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第3章 未来への旅立ち
第29話 下着問題
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俺がピンチで困っている状況で萌が突然意外なことを言いだした。
「やっぱり顔認識だったんだ」
恐らくレストランで萌と胡桃の討論の際、萌が顔認識だと言ったからの一言だろう。萌はかなりプライドが高いのかも知れない。それとも胡桃には絶対負けたくないという意識からだろうか。
「でも、食事の時は顔認識されても何も言われなかったぞ」
「食事はいいんだ。顔認識はされない。誰が何を食べても生活の変化に関係ないからね」
「そうか、男性用の服を買った時点で男の人が一緒にいると思われるんだ」
萌がにっこりと笑って胡桃を見る。これまた胡桃に私は頭がいいぞというアピールだろう。
「でも、プレゼントだったらどうするの?」
胡桃も負けてはいない。服を並べながら聞いた。
「誰でも何でも手に入れられる時代だからプレゼントという概念は薄くなってきてるんだ。プレゼントするとしたら手作りの物って感じかな」
納得のいく説明だ。でもプレゼントがなくなるのは寂しい気がする。女と買い物に行かなくて済むという点では大賛成なんだが。
「どうせ只なんだし、もっと贅沢な暮らしをしたらいいと思うんだけど。例えばこのマンションとか」
萌は不思議そうに部屋を眺めながら言った。
「住む場所は決められているんだ。一人暮らしならワンルーム。結婚すれば一戸建て。二世帯ならもっと大きな家に住めることになっている。だから私も両親と住めば大きな家に住めるんだけどね」
「住む場所も決められるわけ?」
「そう、政府が勝手に決めてくる。最も希望は出せるけど、希望通りにならないことの方が多いかな?」
「へえ、そうなんだ。じゃあさ、自動車なんかはどう? 外国の高級車乗り回したりできるの?」
「交通手段の殆どがタクシーなんだ。ほんの一部例外もあるけど。この時代バスもなければ電車もない。タクシー以外にあるのはロケットくらいかな。当然自家用車はないよ。それとこの世界には外国ってないんだ。地球全体が一つの国になっている。というか国という概念がないのさ」
「ふ~ん」
萌は長く頷くと再び服を選び出した。もしかして難しくて理解できなかったのか? だったら俺の仲間じゃねえか。
「ところで私たち好き勝手に選んじゃってるけどいいの?」
「いいよ。服は何着持ってもいいことになってるから。多くの女の子は多めに服を持ってる。私もその内の一人だ」
ピンポーン。その時玄関の呼び鈴が鳴る。これは未来でも同じらしい。
「クリーニングかな? 玄関から見えないところで隠れて。ロボットのセンサーに触れたら大変だから」
「わかった」
「%$※&#$●#(今朝出されたクリーニングです)」
玄関が開くとロボットが箱を持っているのが分かった。
「ほら、乗り出さないの」
胡桃が俺の服を引っ張る。
ユリナが玄関を閉めると俺たちは元の位置に戻った。
「へえ、クリーニングって未来の世界でもあるんだ」
「洗濯は全てクリーニングだよ」
「全て! もしかして下着も?」
驚いた表情で萌が聞く。
「そうだね」
ユリナは少し照れくさそうに笑いながら答える。
「量にもよるけどだいたい一時間で仕上がってくる」
「便利ね」
胡桃がポツリと言った。
「でも、クリーニングを利用する人って少なくなってきてるかな?」
「どういうこと?」
萌が興味津々に聞く。確かに理由を聞きたくなる話だ。
「次から次へと新しい服にする人が増えてきてるからね」
「じゃあ、服が貯まっちゃうじゃない」
「その時はいらなくなった服を返すのさ」
「素敵!」
萌はかなり感動しているようだ。いつでも好きな服を好きなだけ手に入れることができ、いらなくなったら手放せる。言い換えればデパートにある衣服売り場の商品は全て自分の物と言えるのだ。この生活はおしゃれな萌にとってはまさに理想なのだろう。
「それって資源の無駄遣いにならないの?」
真面目な胡桃は真剣な顔をしている。
「返却された服はきれいに作り直してまた店に出されるんだよ」
「そっかぁ」
二人は同時に言った。
