タイムトラベル同好会

小松広和

文字の大きさ
29 / 45
第3章 未来への旅立ち

第29話 下着問題

しおりを挟む
 俺がピンチで困っている状況で萌が突然意外なことを言いだした。
「やっぱり顔認識だったんだ」
恐らくレストランで萌と胡桃の討論の際、萌が顔認識だと言ったからの一言だろう。萌はかなりプライドが高いのかも知れない。それとも胡桃には絶対負けたくないという意識からだろうか。

「でも、食事の時は顔認識されても何も言われなかったぞ」
「食事はいいんだ。顔認識はされない。誰が何を食べても生活の変化に関係ないからね」
「そうか、男性用の服を買った時点で男の人が一緒にいると思われるんだ」
萌がにっこりと笑って胡桃を見る。これまた胡桃に私は頭がいいぞというアピールだろう。

「でも、プレゼントだったらどうするの?」
胡桃も負けてはいない。服を並べながら聞いた。
「誰でも何でも手に入れられる時代だからプレゼントという概念は薄くなってきてるんだ。プレゼントするとしたら手作りの物って感じかな」
納得のいく説明だ。でもプレゼントがなくなるのは寂しい気がする。女と買い物に行かなくて済むという点では大賛成なんだが。

「どうせ只なんだし、もっと贅沢な暮らしをしたらいいと思うんだけど。例えばこのマンションとか」
萌は不思議そうに部屋を眺めながら言った。
「住む場所は決められているんだ。一人暮らしならワンルーム。結婚すれば一戸建て。二世帯ならもっと大きな家に住めることになっている。だから私も両親と住めば大きな家に住めるんだけどね」
「住む場所も決められるわけ?」
「そう、政府が勝手に決めてくる。最も希望は出せるけど、希望通りにならないことの方が多いかな?」

「へえ、そうなんだ。じゃあさ、自動車なんかはどう? 外国の高級車乗り回したりできるの?」
「交通手段の殆どがタクシーなんだ。ほんの一部例外もあるけど。この時代バスもなければ電車もない。タクシー以外にあるのはロケットくらいかな。当然自家用車はないよ。それとこの世界には外国ってないんだ。地球全体が一つの国になっている。というか国という概念がないのさ」
「ふ~ん」
萌は長く頷くと再び服を選び出した。もしかして難しくて理解できなかったのか? だったら俺の仲間じゃねえか。

「ところで私たち好き勝手に選んじゃってるけどいいの?」
「いいよ。服は何着持ってもいいことになってるから。多くの女の子は多めに服を持ってる。私もその内の一人だ」

ピンポーン。その時玄関の呼び鈴が鳴る。これは未来でも同じらしい。
「クリーニングかな? 玄関から見えないところで隠れて。ロボットのセンサーに触れたら大変だから」
「わかった」
「%$※&#$●#(今朝出されたクリーニングです)」
玄関が開くとロボットが箱を持っているのが分かった。
「ほら、乗り出さないの」
胡桃が俺の服を引っ張る。

 ユリナが玄関を閉めると俺たちは元の位置に戻った。
「へえ、クリーニングって未来の世界でもあるんだ」
「洗濯は全てクリーニングだよ」
「全て! もしかして下着も?」
驚いた表情で萌が聞く。
「そうだね」
ユリナは少し照れくさそうに笑いながら答える。
「量にもよるけどだいたい一時間で仕上がってくる」
「便利ね」
胡桃がポツリと言った。

「でも、クリーニングを利用する人って少なくなってきてるかな?」
「どういうこと?」
萌が興味津々に聞く。確かに理由を聞きたくなる話だ。
「次から次へと新しい服にする人が増えてきてるからね」
「じゃあ、服が貯まっちゃうじゃない」
「その時はいらなくなった服を返すのさ」

「素敵!」
萌はかなり感動しているようだ。いつでも好きな服を好きなだけ手に入れることができ、いらなくなったら手放せる。言い換えればデパートにある衣服売り場の商品は全て自分の物と言えるのだ。この生活はおしゃれな萌にとってはまさに理想なのだろう。

