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第三章 魔王退治

第三十七話 魔王が現れた

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 私達一行は魔王が住むという魔王城へ向け北へ北へと進んでいった。
「いつから魔王を倒すと決めたんだい?」
ポチがいつになく必死で尋ねる。

「麗華ちゃんは魔王を倒すためにこの世界へ来たんだろ? だったら麗華ちゃんだけで魔王のところへ行かせるわけには行かないからな」
勇者様が渋い声で答える。う~んかっこいい! でも女性なんだよね。

「君たちのレベルで魔王を倒しに行くのは危険だ。考え直すべきだよ」
「あらポチさん、心配してくれるのですか?」
クレアは指を組んで目を輝かせた。
「勿論だよ。魔王は強いからね」

「怪しいな。こいつが私たちのことを心配するなんて。もしかして報奨金の分け前が減るとか思ってるんじゃねえか?」
「僕がそんな猫に見えるかい?」
「思いっきり見える」
「サラは僕をそんな風に見ていたんだね。心外だ」
どちらかというと私も見えるけど。

「じゃあ、こうしましょ」
アイラがポチにむかって言った。
「魔王を倒しても報奨金は全て麗華ちゃんにあげるわ。これでも行かない方がいいかしら?」
「それなら今すぐ魔王城へ行こう!」
「やっぱり報奨金目当てだったんじゃねえか!」
サラがポチを掴もうとしたがポチは予想していたようにさっと避けた。
 それにしてもポチって、とてもわかりやすい性格だよね。

 暫く進んでいくと辺りが突然薄暗くなった。夕立でも来るのかな?
「お前達どこへ行こうとしている?」
地響きのような大きな声が聞こえてきた。そして、目の前に黒いマントのような服を着たモンスターがその手下2匹と現れた。
「我々は魔王退治に北へ向かっている。お前こそ何者だ?」
「我が輩こそお前らが捜し求めている魔王だ」
「何だと!」
全員が身構える。

「魔王を倒そうなど十万年早いわ。我が輩の戦闘能力は53万と8だ。お前達など一瞬で葬り去ることができる。覚悟はいいな」
ええーーー! どうすればいいの? まずいよ~。みんなやられちゃうよ~。
 勇者様は魔王を睨み付けて歯を食いしばっている。
「お前がこのパーティーのリーダーのようだな? レベルはいくつだ?」
「レベル50の勇者だ」
「そのレベルで我が輩に勝てると思うか?」
「うっ!」
「どうだ? 我が輩と契約を結ばないか?」
まさか世界の半分をやろうなんて言わないよね?

「何だ?」
「お前が魔王退治を諦めたら、ここにあるきびだんご(一箱十個入り)の半分をやろう。もし断ればこの可愛い女の子を含む全員が死ぬことになる」
思いっきり規模が小さかったー!

「魔王から食べ物を恵んで貰うほど私は落ちぶれていない!」
「ほほう、威勢がいいな。お前だけが死ぬんじゃないのだぞ。それでもいいのか?」
「むしろ魔王を捜す手間が省けた。ここでお前を倒す!」
「何だと!?」

 勇者様は剣に手を掛けた。
「正気か? まあいい。だったら半分と言わずきびだんごを一箱全部やろう。それならどうだ」
「問答無用」
「ちょ、ちょっと待て。お前自分の立場がわかっているのか?」
「わかっている。しかし勇者として敵に背を向けるわけにはいかぬ」
勇者様、とてもかっこいいけどさすがにまずいよ。相手は魔王だよ。と思っても何も言えない私なのです。

「よろしい、そこまで覚悟を決めているのなら望みを叶えてやろう。手下どもお前達の本当の姿を見せてやれ」
「は!」
手下達はメガグレートドラゴンの姿に変身した。ええー! 嘘だよね?

「勇者様! 逃げよう!」
言えた!
「勇者のプライドが許さぬ。下がっていろ!」
メガグレートドラゴンの攻撃。あああああは3のダメージを受けた。あれ?
「覚悟しろ。行くぞ!」
あああああの攻撃。魔王に365のダメージを与えた。魔王は倒れた。

 魔王に勝っちゃった。
「やはりこれは」
倒れたはずの魔王はなぜか狐の姿になっていた。
「どういうこと?」
「これはムジーナというモンスターだ。いろいろな姿に化けられる」
それを聞いた私は思わず座り込んでしまった。

「恐らく魔王討伐軍が来たときに追い返す役目なのでしょうね」
「クレアさんはわかってたんですか?」
「はい、手下がメガグレートドラゴンになったときにわかりましたよ」
「私もわかってたわ」
「勿論私もわかってたぜ」
もう! 私一人が緊張してたってこと? みんなが笑う中、私一人が落ち込むのであった。
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