「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち

文字の大きさ
25 / 47
第11章 (株)関西国際医療 第1営業部、営業3課。

第1話 徹夜明け

しおりを挟む
 西暦2062年、6月23日、金曜日の朝。
 
 通勤が始まったリニア新大阪駅。
 その新大阪を望むビル群。その1つのビル内部。

( カタ、カタカタ、カタカタ。 )
 
 キーを打つ音が暗い事務室で聞こえて来る。
 その暗い事務室のフロアー全体にパラパラパラッと天井照明が付き始めた。

( キュッキュッ、キュッキュッ。 )
 
 閉めたブラインドを自社の主任警備員、三田主任が回して開ける。
 更に明るさが広がるオフィス空間。
 
「お疲れ様です。椎葉課長。」
 
「おざっす……。」
 
「椎葉課長、2日目の徹夜ですね。身体、気ぃつけて下さいよ。ホ~ンマに。」
 
 画面を後ろから覗く警備社員の三田主任。
 
「昨日も徹夜っすよね課長。今日もビル管理残業申請書、代わりに書きましたやんか。ハンコもらいます課長。このビル管理申請だけはネット印がダメなんすよ。ウチ(関西国際医療)は勤怠とか、警備や勤怠とか、セキュリティー案件は全て本人の実印ですやんか。軍属社員が多いからかなぁ。産業スパイの警戒か?」
 
「うぃっす!はい、主任。」
 
 引き出しから印鑑を出して三田主任に渡す椎葉。印鑑を突いてから、椎葉きよしの脇から画面をのぞく三田。
 
「うわっ、臭っ!めっちゃ臭っ!椎葉課長!」
 
 鼻をつまみながらハンコを机の中に戻す三田。
 
「カカカッ!残業加齢臭じゃ!アハハハッ。そうだ、三田主任は今日から夜勤明けしょ?また、岩崎のリっちゃんと姫路の新舞子の潮干狩り行くんかい?」
 
 タイピングしながら話す椎葉。
 
「やだな~課長。今~6月やん。潮干狩りは先月、新舞子は5月に行きましたでぇ。姫路に2人で行った潮干狩り。捕ったニョッキ貝、課長の家で課長が焼いてくれはりましたやんか。美味しかったのに。酢味噌あえとか、スンゴイ美味しかったやん。忘れたん課長?黄(ホァン)社長も居ってビックリ!しましたやんか。なんで、うちの社長が課長の家で、2人で野球中継見てるって。どこの友達やねん。ホンマにびっくり。おかげでリっちゃんと付き合ってるのバレてもた。」
 
「せやねん、忘れとった。徹夜ボケや。すまん。すまん。リっちゃんと一緒に来はったな。はははっ。逆に社長が居って良かったやんか、ちゃうか~っ。」

「いやいやいや、良かったってホンマですかぁ?」

「あはは。結婚式の時は、社長の奥さんは亡くなって独身やからっちゅーて、自宅のお手伝いさんの岸和田のバアさんと2人で仲人してくれはるッちゅーて、良かったやんか。ニョッキ貝の縁いうて。はははっ。」
 
「もう、他人事やんか、課長!もっ。はははっ。でもマテ貝、素焼きも美味しかった。」
 
「せやな淡白な味で。来年も、りっちゃんと新舞子に潮干狩り行ったらニョッキ貝たのむわ。俺もアイドルマネージャ時代、子供と北海道のバー様と、メンバー連れてぇ新舞子で短期合宿したやんか。合宿の後、姫路城で本物のアイドルの代打でコンサートってなって、あれっ?岩崎の~リっちゃんと言えば~、せやせや、んっ?」
 
 何かを思い出し、ガサガサ書類の山で、書類を探す椎葉。
 
「有った有った。岩崎のリっちゃん。明日?ちゃう、今日はもう金曜かいな。今日と、えーと来週の月火と、有給申請が出とる。りっちゃん達5連休やんか。ちょ、ちょ、あれ~岩崎だけやなく、うちの3課から、1、2、3、4、5枚。ん?6、7枚って。えっ、えっ有給が5名申請出てるやん。何なん?三田主任なんかあるん?みんな理由の詳細書いてないから何で休むか解らんし。あっ、ボケてる。あっちゃー!たしか、先週のミーティングで聞いとった。詳細忘れたけど。普通、有給は所属長の承認が……、んっ?黄社長の承認を得ています。って全部に書いてあるし。あっ、メイリンも今日の昼から早退だって。あらら、検印。必死で納品書作って、全く書類見てないから解らんかった。んっ?奏ちゃんの稟議書?パラオ?って。まぁ~ハンコ。三田主任のおかげで気が付いたがな。ありがと、ありがと。」
 
 あわてて、書類に所属長印を押してから立ち会がり、伊東奏の机に書類を置く椎葉。歩きながらニコニコして話し掛ける。
 
「三田主任、リっちゃんの実家の姫路だっけ?加古川だっけか?釣りでもするん?ちゃうか。」
 
「はははっ。僕の実家が姫路の加古川で、りっちゃんは淡路です。今日の夜勤明けは予備役の機動モービルの新型HARMORの訓練です。リっちゃんと二人で4日間、しごかれにいきますやんか。」
 
「ほ~予備役で、ロボット乗るんかいな。新型って。あ~せや!せやな。千歳から教官で早乙女のボケが来るんだった。来週月曜日から、俺の自宅に泊まりたいって、新大阪にくるって。止まる部屋無い!っていったら新大阪のホテルに泊まるとか何とか。はははっ!お前たちに稽古つけるんかいな。しらんけどぉ。」
 
