控えなさい! 私はマリーよ!

小松広和

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第八十八話 カノンには恋人がいた作戦決行

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 私達はパリッピーと綿密な打ち合わせを済ませると作戦を決行することにした。
「四郎。今日は朝の散歩に行ってもいいわ」
「本当!」
「ええ本当よ。ただしカノンに会うのは禁止。守れる?」
「もちろんさ」
四郎は満面の笑みで答えると飛ぶように城を出て行った。

「わざわざカノンに会うなって言うことないんじゃない?」
菫は不思議そうな顔で言った。
「それが作戦なのよ。そう言われたら余計に会いたくなるでしょう?」
「そんなものかしら?」
「それに会うなって念を押すことで、これが作戦だと疑われずにすむでしょ」
小百合が付け足すように言った。

 私達四人とパリッピーはあらかじめ調べて置いた四郎とカノンが密会する場所の近くでスタンバイした。
「やっぱり会ってるわね」
「何で? 会うなって言われたのに」
菫は不思議そうに言った。
「シッ。声が大きいわよ」
小百合は慌てて菫の口を塞ぐ。

「パリッピー。いよいよ作戦開始よ。あなたは何を言い出すかわからないわ。今からは私がテレパシーで指示するわよ」
「大丈夫。彼女は俺の好みだから間違いなく俺にメロメロになるさ」
「言ってる意味わかってるの? 昔から付き合ってるって設定よ」
「わかってるわかってる。じゃあ、行ってくるぜ」
不安しかないわ。てか綿密な打ち合わせはどうなってるのよ?

「へいエリザベス。君可愛いね」
『早速間違ってるわよ! カノンよカノン!』
「へいカノン。君可愛いね。そんなダサい男は止めて俺と付き合わないか?」
『だから違うって言ってるでしょ! もういいわ。今からは私の言う通りに話しなさい。余計なことを言ったら死刑よ』

「あなたは誰ですか?」
カノンが面食らったような顔で言う。
『俺を忘れたのかい? 君の恋人のパリッピーだよ』
「俺を忘れたのかい? 君の恋人のパリッピーだぜ」
「私あなたなんか知りません」
『何言ってるんだい? 毎日会ってたくさん話をした仲じゃないか』
「何言ってるんだい? 毎日会ってたくあん話をした仲じゃないか」
「ん? たくあん?」

『一緒に美術館や博物館にも行ったよね』
「一緒に美術館や博物館にも行ったよね」
「健全か!」
「何よ菫。別にいいじゃない」
「そんなんじゃダメよ! もっと恋人をアピールしなきゃ」
「じゃあ、どう言えばいいのよ?」

「私に任せて。私の言う通り伝えて」
「わかったわ」
「俺と××××して××××が××××した夜を忘れたのかい?」
『俺と××××して××××が××××した夜を忘れたのかい?』
「俺と××××して××××が××××した夜を忘れたのかい?」
ボンッ!
「何言わせるのよ!」

「これくらい言わないと四郎君は恋人だと信じないわよ」
「大体伏せ字だらけでしょう。これじゃ読者は何言ってるかわからないじゃない」
「この伏せ字部分をそのまま言ったら、この小説はR指定になっちゃうわよ」

「四郎さん、こんな人知らないわ。お願い信じて」
「わかった。俺はカノンちゃんを信じるよ」
「益々絆が深まったじゃない!」

「へいカノン。もう一度俺と××××な夜を過ごそうぜ」
『私の言う通りに言いなさいって言ったでしょ!』
「私の言う通りに言いなさいって言ったでしょ!」
「何だ何だ?」

『何言ってるのよ!』
「何言ってるのよ!」
『もういいわ。一時退却よ。こっちに戻ってきなさい』
「もういいわ。一時退却よ。こっちに戻ってきなさい」
「この人なんか変じゃない?」
「確かに変だな」

 私は慌てて魔術で覆面を出すとパリッピーを拉致して城へと引き返した。
「ばれてないわよね?」
「絶対ばれてると思うわ」
小百合が冷たく言う。

「とりあえずパリッピーの処分は後から考えるとして四郎にばれてた場合どうするかよね」
「どうして? 俺は言われた通りにやっただけなのに処分を受けるんだ?」
「パリッピーさん。これあげるよ」
芽依がパリッピーに細長い厚紙を渡した。
「これは?」
「辞世の句を書く短冊だよ」
「辞世の句?」
「日本では死ぬ時この短冊に短歌や俳句を書くんだよ」
「ひええええええ!」
パリッピーが泣き叫ぶ中、私は次の作戦を考えるのであった。
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