだ、嫌だな。

 とはいえ交通費か、すっかり忘れていた。
 ここは元々東京があった場所、日本第三支部だから、向かうには海を渡らなければいけない。
 その為にはどうしても船に乗る必要がある、だが、



「私達で五人、それで二万五千円になりますそれと合わせて━━三人の交通費も必要になります」

「そう、だよね」



 カノンの指差す方向、そこには丸くなった小人達の姿、雅の元精霊だ。
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