やはり未来の世界って凄い。働かなくても欲しい物は何でも手に入る。時間がたっぷり確保されるわけだから、自分のしたいことに没頭できるわけだ。これぞ人間の理想の世界と言えるだろう。
「じゃあ、私はみんなの歯ブラシとかタオルとかばれない程度に仕入れてくるよ」
ユリナは鞄を持って立ち上がった。
「萌も行く」
萌がユリナの所へ急いで走る。
「大丈夫かなあ。ちょっとの間ならいいか。じゃあ、着替えて」
「は~い」
萌はそう言うといきなり服を脱ぎ出した。ちょっと待て! 俺はどうしていいか分からず、慌てて窓の方を向いた。
「ちょっと! 何してるのよ。ここには真歴がいるのよ」
「あっ、そうか。でも別にいいかなって。どうせ結婚したら毎日見られるわけだし。だったら今見られても同じことよね」
「真歴! 今すぐトイレに行きなさい!」
「お、おお」
俺は急いでトイレに駆け込んだ。これからは不便な生活になりそうだ。しかし、これだけでは収まらない。トイレの中までとんでもない会話が聞こえてきたのである。
「問題は真歴君の下着だよね。いくら男女の区別が少なくなったとはいえ、下着はさすがに違うんだ」
「そうか。男物の下着は流石に貰えないないか」
萌が核心を突いた一言を言った。
「そうなんだ。男物の下着を貰うと怪しまれてしまうかな?」
「そんなの女物をはかせておけばいいのよ」
く~る~み~!!! なんてことを言い出すんだ。一生恨んでやる。この俺が女の下着をはくなんてありねえ!
「まあ、とりあえず行ってくるよ。萌は絶対にレジへは近付かないように」
「わかった」
萌が快い返事をすると、
「じゃあ、行ってくるね」
と言って二人は部屋を出て行った。
「真歴。もう出てきていいわよ」
その声で俺はそっとトイレから顔を出した。
「何で俺が女物の下着をはかなきゃいけないんだ」
「聞こえてたの?」
「ああ」
「これも仕方のないことね。」
「仕方のないことって人ごとみたいに言いやがって。俺にとっては死活問題だぞ」
「人間諦めが肝心よ」
「お前なあ! そうだ! 俺が今着ている下着があるじゃないか!」
「毎日同じ下着を着続ける気?」
ウッ。鋭い。俺の悩みはとどまることを知らないようだ。
「やっぱり顔認識だったんだ」
恐らくレストランで萌と胡桃の討論の際、萌が顔認識だと言ったからの一言だろう。萌はかなりプライドが高いのかも知れない。それとも胡桃には絶対負けたくないという意識からだろうか。
「でも、食事の時は顔認識されても何も言われなかったぞ」
「食事はいいんだ。顔認識はされない。誰が何を食べても生活の変化に関係ないからね」
「そうか、男性用の服を買った時点で男の人が一緒にいると思われるんだ」
萌がにっこりと笑って胡桃を見る。これまた胡桃に私は頭がいいぞというアピールだろう。
「でも、プレゼントだったらどうするの?」
胡桃も負けてはいない。服を並べながら聞いた。
「誰でも何でも手に入れられる時代だからプレゼントという概念は薄くなってきてるんだ。プレゼントするとしたら手作りの物って感じかな」
納得のいく説明だ。でもプレゼントがなくなるのは寂しい気がする。女と買い物に行かなくて済むという点では大賛成なんだが。
「どうせ只なんだし、もっと贅沢な暮らしをしたらいいと思うんだけど。例えばこのマンションとか」
萌は不思議そうに部屋を眺めながら言った。
「住む場所は決められているんだ。一人暮らしならワンルーム。結婚すれば一戸建て。二世帯ならもっと大きな家に住めることになっている。だから私も両親と住めば大きな家に住めるんだけどね」
「住む場所も決められるわけ?」
「そう、政府が勝手に決めてくる。最も希望は出せるけど、希望通りにならないことの方が多いかな?」
「へえ、そうなんだ。じゃあさ、自動車なんかはどう? 外国の高級車乗り回したりできるの?」
「交通手段の殆どがタクシーなんだ。ほんの一部例外もあるけど。この時代バスもなければ電車もない。タクシー以外にあるのはロケットくらいかな。当然自家用車はないよ。それとこの世界には外国ってないんだ。地球全体が一つの国になっている。というか国という概念がないのさ」
「ふ~ん」
萌は長く頷くと再び服を選び出した。もしかして難しくて理解できなかったのか? だったら俺の仲間じゃねえか。
