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深夜の病院
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山道は初心者運転手にとっては、とんでもなく難易度が高い。
なにより夜間というのがネックだった。
自分で運転したことがないから分からなかったけど、主な道ならともかく街灯がないんだ。
頼りになる明かりは、車のライトだけ。
カーブの先には道があるのかどうかも分からない、暗闇が続いている。
だからライトが照らす以上の先を判断もできないうちにスピードを出して走らせられない。
どうしたって、のろのろとした走りになって焦る。焦る。
こんなに時間がかかってて大丈夫なんだろうか、三重子さん。
やっぱりタクシーを呼んで待っていた方がよかったんじゃないか。
そんな雑念がよぎって、そのたびに私は強く念じて考えを振り払う。
「里ちゃん……!!」
「……!!」
突然、強く名前を呼ばれて思わずブレーキを踏む。
車は、前ばかりを気にしていた私の運転のせいで、ガードレールのない谷沿いの道を、半分タイヤが崖側に落ちかかっていた。
ぞっと、鳥肌が立つ。
そろそろとバックして安全な位置まで車を戻す。
冷や汗と脂汗が同時に出た。
運動をしたわけでもないのに、息が荒い。
「大丈夫、落ち着いて。アタシたちが乗ってるんだから。不運な事故なんて起きない。……だから、落ち着いて」
「は、はい……」
道を全く知らないせいもある。
どのくらいの道幅かとか、まるで覚えてないから思わぬところでこんなミスをするんだ。
車ほしいなあなんて、軽く考えていた少し前の自分を叱ってやりたい。
道くらいは、もっときちんと知っておくべきだったんだ。
道は山を一つ越えて、緩やかなくだりに差し掛かる。
山道はつづらに折れて、麓へと降りていく。
街の明かりが見えて、私は気持ちを引き締めた。
道路に街灯がともりはじめ、先が見やすくなる。
だけどここで気を抜いたりしちゃだめだ。
「び……病院までの道って……」
「アタシが案内するから。道幅も広くなってきたし、安心していいわ」
私は、あらためてハンドルを握りなおす。
信号──さっきまで見かけなかったから、うっかり見落としそうになる。
都市部に入れば入ったで、気をつけなくちゃならないことがたくさんあった。
それでも松里さんの案内は丁寧で、分かりやすい。
おかげで、幹線道路を入ってすぐの病院はすぐに分かった。
救急外来のある病院は、駐車場にも何台か車は止まっていたけれど、なんとか夢中で駐車をこなす。
ブレーキをかけてエンジンを切ったころには、私は真っ白になってしまっていた。
「オッケー、里ちゃん、落ち着いたら来て。アタシは先に三重子さん連れて行くから」
「は、はい……」
松里さんはひょいと三重子さんを御姫様抱っこして、外来受付に向かう。
私はまだ、震えの止まらない身体を持て余して呆然としていた。
よかった……よかった、無事についた。
でも、まだ診察は終わってない。
三重子さんの無事を確かめなくちゃ。
初めて扱った車だったものだから、鍵をどうすればいいのかもわからなくてモタモタとする。
これ誰の車だろう。
かろうじてオートマだったから私にも運転できたけど、カーナビも何もついてない。
やっぱり、こうして何かあった時のために、私も運転できるように車が欲しいな、と考える。
なんとか鍵を引き抜いて、猫の姿に戻った汐に声をかけた。
「行ってくるね。……ついてきてくれて、ありがとう、汐」
「留守番している。行ってこい」
ぱたりぱたりと尻尾を左右に揺らして、汐は小首を傾げた。
その仕草が可愛くて、私は泣き笑いみたいな表情になった。
いってきます、と言い置いて受付に向かう。
そろそろ日付が変わるくらいの遅い時間なのに、救急の受付はかなり人がたくさんいた。
ぐったりしている小さな子供や、長椅子に横になっているお年寄り、不安そうな付き添いの人たち。
医療関係者の人たちって、本当に大変だ。
病気も怪我も、いつ罹るかわからないものだもんね。