「えっ!課長!今をトキメク、千歳シーラスワンの早乙女教官知ってはるん?」
 
「まぁな。へえ~早乙女のガキが教官か。今をトキメクってなんだべ。はははっ。」
 
 ものおじせずに、きよしに話す三田主任。
 
「シバの神の再来とかで、私たち、保守系の軍人のSNSでは有名人ですやんか。第2のシバの神!無敵のシバ神の再来って言ってますやんか。」
 
 なんとも言えない表情でごまかし笑いをする椎葉。
 
「シバの神って。はははっ。」
 
 首を揉みながら、微妙な表情をする椎葉だった。
 
「だから、課長?早乙女教官のお知り合いなん?」
 
「あははっ!ふ~ん。まぁ、たまたまな。(そうなん。)北海道の実家の近所の悪ガキの一匹だ。昔からな。(え~!マジっすか!)せやねん。妹のオディア、エルなんか目当てに大阪へ来るけど、誰も旅行に行って、いいひん!って。カカカッ。とにかく三田主任、(はい。)無理はアカン。なんせ予備役なんやし。(は~。)しっかし、なんでうちの会社、予備役軍人が多いんかな。(多いですよね。)なー?三田主任。(はい。)社員の3割やんか。(そうですよね。)まあ、俺の課の12名、俺以外全員女で、それも全員予備役って。あーヤダヤダァ。(はははっ!)課の打ち上げの飲み会に行っても、女12人。義理の妹のエルジビエタとか皆、軍やら自衛隊やらの訓練の話とか、実戦の時の武勇伝とか、装備の話とか。どこの軍隊やねん。おまけに俺の嫁も現役の軍人さんやんか、(え!マジっすか。奥様軍人なんすかっ!)せやん!あ~ヤダヤダァ。(そう、言わんと。羨ましがってる社員、多いっすから。)そうなん?(ホンマですよ。)ふ~ん、課の飲み会いっても俺、浮きまくり。(なんでぇ。会社の美人は課長の課に一点集中なんすから。美人課ぁ~なのに。)いやいやいや、まぁ、黄(ホァン)社長の特命課で、この課は社長命令だから……シャーないけどぉ。(ふ~ん。)ところで、訓練は南港の自衛隊の射撃浮島でやるん?」
 
「ちゃいますよ~課長~。今回の訓練は母艦搭乗で衛星軌道上でんがな。」
 
「えっ、そら(宇宙)、上がるんかいな?」
 
 つんつんと、親指を立てて、話す椎葉。
 
「そーですよ!だから今日の昼に。めっちゃ眠いのに、橿原に集合してから、自衛隊のビッグマム(超大型急襲攻撃型武装オービター・シャトル)で千歳に行きますやんか。千歳で2日、訓練やもろもろしてからそのまま、ビッグマムでそら(宇宙)に上がる予定でぇす。民間人の課長には解らないと思いますが、予備役も大変なんすよ。ホンマに。ホ~ンマにですよ。」
 
「へー。知らんけど。ウチの課の岩崎も予備役って、リっちゃん、あのロボット乗って何するん。」
 
「何するんて、課長。リっちゃんは衛生兵。特殊な救助用医療HARMORに乗っておますわ。ものごっつー優秀でんがな。リっちゃんは。可愛いだけじゃおまへんよ~課長。」
 
「よ~って。アホッ。のろけよってからに。でも、でもリっちゃん可愛ええな。ええ彼女作りおってからに。いつの間にか、手ぇ~出しよって。コイツ。」
 
「いやいや、いや。まぁ自慢の彼女でんがな~。えへへ。」
 
「えへへ言うな。朝からのろけるなボケが。腹立つホンマにぃ。」
 
 エヘヘヘッ。と警備帽を脱いで頭をかきながら照れる三田主任。
 
「月曜日は丙(あき)の克弘も、実家の隣の甲賀のよっちゃんも来るゆうっとたし。俺達はおらへんけどぉ。カカカッ。甲乙丙のボケどもヲタが。はははっ。でも三田主任とは入れ違いで、違う任務なんかな?正規と予備役はちゃうんかな。良く解らへん。カカカカッ。」
 
 画面を見ながら意地悪そうに笑うきよし。
 
「……。とにかく歳なんだから無理せんでください。課長。失礼します。いい加減に、むっちゃ臭いですよ~。服位ぃ~着替えてくださいな。はははっ!」
 
「了解っ、了~解!了~了~!三田主任も訓練、ほどほどにな。まぁ、2人でがんばれ!」
 
( 了解で~す。 )
 
 腕を上げて挨拶する三田主任。他の部屋の巡回に回って行った。

 再びデータ入力に戻る椎葉きよしだった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

ト・カ・リ・ナ〜時を止めるアイテムを手にしたら気になる彼女と距離が近くなった件〜

遊馬友仁
青春
高校二年生の坂井夏生(さかいなつき)は、十七歳の誕生日に、亡くなった祖父からの贈り物だという不思議な木製のオカリナを譲り受ける。試しに自室で息を吹き込むと、周囲のヒトやモノがすべて動きを止めてしまった! 木製細工の能力に不安を感じながらも、夏生は、その能力の使い途を思いつく……。 「そうだ!教室の前の席に座っている、いつも、マスクを外さない小嶋夏海(こじまなつみ)の素顔を見てやろう」 そうして、自身のアイデアを実行に映した夏生であったがーーーーーー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

忘却の艦隊

KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。 大型輸送艦は工作艦を兼ねた。 総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。 残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。 輸送任務の最先任士官は大佐。 新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。 本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。    他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。 公安に近い監査だった。 しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。 そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。 機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。 完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。 意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。 恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。 なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。 しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。 艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。 そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。 果たして彼らは帰還できるのか? 帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

ビキニに恋した男

廣瀬純七
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-

ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。 1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。 わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。 だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。 これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。 希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。 ※アルファポリス限定投稿

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...