「ところで私たち好き勝手に選んじゃってるけどいいの?」
「いいよ。服は何着持ってもいいことになってるから。多くの女の子は多めに服を持ってる。私もその内の一人だ」
ピンポーン。その時玄関の呼び鈴が鳴る。これは未来でも同じらしい。
「クリーニングかな? 玄関から見えないところで隠れて。ロボットのセンサーに触れたら大変だから」
「わかった」
「%$※&#$●#(今朝出されたクリーニングです)」
玄関が開くとロボットが箱を持っているのが分かった。
「ほら、乗り出さないの」
胡桃が俺の服を引っ張る。
ユリナが玄関を閉めると俺たちは元の位置に戻った。
「へえ、クリーニングって未来の世界でもあるんだ」
「洗濯は全てクリーニングだよ」
「全て! もしかして下着も?」
驚いた表情で萌が聞く。
「そうだね」
ユリナは少し照れくさそうに笑いながら答える。
「量にもよるけどだいたい一時間で仕上がってくる」
「便利ね」
胡桃がポツリと言った。
「でも、クリーニングを利用する人って少なくなってきてるかな?」
「どういうこと?」
萌が興味津々に聞く。確かに理由を聞きたくなる話だ。
「次から次へと新しい服にする人が増えてきてるからね」
「じゃあ、服が貯まっちゃうじゃない」
「その時はいらなくなった服を返すのさ」
「素敵!」
萌はかなり感動しているようだ。いつでも好きな服を好きなだけ手に入れることができ、いらなくなったら手放せる。言い換えればデパートにある衣服売り場の商品は全て自分の物と言えるのだ。この生活はおしゃれな萌にとってはまさに理想なのだろう。
「それって資源の無駄遣いにならないの?」
真面目な胡桃は真剣な顔をしている。
「返却された服はきれいに作り直してまた店に出されるんだよ」
「そっかぁ」
二人は同時に言った。
やはり未来の世界って凄い。働かなくても欲しい物は何でも手に入る。時間がたっぷり確保されるわけだから、自分のしたいことに没頭できるわけだ。これぞ人間の理想の世界と言えるだろう。
「じゃあ、私はみんなの歯ブラシとかタオルとかばれない程度に仕入れてくるよ」
ユリナは鞄を持って立ち上がった。
「萌も行く」
萌がユリナの所へ急いで走る。
「大丈夫かなあ。ちょっとの間ならいいか。じゃあ、着替えて」
「は~い」
萌はそう言うといきなり服を脱ぎ出した。ちょっと待て! 俺はどうしていいか分からず、慌てて窓の方を向いた。
「ちょっと! 何してるのよ。ここには真歴がいるのよ」
「あっ、そうか。でも別にいいかなって。どうせ結婚したら毎日見られるわけだし。だったら今見られても同じことよね」
「真歴! 今すぐトイレに行きなさい!」
「お、おお」
俺は急いでトイレに駆け込んだ。これからは不便な生活になりそうだ。しかし、これだけでは収まらない。トイレの中までとんでもない会話が聞こえてきたのである。
「問題は真歴君の下着だよね。いくら男女の区別が少なくなったとはいえ、下着はさすがに違うんだ」
「そうか。男物の下着は流石に貰えないないか」
萌が核心を突いた一言を言った。
「そうなんだ。男物の下着を貰うと怪しまれてしまうかな?」
「そんなの女物をはかせておけばいいのよ」
く~る~み~!!! なんてことを言い出すんだ。一生恨んでやる。この俺が女の下着をはくなんてありねえ!
「まあ、とりあえず行ってくるよ。萌は絶対にレジへは近付かないように」
「わかった」
萌が快い返事をすると、
「じゃあ、行ってくるね」
と言って二人は部屋を出て行った。
「真歴。もう出てきていいわよ」
その声で俺はそっとトイレから顔を出した。
「何で俺が女物の下着をはかなきゃいけないんだ」
「聞こえてたの?」
「ああ」
「これも仕方のないことね。」
「仕方のないことって人ごとみたいに言いやがって。俺にとっては死活問題だぞ」
「人間諦めが肝心よ」
「お前なあ! そうだ! 俺が今着ている下着があるじゃないか!」
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ウッ。鋭い。俺の悩みはとどまることを知らないようだ。
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