「それって資源の無駄遣いにならないの?」
真面目な胡桃は真剣な顔をしている。
「返却された服はきれいに作り直してまた店に出されるんだよ」
「そっかぁ」
二人は同時に言った。

 やはり未来の世界って凄い。働かなくても欲しい物は何でも手に入る。時間がたっぷり確保されるわけだから、自分のしたいことに没頭できるわけだ。これぞ人間の理想の世界と言えるだろう。

「じゃあ、私はみんなの歯ブラシとかタオルとかばれない程度に仕入れてくるよ」
ユリナは鞄を持って立ち上がった。
「萌も行く」
萌がユリナの所へ急いで走る。
「大丈夫かなあ。ちょっとの間ならいいか。じゃあ、着替えて」
「は~い」
萌はそう言うといきなり服を脱ぎ出した。ちょっと待て! 俺はどうしていいか分からず、慌てて窓の方を向いた。
 
「ちょっと! 何してるのよ。ここには真歴がいるのよ」
「あっ、そうか。でも別にいいかなって。どうせ結婚したら毎日見られるわけだし。だったら今見られても同じことよね」
「真歴! 今すぐトイレに行きなさい!」
「お、おお」
俺は急いでトイレに駆け込んだ。これからは不便な生活になりそうだ。しかし、これだけでは収まらない。トイレの中までとんでもない会話が聞こえてきたのである。

「問題は真歴君の下着だよね。いくら男女の区別が少なくなったとはいえ、下着はさすがに違うんだ」
「そうか。男物の下着は流石に貰えないないか」
萌が核心を突いた一言を言った。
「そうなんだ。男物の下着を貰うと怪しまれてしまうかな?」
「そんなの女物をはかせておけばいいのよ」
く~る~み~!!! なんてことを言い出すんだ。一生恨んでやる。この俺が女の下着をはくなんてありねえ!

「まあ、とりあえず行ってくるよ。萌は絶対にレジへは近付かないように」
「わかった」
萌が快い返事をすると、
「じゃあ、行ってくるね」
と言って二人は部屋を出て行った。

「真歴。もう出てきていいわよ」
その声で俺はそっとトイレから顔を出した。
「何で俺が女物の下着をはかなきゃいけないんだ」
「聞こえてたの?」
「ああ」
「これも仕方のないことね。」
「仕方のないことって人ごとみたいに言いやがって。俺にとっては死活問題だぞ」
「人間諦めが肝心よ」
「お前なあ! そうだ! 俺が今着ている下着があるじゃないか!」
「毎日同じ下着を着続ける気?」
ウッ。鋭い。俺の悩みはとどまることを知らないようだ。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

『お兄ちゃんのオタクを卒業させてみせるんだからね❤ ~ブラコン妹と幼馴染オタク姫の果てしなき戦い~』

本能寺から始める常陸之介寛浩
青春
「大好きなはずなのに……! 兄の『推し活』が止まらない!?」 かつて、私は信じていた。 優しくて、頼もしくて、ちょっと恥ずかしがり屋な── そんな普通のお兄ちゃんを。 でも── 中学卒業の春、 帰ってきた幼馴染みの“オタク姫”に染められて、 私のお兄ちゃんは**「推し活命」**な存在になってしまった! 家では「戦利品だー!」と絶叫し、 年末には「聖戦(コミケ)」に旅立ち、 さらには幼馴染みと「同人誌合宿」まで!? ……ちがう。 こんなの、私の知ってるお兄ちゃんじゃない! たとえ、世界中がオタクを称えたって、 私は、絶対に── お兄ちゃんを“元に戻して”みせる! これは、 ブラコン妹と 中二病オタク姫が、 一人の「兄」をめぐって 全力でぶつかり合う、果てしなき戦いの物語──! そしていつしか、 誰も予想できなかった 本当の「大好き」のカタチを探す、 壮大な青春ストーリーへと変わっていく──。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

処理中です...