「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第1章 ヘッドギア。

第5話 絶対!許さない。

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 吉田の生存を報告しようとした時、布村の悲鳴が聞こえてきた。
 
( キャー!!  )
 
 目を合わせる2人。お互い腰の拳銃を両手で持って、即座構えの姿勢で、小走りに民家へ近づき、2人は大きな玄関の両脇に分かれて張り付いた。
 
( キャー!イヤー! )
 
 ヘルメットをかぶったままの布村が家の玄関から飛び出した。
 その布村の腕を美紀が即座に持って、自分の背中に誘導した。
 足元には、大型車両の後に続く大勢の足跡と中から続く大量の血糊の跡。
 女性の後ろで両腕をさすり震える布村。目を合わせるきよしと美紀。
 顔を揺らして3カウントするきよし。
 
( 3、2、1,今っ! )
 
 2人は一気に漁師の家、広い玄関に突入した。両腕を真っすぐ伸ばし、アイソセレススタンスで銃を構える2人。
 玄関からゆっくり侵入した。居間の襖から裸足の女性の両足が足首から出ていた。
 廊下は血だらけだった。
 静かに止まる2人。
 
 きよしが両指で目を押さえて、右手の手の平で自分が先に行くと合図する。一瞬、廊下に出た足を見る2人。
 更にゆっくり進み、襖の脇で止まるきよし。
 大量の血の跡がこの部屋から出ていた。
 きよしは、後ろに居る美紀を見てから、一気に居間に突入した。
 そして銃を構えた。
 
 ……そこには、この世の物とは思えない光景があった。約10人以上の若い女性の首のない遺体が、それも、全て両足を広げて倒れていた。思わず天井を見るきよし……。

( うわっ!う、う。 )
 
 続けて美紀も入って来た。
 
「なっ!」
 
 同じく、すぐ天井を見る美紀。
 
( な、なんて事なの~!なんて……な、なんて事なの~!なんて事なの~! )
 
 天井を見て叫ぶ美紀だった。
 そんな美紀を見てから、勇気を出して居間を見るきよし。
 
 全身から汗が噴き出した。
 台所の方を見ると、女性の生首が多数テーブルに乗せられていた。
 目を開けて絶命しているもの。苦しみの表情で目を閉じている者、
 様々だった。ほぼ10代から20代の若い女性だった。
 美紀がきよしの腕をつかんだ。
 目から大粒の涙がこぼれている。
 きよしの腕を掴んだまま、一気に外に出た。
 
( バタン……。 )
 
 ドアの淵につまずいて、よつん這いになる美紀。
 
( うぅぅっ、……くやしい。 )
 
 口と胸を押えて泣き崩れる美紀。
 布村は、ヘッドギアを被ったまま地面にペタッと座っていた。
 真っ赤に目が腫れ上がる美紀。
 やがて、のっそり立ち上がり、フラフラと玄関前の車の跡から、泥のタイヤの後をつけて国道を歩いていく。
 やはり、先ほど交戦した敵のトラックの跡だった。
 彼らが少女達を凌辱し、殺害したのだ。
 
 美紀の後ろから、暗い顔をしたきよしが歩いてきた。
 振り向いた美紀の顔は赤い目で涙を流し、鬼の形相だった。

( コノヤロー! )
 
 突然、美紀が敵兵の機関銃を持って、死んだ敵兵を撃ち始めたのだ。

( ズバババババ~! )
 
「ちきしょー!〇チガイども~!ちーきしょー!」
 
( バババババ~! )

 慌てて美紀の銃を奪って遠くへ投げ捨てるきよし。
 
「なぜ止めるのー!なぜ止めるのー!」
 
 きよしの分厚い胸を叩く美紀。
 美紀の両手首を持って、止めるきよし。
 
「離してーっ、離してよーっ!もう。」
 
 落ち着いて話すきよし。
 
「美紀さん!美紀さん!家を燃やして供養しましょう。まだ、ご遺体があるかもしれない。美紀さん。美紀さん。」
 
 顔上げて、きよしを睨んで一瞬黙る美紀。
 そして、力なくアスファルトに崩れた。
 
「わぁ~ん!なんでなの~!あんな若い子たちがぁ~!なんで~っ。わぁ~ん!」
 
 泣く美紀の姿を、立ち尽くして見ていたきよし。
 そこにフラ~フラ~と脱力したままの布村が歩いて来た。
 きよしを見つめたままヘッドギアを脱いだ。
 
( カランッカランッ。 )
 
 ヘッドギアを道路に落として、布村もきよしを睨んだ。
 みるみる内に顔が真っ赤になり、泣き顔になっていく。
 布村も耐え切れなくなり、きよしに抱き着いて号泣し始めたのだ。

( なんでなのー!きゃー!もう、なんでなのー!わぁ~ん! )
 
 崩れる3人。

( く、くっ……。 )
 
 きよしも耐え切れなくなり、悔し涙を流した。
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