印刷機

アサツキ ホシナ

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印刷機

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この会社はブラックだ

残業時間100時間は当たり前

休日出勤は給料が出ない

そのせいか、疲労で普段の自分ならやらないミスをしてしまう
特に印刷機に用紙を入れずにコピーのボタンを押してしまうことが多い

大抵、何も入っていないので、「用紙をセットしてください」といわれる
しかし、たまに用紙が入ってることもあり、極秘の書類を何枚も印刷してしまうこともあった

この日も、早朝5時に電車で出勤し、ブラック会社に向かう途中、部活動の朝練と思われる女子高生が妙な話をしていた

「昨日のニュース見た?」

「見た見た、怖いよね。うつ伏せで顔を引きずられて死んじゃったんでしょ」

「そうそう長い髪の毛が車のトランクに挟まって、運転手はそのまま気づかずに数百メートル走ってたんだって」

「普通、気づかないかね。引きずられてる人は声出せないんもんね」

「私たちはショートカットだから大丈夫だね」

「ちょっと怖いこと言わないでよー」


朝から気味の悪い話を聞いてしまった
昨日は日付が変わってから帰宅して、そのまま寝てたからニュースなんて見ていない
さらに女子高生がこんなことを言った。

「でさ、その女の人が勤めてた会社って、ブラック会社だったらしいよ。だから疲労とかで髪の毛が挟まっても気づかなかったのかなぁ」

僕は今の言葉を自分の肝に銘じる他なかった。



その日の夜、朝の話など忘れていつもどおり日が変わりそうな時間帯

「これだけ印刷して今日は帰るか」

印刷機に手をかけ、用紙を入れずにコピーのボタンを押す。またやってしまった。
印刷機が動き出し、用紙が出てくる
「重要な書類じゃないだろうな。シュレッダーにかけるの面倒くさいんだよ」
用紙を確認しようと受け取りトレイに目を移した瞬間

背筋が凍った

そこには

顔の皮がない髪の長い人間が写されていた







しかし、表情は鮮明で、歯をむき出して笑っている。

ケタケタと笑いながら、僕に視線を向けてくる。

印刷された女の人に意識が宿っている






印刷機は止まらない

数百枚の顔の皮のない人の写真が出てくる

僕は意識を失った





後日、事故の女の人は僕と同じこのブラック会社に勤めていたと知った
事故は隠蔽されていたから全く気づかなかった
しかも、事故の犯人はこの会社の社長であり、
無論、会社は倒産
僕は行き場をなくしたが、あのまま働いていても自殺か過労で死んでいたかもしれない。
彼女は最後の怨念でこの会社の人達を救ったのかもしれない


その怨念が晴らされたかは見当もつかない
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みんなの感想(2件)

ハトポッポ鉄鴉

Twitterから興味本位で読んだけど、表現がしっかり出来てる!

実際にどんなことが起きたかという話を書いてなおかつそこにはなしの不気味さを表現するための短いストーリーまで考えててすごい!

僕は安直にあったことを書くことをメインにしちゃってあんまり感情や表現が乗らないので参考にさせていただきます!

良い作品をありがとうございます!
これからもがんばってください!

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柚木ゆず
2021.02.28 柚木ゆず

完結した作品欄でタイトルをお見かけし、拝読しました。

ホラー感が凝縮された、作品ですね。
印刷機。こちらの存在が、恐怖を何倍にも引き立てていますよね。

非常にぞくっとする、まさにホラー、その言葉がぴったりなお話でした。

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