ブラックテイルな奴ら

小松広和

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プロローグ

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 大切にしていた人形には魂が宿るという話を聞いたことはないだろうか?
 人形の髪が伸びたり、夜中に動き出したりというのがそれだ。俺はこの手の話は信じない主義だ。いや信じない主義だったと言うべきか。では今なら信じるのかと問われると信じざるを得なくなったと表現するのが正しいだろう。
 俺がこのアブノーマルな世界に支配され始めたのは、忘れもしない一ヶ月前のことだ。一応俺の彼女である小百合が突然交際の一時中断を言い出したことに始まる。
「高校に合格が決まるまで会わないようにしましょう」
俺にとっては衝撃的な言葉なのだが、何故か小百合は笑顔で話していた。
「これ私の代わりね」
と言って渡されたのが、黒い尻尾アクセサリーである。それは長さ十五センチ程で百均丸出しの雰囲気を醸し出しているばかりか、本来付いているはずの金具すらもうすでにその存在を失っていた。こんなお粗末な尻尾アクセサリーだが、小百合と別れたくない俺はこの黒い尻尾を後生大事にいつも持ち歩いていたのだ。
 すると‥‥
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