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第1章 運命の出会い

第8話 異世界の秩序

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 なんかとんでもない展開になってきています。私と旅することになったこの人物はいったい何者でしょうか? フォレストドラゴンが顔を見ただけでひれ伏してしまうのですから只者でないことはわかります。そんな人と私みたいな弱い魔法使いが一緒にいていいわけがありません。

「あのう」
「どうした?」
「何とお呼びしたらいいでしょうか?」
「そうか。自己紹介をしてなかったな。私はミーニャ。どこにでもいる一般人だ」
「絶対に違うと思います」

「そんなに私の正体が知りたいか? 言ってもいいが後悔することになるぞ」
「いえ、知らなくていいです」
「そうか。だったらミーニャと呼んでくれ。お前の名は何だ?」
「はい、私はメンジョー・リーサと言います」
「ほお、格好いい名だな」
「カタカナでしたら少しは」

「今日からお前を鍛えてやるからな」
とんでもないことを言い出しました。
「鍛えるって?」
「お前は弱すぎる。私が同行している間に強くしてやろうというのだ」
とても嫌な予感がしてきました。ドラゴンがひれ伏す人の考える強いの基準とはどのくらいなのでしょうか?

「私、冒険者には向いてない気がします。だから防具屋の店員でもした方がいいかなって思うんです」
とりあえず予防線を貼っておきます。
「店員をやる方が厳しいぞ」
「どういうことですか?」
「この世界は法律があってないようなものだからな」
「え?」
「力が物を言う社会ということだ。もし客がとんでもない言いがかりを付けてきたらどうする? この前の酔っ払いのようにな」
「困ります」
「だから店員はみんなレベル50以上の冒険者でなければ務まらないのだ」
「ええ! そうだったんですか?」

「ロールプレイングゲームをやったことはあるか?」
「はい、少しでしたら」
「勇者を名乗る者が一般家庭に入り、住民に挨拶もせずタンスをあさったり壺を割ったりしているだろう。しかも住民は何も見なかったかのように普通に会話をしているのはなぜだと思う? この事実からも異世界の秩序というがわかるではないか」
「う~、確かに・・・・」
どうやら鍛えられることは決定のようです。何をさせられるのでしょうか? 不安しかありません。

「ところで一つ聞きたいことがある」
「何でしょうか?」
「リーサはどうしてクロシッポと一緒にいるのだ?」
「あまりにかわいいので捕まえて拉致してしまいました」
「よく捕まえられたな。クロシッポの実力は中の上だ。お前のレベルだと一瞬で吹き消されるぞ」
「ええーーー! そうなんですか? スライムより弱いと聞いていましたので」
知らぬが仏とはこのことでしょうか? 私の顔は一瞬にして青ざめてしまいました。
「まあ、その根性があれば少々きつい特訓でも大丈夫そうだな。はっはっはっは」
どうやってこの人から逃げ出しましょうか? 私は無い知恵を必死で振り絞るのでした。
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