「メジャー・インフラトン」序章1/ 7(太陽の季節 DIVE!DIVE!DIVE!ダイブ!ダイブ!ダイブ!)

あおっち

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第16章 私のヒーロー発見。

第4話 ヒーローは、目の前に。

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 おつまみのビーフジャーキーに手を出す伊東。
 
「あの~、なんと言うか。」
 
「なんです?もったいぶらないで下さい!」
 
「……2人とも千歳のあれの生き残りだべさ。」
 
 正面をカッと見開いて固まる伊藤奏。
 
「……。」
 
 何故か、左腕を握りながら震えている様子になって来た。
 
「え、えっウソ…….。じょ、冗談は辞めて。エル兄~っ!幾らなんでも戦って亡くなったエースバトラーに不謹慎ですよ!ましてや、女性……んっ?」
 
 見た事のない真顔で沈黙する椎葉。
 
「エル兄っ?」
 
 覗き混むと、深い沈黙の椎葉。

「……。」
 
「えっ本当なん?」
 
「カナちゃん……、言ってしまった。亡くなった事になってる。周りで知ってるのは小林と椎葉、マズルファミリー、黄社長だけだ。」
 
「いや、あの、その。……え?」
 
 顔が急に赤くなる伊東大尉だった。(12年前から知ってるエルの義兄ちゃん。何度も家へ遊びに行って身内のような人。今でもOVAアニメとか後日談漫画が続く"エースバトラーGod of Siva with Parvti"の主人公の小林。ストーリーでは、トップパイロットの小林が(シバの神)を操る。そして、その相方のバトラーのコール名はパールバディ。(小林を助ける為に、爆死した恋人のバトラーの記憶を持ったAI)と言う設定になってる。相方のパールバティのAIは元PKFS国連平和維持軍の米軍女性機動モービルパイロットのハズ。そのモデルになった千歳第1機動打撃群へ憧れて、私は短大卒業後入隊した。実際にあるネットや軍の文献でも、小林の小隊、シバの神のパイロットは小林大佐で、お子ちゃまきよしと呼ばれるパイロットとルオと呼ばれるパイロットが戦死したとなっていたのだ。)
 
 ギロッと椎葉を睨む伊東大尉。
 
 アッと気が付き、目が大きくなる。
 
( あっ、えっ、椎葉……椎葉っ……シーバ!SIBA!あのインドのシバ神をもじったマークのエースパイロットって、このヲタク!ええーっっ!12年全く気がつかなかった。そして、最近発覚した、(シバの神)のパイロットのアダ名は、お子ちゃまきよし。きよし……。椎葉きよし!私の青春はこの撃墜王達に辛い時、苦しい時も支えられていたのに。全国の女子高校生も憧れた国民、いや世界、西側陣営の大英雄がこんな人。女子友にバレないよう何体の海洋堂のプラモデル作った事か。ガッカリ、AIの方が良かった……。 )
 
「あれっなんかカナちゃん、急にガックリしてるけど、しかたないべ。いや、漫画はカッコいい女機動歩兵だけど現実はこんなオッサンでスマン、スマン。アハハハ。」
 
(心臓が爆発する!危ない、危ない~落ち着け私。殺人のプロフェッショナルの伊東大尉、落ち着け!)と心の中で必死に心を沈めた。
 
「いえ、ハハ。ぜぜっ全然っ。だから2年間空白が……。」
 
「ん~ま、まぁな。」
 
「敵の大軍、千歳での不利な戦いで完全撃退したんですよね?その時、幼稚園に上がったばかりの頃で良く覚えてませんけど。私、博多っ子で、遠くの北海道の千歳を攻撃された時、博多でも家族で父親の実家に避難しましたよ。遠い北海道の事で実感ありませんでした。本州から南の人は同じだと思いますよ。今も。」
 
「まぁ、いいじゃない。カナちゃん」
 
( 人民解放軍160機vs千歳シーラスワン48機の中でたった2機の生き残り。敵の一方的な侵攻。大破炎上し重症を負った小林大佐と、そして、あともう1人誰かなんて、ぜんぜん気にした事もなかった。まして戦死したハズだ。その内の生残りの1人、それがコバさん。入隊した機動モービルの技能教官だった。アニメで主人公、本物の小林大佐がいて、もの凄くビックリして、驚いて、そして舞い上がった。……ただ戦死したもう1人を気にした事があるとすればあの時だけ。思い出したくない。 )
 
