「メジャー・インフラトン」序章3/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節 FIRE!FIRE!FIRE!No2. )

あおっち

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第8章 核の恐怖。

第7話 「きよしバーニア」開始!

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 きよし・布村タンデムモービルのコクピット。
 
 きよしの左横、右腕だけをカスケード解除された佐藤結衣が操縦バーを握っていた。

 結衣の正面の画面ウインドーには8名ほどの携行対HARMORミサイルを構えた兵士達が映された。

 操縦バーを巧みに動かして、対人用炭素レーダーをロックした。

 そして、炭素レーザーの照射孔が赤く光り始めた。
 
「ふふーん。残念ーっ。」
 
(( シュピイィィーン!シュッ!シュッ! ))
 
 構える複数の兵士たち。
 その兵士達へ赤いレーザー光線が上下、上下と素早く各々の兵士を切った。
 動きが止まる兵士達。
 目を動かしたり、首を動かそうとした瞬間だった。
 
 兵士の体が真っ2つに綺麗に切断されたのだ。
 左右に体が別れて倒れる兵士。
 一緒に携行ミサイルも切断された者たちは誘爆を起こした。

(( ズガーン!ドカーン! ))
 
 地上兵の携行ミサイルの爆発の光で、闇夜に浮かび上がるきよし・布村タンデムモービル。
 ひるむ大勢の囲んだ敵兵氏達。コクピットでは寺田麗子が叫んだ。
 
「パンダ隊長!索敵終了っ!敵、目標HARMORは、残り28機っ!」
 
「よっしゃー!布村さんっ!お願いしますっ!」
 
「はいっ!パンダ隊長っ!」
 
( ギュギュギュー! )
 
(( ボワンボワン、ドババキィィーン! ))

 アクセルを中位に開ける布村。
 バーニアが安定して噴射を始めた。

(( ズババキィィーン! ))
 
 オレンジの炎が絞られて、炎の中に丸い炎の塊が続く。
 物凄い噴射炎が後ろに倒れ込む兵士たちや遺体を襲った。
 バーニアの高熱の噴射によって灰になり消える兵士たちや兵士の遺体。

(( うぎゃーっ! ))
 
(( ギャーウガァー! ))
 
(( ギャー! ))

 そして、周囲に居る兵士を吹き飛ばし始めた。
 更にアクセルをジワジワ開く布村。
 更にトラックから走って逃げる兵士たちを吹き飛ばすバーニアの噴射炎。

(( キィィーン、ゴゴゴゴーッ!))
 
(( うぎゃーっ!))
 
(( うわーっ!))
 
 そしていよいよ、きよし・布村タンデムモービルの何倍にも成長した稲妻の輪が発生し始めた。
 遠くに居る兵士達にも、その巨大な稲妻が立ち昇るのも見え始めた。
 驚いて行軍を止める地上兵の大群。
 いよいよ稲妻から、大滝の火花が発生し始めたのだ。
 脚を止めて、立ちあがる火花の大滝を見上げる大勢の兵士たち。
 武器を捨て、逃げ始めた。
 上官たちが、笛を吹いて退避、誘導した。
 
「ピー!ピーッ!ヘッホッバエ~、イガナンダ~!(核爆発が起きる~)ボデュテッピ~!(全員退避)ボデュテッピ~!(全員退避)」
 
 後退を指示する敵上官。
 気が付いた敵兵士達は銃を捨てて逃げ始めた。
 しかし、既に時は遅しだった。
 不敵な笑顔のままの布村愛子。
 いよいよ出撃だ。
 
「よしっ!行っけー!キャプテンパンダー!GOーッ!」

( ゴゴゴゴゴゴーッ!ギィーン! )
 
 布村が左足でギアチェンジの様にシンクロペダルを上げ、右足でHARMOR脚部の走行アクセルを全開で踏んだ。

((  シュ!ドシーンッ!ダンダンッ! ))
 
 バーニアの最大噴射と共に、飛び上がるように走り始めるきよし・布村タンデムモービルだった。

( ダンダン、ダンダンッ、ダンダンダンダンッー! )

 上半身がバーニア噴射で固定され、飛ぶように身軽に走るきよし・布村タンデムモービル。
 遂に、その後ろでは核融合炉崩壊による小規模の核爆発が起きた。

(( カァーッ!……ド、ドーン!))

