【完結】「弟の婚約者に相応しいか見定めに来た」と言っていた婚約者の兄に溺愛されたみたいです

あろえ

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第16話

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 魔草騒動の当事者だったため、私とアレク様は冒険者ギルドで対処に追われ、大幅に時間を費やした。

 その結果、日が傾く時間まで拘束されてしまい、早くも一日が終わろうとしている。

 買い出しを終えたら、のんびり過ごす予定の休日だったのに、まさかこんなことになるとは。付き合ってもらったアレク様に申し訳ない。

 今日は運がなかったなーと思いつつ、互いに得た情報交換しながら、アレク様と二人で王城に帰っていた。

「冒険者ギルドが非を認めて、国と協力して処理にあたるそうだ」
「意外ですね。そんなにアッサリしているなんて」
「同情する話ではある。先代のギルドマスターが横領していたみたいでな、一年前に新しく就任したはいいものの、問題ばかりだと嘆いていたよ」
「なるほど。雇っている人を見る限りは、大変そうでしたからね」

 冒険者ギルドのシステムに詳しいベテランがいなかったみたいだし、職員を一層して新体制を取ることになったんだろう。

 魔力照合検査を実施していなかったのも、手探り状態でやっていた結果なのかもしれない。荒くれ者の冒険者たちを相手にしていたら、ずさんな対応をしたくなる気持ちもわかる。

 でも、ルールは守るべきだ。人の命に関わることは、謝って済むものではない。

 まあ……女性同士の言い合いを聞く限り、ギルドマスターに同情する気持ちもわかるが。

「そっちはどうだったんだ。魔草の被害者は出なかったのか?」
「冒険者の持っていたカバンが汚染されていたので、処分したくらいですね。危険な部位は入念に洗浄しましたし、他に影響はないでしょう。念のため、装備を磨くようには指示しておきました」

 毒草という言葉に怯えていた冒険者たちは、大人しく指示に従ってくれた。

 一歩間違えたら死んでいた、という現実は相当怖かったらしい。魔力照合検査で腕や手が赤く光ると、顔色を変えて洗い流していた。

 始めこそ態度が悪かったものの、彼らは悪い人たちではないと思う。

 首を突っ込んだ私に「へへっ、なんか悪かったな」と恥ずかしそうに謝っていたので、「依頼を出す時があれば格安で受けてください」と言っておいた。

 見返りは金銭で要求する、私はそういう女である。

 なお、魔草を買取していた受付女性も反省していたみたいで、黙々と手を洗っていた。意気消沈していたのは、女の言い合いで敗れたからだと推測する。

 こんな細かいことまでアレク様に伝える必要はないため、私の胸の中に閉まっておくとしよう。

「冒険者も災難だったな。あのまま魔草が買い取られていたら、罪に問われていただろう。怒りの矛先をギルドに向けてもおかしくはない」
「そうでもありませんよ。魔草の情報は国が高値で買い取ってくれると教えてあげたら、ホクホク顔になっていました」
「現金な奴等だ。ところで、いつから冒険者たちの悪徳な密輸ではない、と判断していたんだ? 他国のスパイだった可能性もあるんだぞ」

 正直なところ、率先して冒険者ギルドに持ち込む馬鹿はいない……と言いたいところだが、現実は笑えない状況だった。

 もちろん、冒険者ギルドが魔力照合検査をしていない、と知っていて持ち込んだのなら話は別だ。でも、彼らは嘘をついているわけではないだろう。

「意図的に魔草を持ち込もうとしていたのなら、根に土を付着させたままにしていたはずです。見た目だけで判断するなら、ヒチリス草は僅かに根が赤く、魔草は根が白い。それくらいしか比較する場所がないので、純粋に誤解していると判断しました」
「逆に言えば、冒険者たちが丁寧な仕事をしたから判明した、ということか」
「そうですね。あとは立派に成長したヒチリス草をいくつも持っていた、というのもあります。別名、共食い草とも呼ばれていて、群生地帯なんて存在しません。未熟なものが多いんですよ」
「ヒチリス草の厳選をしていた人間とは思えない発言だな」
「鮮度で選んでいたんです。ヒチリス草は傷みやすいんですから」

 薬草を購入する際、何度も確認していたこともあり、アレク様に小言を言われてしまった。

 次もまた買い出しに付き合ってくれるのなら、もう少し早く買い物を済ませよう。根に持たれるわけにはいかない。

「買い出しをしていた時は子供の付き添いみたいだったが、まさかこんなことになるとはな」

 すでに根に持たれているかもしれない。せっかくの休日を潰したのだから、当然のことだろう。

「巻き込んでしまったことについては、素直に申し訳ありませんでした」
「いや、構わん。放っておくには厳しい案件だった。魔草だと気づいたことについては、称賛に値する」
「……国王様から褒美もらえますかね? 金一封がいいんですけど」
「調子に乗るな」
「イテッ」

 褒められ慣れていない私の照れ隠しに、アレク様のゲンコツがさく裂してしまった。

 そして、真面目な話でもあるのか、立ち止まって真っすぐ目を見つめられる。

「変な首の突っ込み方をしたのは、減点だ。冒険者に突っかかったら、どうなるかくらいはわかるだろう。心配する人間だっているんだぞ」

 どうにもアレク様の言葉は、お世辞と捉えきれない部分が多い。大切な人に伝える言葉のように聞こえてしまう。

「心配してくださったんですか?」
「心配しないとでも思っていたのか?」

 ズルい、非常にズルい返答の仕方だ。質問を質問で返してはいけない。ルール違反である。

 当たり前のように心配してくれるのは……、今まで家族以外でいなかったのに。

「ごめんなさい」
「それでいい。ニーナは大事な婚約者候補だからな」

 その時だった。何かが胸に突き刺さったかのように、ズキッと痛みを覚える。

 なんだろう、この痛みは。魔草の影響……ではないか。あの毒は運動機能に障害をもたらすものではあって、まずは痺れが起こるはず。

「ん? 何かあったか?」
「えっ? いえ、何でもありません。どうにかして金一封もらえないかなと思いまして」
「期待する気持ちはわからんでもないが、俺の経験上、国王のありがたいお言葉止まりだ」
「そ、それは、あ、ありがたいですね……」
「どうでもいいという感情が溢れ出しているぞ」

 すぐに痛みが引いたので、胸の痛みは問題ないと判断することにした。

 影の薄い私は、人にぶつからないように歩かなければならない。アレク様と一緒にいて恥をかかせるわけにはいかないので、今は何も考えないでおこう。
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