 伊東大尉はもの凄く厳しいシュミレーター訓練を思い出した。忘れていたハズの左肩、足首の古傷の痛みを覚えた。
 
( ブーッ、ブーッ。 )
 
 伊東奏のスマハンドが震える。
 
「あっメイリンから電話。エル兄、トイレで電話します。」
 
「へい。カナちゃん。」
 
 タッタッと廊下を歩きながら左右確認してトイレの中へ入る。
 スカートと下着を下げて、便器に座る奏。
 水を流して声をごまかす。
 
「こちら伊東大尉、切り替えます。カウント・ヨン、サン、フタ、ヒト、イマ。」
 
「超長波、コンタクト。大尉。」
 
 シャキシャキ喋るメイリン。
 
「拾った。有難う伍長。」
 
「御武運を。」
 
「黄伍長も。」
 
 便器に座りながら通信文を黙読。
 ところが、ついつい声を出してしまった。
 
「……はぁ?ビジターがぁオディ。って。」
 
 あっ!と口を押さえて、声が聞かれてないか、スカート、パンツを下ろしたままの姿でドアに耳を当てて確認、また便器に戻る。
 
「フムフム……欺瞞……ジャンプ塔、ふっ。ほう、はっ?オディァ…….南北……そっくりさん、殺害クックッ……おのれ……なぁにぃ……人の制服ぉぉ……洗濯前の発酵制服を盗みやがって……クッッ……んっんっ……クッ!」
 
 トイレの上を眺めながら水を流し身支度をした。
 両手で拳を上げた。
 
「了~解~ッ!うりゃ~っ!」
 
 マックス湧き上がる怒りを押さえ、こめかみに血管を浮き上げながらトイレを出て来た伊東奏大尉。
 化粧室で鏡を見た。
 
「私の顔コピーってか!……絶対ブチ殺す!」
 
 パンパンっ頬を打って気合いを入れ直した。
 お化粧をゆっくり直す。
 気を鎮めて席に戻る伊東大尉。
 何事もないように歩き着座する。
 そこはプロ中のプロの兵士。
 
「エル兄ィ~メイリンが先に栗山……。あっもう寝てるし。まっいいか!」
 
 着座して残りのビールを飲みながら、通路上に表示されるニュースをウトウトぼんやり眺めていた。
 夕陽の朱色に染める山々。
 その地下を空気を切り裂きながら秋田と岩手の県境のトンネルの間を進むリニア新幹線。
 少しアルコールがまわったのか、新兵の頃を思い出し始める伊藤奏。
  

    ◇    ◇


 ブリーフィングモニターの前に立つ小林大佐。
(このシュミレーターは、現行の機動モービルHARMORより2世代旧式の機体性能をシミュレートしてある。しかし、戦闘を正確に再現出来るプログレッシブ・シュミレーターなのだ。ただし操作系などは現行と全く同じだ。まず、訓練第一段階は基本操作。体の一部となるまで訓練し尽くす。第二段は新格闘技能2級程度。一般課程の普通科や内勤の者はこれで終了。第二段階卒業して晴れて50ミリカノン砲装備での射撃など、付属装備の携行での訓練が可能だ。ここまでが慣性環境用機動モービルHARMAR本体用にプラグインが出来る。低重力及び無重力のスペースタイプなら第 3.5段階まで取得する必要がある。それから上を目指す者は第五段階まである。
 ちなみに第五段階となると、希望者がいれば15年前の千歳宙空ステーションの攻防戦、エースバトラーの動きを体験してもらう事が出来る。諸君らも知ってるシバの神だ。プラモデルでも、アニメで今でも人気のある機動モービルだ。ただ簡単にはいかない。敵の40ミリ砲弾の着弾ダメージも再現している。また、転倒のダメージによる荷重Gや速度は実際の戦闘の60%に抑えているが、死亡または重症にいたるケースが多発している、大変危険なプログラムだ。私でさえ1回目ではクリアー出来んかった。と言うより怪我をしてしまった。)
 