見回すと、松里さんがこっちと手を振ってくれる。
三重子さんは、ちょうど今、診察の最中のようだった。
なにより夜間というのがネックだった。
自分で運転したことがないから分からなかったけど、主な道ならともかく街灯がないんだ。
頼りになる明かりは、車のライトだけ。
カーブの先には道があるのかどうかも分からない、暗闇が続いている。
だからライトが照らす以上の先を判断もできないうちにスピードを出して走らせられない。
どうしたって、のろのろとした走りになって焦る。焦る。
こんなに時間がかかってて大丈夫なんだろうか、三重子さん。
やっぱりタクシーを呼んで待っていた方がよかったんじゃないか。
そんな雑念がよぎって、そのたびに私は強く念じて考えを振り払う。
「里ちゃん……!!」
「……!!」
突然、強く名前を呼ばれて思わずブレーキを踏む。
車は、前ばかりを気にしていた私の運転のせいで、ガードレールのない谷沿いの道を、半分タイヤが崖側に落ちかかっていた。
ぞっと、鳥肌が立つ。
そろそろとバックして安全な位置まで車を戻す。
冷や汗と脂汗が同時に出た。
運動をしたわけでもないのに、息が荒い。
「大丈夫、落ち着いて。アタシたちが乗ってるんだから。不運な事故なんて起きない。……だから、落ち着いて」
「は、はい……」
道を全く知らないせいもある。
どのくらいの道幅かとか、まるで覚えてないから思わぬところでこんなミスをするんだ。
車ほしいなあなんて、軽く考えていた少し前の自分を叱ってやりたい。
道くらいは、もっときちんと知っておくべきだったんだ。
道は山を一つ越えて、緩やかなくだりに差し掛かる。
山道はつづらに折れて、麓へと降りていく。
街の明かりが見えて、私は気持ちを引き締めた。
道路に街灯がともりはじめ、先が見やすくなる。
だけどここで気を抜いたりしちゃだめだ。
「び……病院までの道って……」
「アタシが案内するから。道幅も広くなってきたし、安心していいわ」
私は、あらためてハンドルを握りなおす。
信号──さっきまで見かけなかったから、うっかり見落としそうになる。
都市部に入れば入ったで、気をつけなくちゃならないことがたくさんあった。
それでも松里さんの案内は丁寧で、分かりやすい。
おかげで、幹線道路を入ってすぐの病院はすぐに分かった。
救急外来のある病院は、駐車場にも何台か車は止まっていたけれど、なんとか夢中で駐車をこなす。
ブレーキをかけてエンジンを切ったころには、私は真っ白になってしまっていた。
「オッケー、里ちゃん、落ち着いたら来て。アタシは先に三重子さん連れて行くから」
「は、はい……」
松里さんはひょいと三重子さんを御姫様抱っこして、外来受付に向かう。
私はまだ、震えの止まらない身体を持て余して呆然としていた。
よかった……よかった、無事についた。
でも、まだ診察は終わってない。
三重子さんの無事を確かめなくちゃ。
初めて扱った車だったものだから、鍵をどうすればいいのかもわからなくてモタモタとする。
これ誰の車だろう。
かろうじてオートマだったから私にも運転できたけど、カーナビも何もついてない。
やっぱり、こうして何かあった時のために、私も運転できるように車が欲しいな、と考える。
なんとか鍵を引き抜いて、猫の姿に戻った汐に声をかけた。
「行ってくるね。……ついてきてくれて、ありがとう、汐」
「留守番している。行ってこい」
ぱたりぱたりと尻尾を左右に揺らして、汐は小首を傾げた。
その仕草が可愛くて、私は泣き笑いみたいな表情になった。
いってきます、と言い置いて受付に向かう。
そろそろ日付が変わるくらいの遅い時間なのに、救急の受付はかなり人がたくさんいた。
ぐったりしている小さな子供や、長椅子に横になっているお年寄り、不安そうな付き添いの人たち。
医療関係者の人たちって、本当に大変だ。
病気も怪我も、いつ罹るかわからないものだもんね。
見回すと、松里さんがこっちと手を振ってくれる。
三重子さんは、ちょうど今、診察の最中のようだった。
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