 吹きあがる火球と噴き出す滝の様な火花。
 衝撃波で一瞬の内に吹き飛んで消える敵兵士たちやひっくり返る装甲車。
 
 装甲車などの戦闘車両が衝撃波でひっくり返った後、火球による酸素燃焼で再び爆心地に吸い込まれた。
 キノコ雲が大滝のような火花をまき散らせながら、衝撃波で穴の開いた分厚い雲に上って行く。

(( バシーン!ゴゴゴ!バッシーンッ! ))

 後ろから来る衝撃波をもろともせずに、全開で走る抜けるきよし・布村タンデムモービル。

 そして、左へ方向転換しながら走った。

 核爆発の衝撃波と爆風が、暗闇の対馬市街地へ扇型で前面に広がっていく。

布村も、倒れるガレキや車など、体を左右に傾けハングオンして操縦する。
 
「隊長、10時の方向、敵HARMOR1個小隊発見。」
 
 寺田麗子が、自分の持ち場の戦術衛星画面を読み取って報告した。
 
「4機とも上を見上げたまま動いていません。」
 
 画像を拡大して、標的の状況報告をする中村・スーザン・幸子。
 きよしが指示を出す。
 
「了解!布村さんっ。国道を直進お願いします!」
 
「はい!直線を走ります。エイモスさん、バーニア!走行射撃・戦術モード。上半身自動制御お願いします。」
 
( 了解。バーニア制御、椎葉少尉プログラム・走行射撃・戦術モードに切り替えます。 )
 
 HARMORの手首、肘、肩、胸、背中、腰の小さなバーニアの噴射孔が開いた。各噴射孔の噴射が赤くなり、姿勢制御の小さなバーニアのアイドリング噴射が始まる。
 
 HARMORの腰から上がバーニアの絶妙な制御により、下半身の揺れを吸収して、空間で固定されたようになった。
 
 40ミリカノン砲を構えたまま全力で走り続けるきよし・布村タンデムモービル。エイモスが細かく上下左右のバーニアを吹かして上半身を安定さる。
 噴射を続ける上半身の各バーニアと、全力で走る下半身部。
 きよしは布村の股にあるモニターを見ながら4機のHARMORを捉えた。
 そこには核爆発の火柱を驚いて立ち尽くして見ている4台の敵HARMORが映っている。
 
「手前の1機、こちらに気が付きロックオンしました。あっ!発砲確認。」
 
 すかさず中村・スーザン・幸子が報告する。
 手前1機の敵HARMORがこちらに気が付き反撃して来た。
 しかし既に遅し。
 きよしが攻撃を開始のだ。
 火を噴く40ミリカノン砲。
 布村がニヤけて、画面の奥の敵に言う。
 
「気が付くのが遅い遅い~!」
 
 正面モニターを見る少女たち。
 敵を捕らえた、砲口が火を噴く映像だった。

( タンッタンッタンッタンッ! )
 
( タンッタンッタンッタンッ! )

 40ミリカノン砲の射撃振動がコクピットに伝わる。と同時に、走るきよし・布村タンデムモービルへ、敵の放った40ミリ砲弾がかすって奥の建物に着弾した。
 
 きよしの撃った40ミリ劣化ウラン徹甲弾の砲弾曳光が、正確に弱点の敵HARMORの脇腹に吸い込まれる。
 きよしの放った40ミリ砲弾が全て、胴体の脇腹部分にヒットした。

(( ドカドカドカドカッ!))
 
(( ドカドカドカドカッ!))
 
 状況監視担当の中村が声を上げる。
 
「全弾命中!繰り返します。全弾命中っ!」
 
 動きが止まり倒れ込む4機の敵HARMOR。
 敵パイロットの乗るコクピットを直撃したのだ。
 
 頃合いを見て、エイモスがアナウンスした。
 
( メインバーニア、後6秒でオーバーヒートします。バーニアを停止いたします。愛ちゃん、全アクセル緩めて下さい。ゆっくり、ゆっくりお願いします。 )
 
「了解!エイモスさん。フ~ッ……。」
 
 アクセルと、足のペダルをゆっくり戻す布村。
 全てのバーニアも停止し、走りから徐々に歩行に変わるきよし・布村タンデムモービル。
 
 空間に固定されていた上半身が、歩行の度、揺れるようになった。
 揺れが大きくなるコクピット内。
 そして、真っ赤に焼けたバーニア噴射孔も徐々に暗くなっていく。
 
「結衣、サッチー。警戒をして。」
 
 左右の後ろを向いて布村が結衣に言った。
 答える中村・スーザン・幸子。
 
「了解!愛っ。ちょっと休んでて。エイモスさん衛星戦略画面を。」
 
( 正面モニターを衛星戦略モニターに変更いたします。各監視ウインドーはそのままに致します。 )
 
「了解っ!」
 
 
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