 と、左足首を叩いていた。
 
( 私はHARMORシュミレーター、それもシラス加盟国軍およびPKSF国連平和維持宇宙軍が加盟する永世中立国スイスの開催する、ワールドミリタリー・オンラインシュミレーション選手権、パワー・トゥルーパーズ・オンラインバトルでは常にトップだった。 )
 
 リアル・パールバティの降臨と言われ世界中の候補生の憧れの的だった。
 有頂天になっていたのだ。
 そして挑んだ第5段階の究極のバトル・ステージ(バトル・オブ・千歳)。
 第5段まで全勝続きの私は調子に乗って挑んだ。
 しかし、しかしだ。
 
( わたしは負けた。完敗したのだ。 )
 
 小林教官がシュミレーターシールドを緊急パージした。
 大量の血と共にコントローラーに装置した腕と肉片が転がり落ちた。
 
「キャー‼」
 
「うわ~‼」
 
 モニターを見ていた候補生やギャラリーが、パニックになる。
 
( 伊東!伊東訓練生!救急隊を早く!カナデ!なぜ止めなかった。!伊東~ッ!意識はあるか!オイ、お前らそこの腕と足首、肉片拾ってくれ!止血っ止血!氷も持ってこい! )
 
 たかがシュミレーターでわたしは九死に一生を得て、半年間入院する事に。完全に打ちのめされた。

    ◇    ◇

 
 5分位寝ただろうか。
 
「はっ?」
 
 と、目が覚めると、目の前には幸せそうに寝る椎葉がいた。
 
 横顔を見た。
 
 この人が経験した、たった60%の再現力で手足が吹き飛んだ私。
 そう思った瞬間、余りの恐怖に全身が震えだす。

( ガタガタガタ。 )
 
 手術も終わり意識が戻った時の、ショック症状のASDが出たのだ。
 失語症になった私。
 暗闇の時の、あの匂い、あの苦い味を口の中に感じた。
 椎葉清の寝顔を見ている内に、身体の中で心臓の音がこだまする。
 小林に感じた圧力を遥かに超えた、誰もが到達出来ない強大な何かを感じた。
 周りの乗客に気づかれないように息を長く吐き、自律神経をコントロールした。

( スー……、ハァー……。 )

( スー……、ハァー……。 )
 
 私は退院後、機動モービル乗りをあきらめ、アンチ機動歩兵、アンチ機動モービル対応の特殊任務部隊に特別配属されたのであった。
 すなわち、特殊武器装備を身にまとい、身体1つで機動歩兵WALKER、機動モービルHARMORを殲滅するゼロ距離・白兵戦部隊員なのだった。
 
 サイレントに近寄り、パイロットの命だけを頂く特殊殺人部隊、いわゆるシーラス・忍者部隊の「くのいち」なのだ。
 
 私の体を制御する。次第に心臓が落ち着き、手足の震えも収まっていく。
 
 同時に……。

 たった1人で基地隊員、職員の命と親友を守りきった男が目の前にいる。
 口ではいつも、何かと情けない事ばかり言うのだが……果たして過去の行動は?そうだ西女の時でも、ライブの時でも、いつでも必ず助けてくれた、いつも、結果はオールクリアーだった。
 小林とは違う初めての感情が、奏の心の奥に静かに芽生えたのだ。
 
( 毎日会ってたエル兄ィが、追いかけても追いかけも届かない……憧れの女神のパールバティか。イヤ、シバの神。シバの神かぁ。人類最強のHARMOR「God of Siba」のパイロットだったんだ。うぅ。ううっ。 )
 
 少し涙を浮かべて女の目になった伊東。
 思わずくちびるを合わせようと……あらっ、ヨダレ。と椎葉のヨダレをハンカチで優しく拭いてあげた。
 
( いかん、いかん私とした事が。 )
 
 左右をさっさっと見渡し、優しく椎葉きよしの耳元でささやいた。

( シルビア先生御免なさい……。 )

「私のヒーロー大発見……チュッ。」
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