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第四章 取り敢えず四天王を倒せ!

第六十二話 指輪、外れないじゃない!

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 何はともあれ指輪の呪いは解けたんだから、これで太り続けると言う悪夢から解放されたことになるのね。
「早く指輪を外しなよ」
サラが声をかけてくれた。
「うん」
私は大きく頷くと指輪に手をかけた。

 ギュウ。あれ? もう一度ギュウ! おかしいな? 指輪が外れないのだが。
「もっと力を入れて」
「痛い!」
「これって本当に呪いが解けてるの?」
サラがおじいさんに強い口調で尋ねた。

「わしの魔法に狂いなどない。呪いは解けておる」
「でも、指から取れないじゃん」
「そんなはずはない。わしに任せろ!」
ギュウ、ギュウ、ギュウ。
「痛い痛い痛い!」
「外れんのう」
おじいさんは腕組みをして考え始めた。

「仕方ない。もう一度魔法をかけてみるか」
「ちょっと待ってください!」
私は慌てて右手を大きく振っておじいさんを止めた。
「どうしたのじゃ?」
「二分の一の確率で死ぬんでしょ? さっき成功したから今度は失敗する番ですよね?」

「そんなことはない。例えばサイコロを振って1が出たとする。次にもう一回サイコロを振って1が出る確率は一回目と同じ六分の一になるのじゃ」
数学の確立の授業で習ったやつだ。理屈ではそうかもしれないが、そんなの信じられるわけないよね。だってこの理屈だったら100回1が出続けた後も次に1が出る確率は六分の一になるわけじゃない。絶対そんなはずないわよ。となると私の出すべき答えはただ一つ!

「あんな怖い思いをもう一度するのはごめんだって言ってるのよ!」
サラが満面の笑みで、
「出たな二重人格」
と、言っているのが聞こえる。

「仕方ないのう」
おじいさんはそう言うとタンスから大きなナイフを取り出した。
「その方法もダメ!」
「一番手っ取り早いんじゃがのう」

 おじいさんはやれやれといった雰囲気で台所に向かい石鹸を持って帰って来た。
「呪いはなんだからその方法では無理って言ってるでしょ!」
私のツッコミは隣町まで聞こえたそうな。

 ギューーースポッ!
「あれ? 外れた!」
私の指から呪いの指輪が外れた。
「何で?」
私の素朴な疑問にクレアが言いにくそうに答える。
「恐らく指が太くなっていて取れなかったんですね」

 ガ~~ン!!!
 きっと太くなっているのって指だけじゃないよね!?
 私は慌てて鏡の前に走った。

 太い! た、確かに太ってる!
「今日から死ぬ気でダイエットよ!」
私はデブキャラとして生きていくと言ったのを完璧に忘れて、大きな声で叫ぶのであった。
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