上 下
35 / 68
第三章 魔王退治

第三十五話 魔王退治するの?

しおりを挟む
 私達が滞在している村の近くに魔王が出たという噂が流れた。
「魔王が出たんだって、旅のついでに倒しちゃおうぜ」
サラが溢れんばかりの自信で言った。サラさん強いもんね。
「それは無理だ。まだまだ私達の力では魔王に勝てないだろう」
勇者様が冷静な口調で答える。このパーティーでも勝てないのか。魔王って本当に強いんだ。

「作戦の立て方では勝てるって」
粘るサラ。
「無理をしてはいけませんわ」
クレアも冷静な判断だ。
「そうよ。大けがでもしたら大変よ。私の顔に傷が付いたら責任取ってくれるの?」
アイラさん。魔王相手だったら顔に怪我では済まないよ。

「でも私達の最終目標は魔王退治でしょ?」
「それはそうだが、今はまだ早すぎる」
「でも、魔王を退治したら物凄い大金が貰えるんだぜ」
サラは諦めきれない様子だ。お金欲しいのかな?

「麗華ちゃんも魔王退治したいよね?」
「私はどちらかというと・・・・したくない・・・・かな?」
「もう!」

 その時、ポチが余計な一言を言い出す。
「麗華は魔王を退治するためにこの世界に来たんだ」
「そうか! あああああ、麗華のためにも魔王を退治すべきだよ」
「私は魔王退治なんて、別にどうでも・・・・」
「遠慮しないでいいよ」
決して遠慮はしてないんですけどー。

「麗華は選ばれし者なんだ。だからこの異世界に来たのさ。どんな強い相手でも勝てる可能性を秘めてるんだ」
「ポチ! 何言い出すの!?」
「そうだったんだ」
「違います!」
「麗華は十人の不良に絡まれて一人で全員を倒したこともあるのさ」
「嘘は止めて!!」
「なら大丈夫か」
「勇者様~」

「麗華ちゃんて実は凄かったのね」
「私も驚くました。そんな力を秘めていたなんて知りませんでした」
「才能を完璧に隠すって凄いな。能ある鷹は爪隠すってこのことだよ」
「皆さん、信じないでくださいね」

 私の言葉をよそにみんなは勇者様を中心に円陣を組むと、
「魔王を倒すぞ!」
「おー!」
と大きな声を上げた。

 まずいよ。このままじゃ魔王退治に出かけることになっちゃう。何とかしなきゃ。でもこのタイミングでポチがまたまた余計な話を始める。これって最悪の展開だよね。
「魔王を退治するのはとても重要なことだ」
やっぱり。もうダメかな。ああ、まだ死にたくないよ~。

「でも、今回は止めておくべきだね」
あれ?
「魔王はいつでも倒せる。今無理をしてやられてしまっては全てが終わってしまうんだ」
どうなってるの?
「確かにそうだな。もう少しレベルを上げることにしよう。それからでも遅くない」
「考えてみればその通りよね」
勇者様の一声で魔王退治の話は終わりを告げた。

 でもポチが魔王退治をしたがらないなんてどういうことかしら? 魔王を倒すために私を連れてきたんだよね?

 ポチがこのメンバーで魔王を倒してしまったら報奨金が極端に減ってしまうので、魔王退治に反対していたと言う事実を麗華は全く気付くことはないのであった。
しおりを挟む

処理中です...