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12 肌の記憶

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「どうしてそんな風に捉えるんだ。仮に責任を取るだけのいい加減な気持ちで求婚したならローズはとっくに俺の妻になってる。外堀を埋めて逃げられないようにしたさ。そうしないのはローズの心ごと欲しいからだ。ローズの意思で俺の元へ来たいと思ってくれないと意味がない」


言われてみればその通りだった。レジナルドの権力で強引に婚姻する事など容易たやすい。
『心ごと欲しい』その言葉にローズは心の奥で動揺した。愛してるとストレートに言われるよりも何故か胸を刺激した。


「誤解は解けたか?」


ローズをソファーに深く座らせ、その正面に膝をついたレジナルドはローズの両手を揃えて包むように握ると真っ直ぐローズを見上げた。長年ローズに伝えてきた気持ちが全く届いていなかった事にレジナルドはがっかりしていた。


「誤解も何も……私はそう思ってるわ」

「そう思わせてしまうのはゆっくり話をする機会を無理矢理にも設けなかった俺のせいだな。今からでも遅くはない。もっと会いに来るからローズも俺のために時間をくれないか?」


レジナルドはローズがわかってくれるまでいくらでも話をするつもりで繋いだ手に力を込めた。


(俺のせいって……私がそうならないようにしてきたんだから別にレジナルドのせいじやないのに)


過去、事あるごとにレジナルドから誘われる舞踏会やお茶会、乗馬なとを返事もせずに無視をしてきたのに加え、彼が花を片手に会いに来てもローズがすぐに追い返していたため、今までまともに話し合う事などなかった。


「さっきも言ったけれど、今更なのよ。私の気持ちは変わらないわ。レジナルド様の事は好きじゃない。本音を言うと純潔を奪われて恨んでるくらいよ」


レジナルドの顔色が変わったがローズは構わなかった。
男女の交わりについて何の知識も無いまま行為が行われた憤りよりも、その後自分自身に起こった変化が大変だった。その部分は魔女に関わりがあるのでレジナルドに直接不満をぶつけられない。


「……恨んでる割には俺からのキスは毛嫌いしないよな」

「こうして手を触られているのと同じ感覚よ。あなた相手にドキドキしたりしないし、振り払っても手を握ってくるからされるがままにしてただけよ」

「この前深くキスした時は気持ち良さそうな顔をしていたように見えたが、俺の気のせいか?」

「気持ちがなくても性感帯に触れられれば反応するに決まってるでしょう」

「……へぇ」


レジナルドはローズを見据えたまま碧眼をスッと細めた。鋭くなった目つきがローズを追い立てるように固定して離さない。初めて見るレジナルドの表情にどう返せばいいかわからずローズは顔を逸らした。


(え、何?もしかして怒ってる……?)


怒ってるレジナルドなんて一度も見た事がない。もし彼の地雷を踏んでしまったのだとしても、何一つ嘘は言ってない。堂々としていればいい。そう気持ちを立て直した瞬間、また口を塞がれた。


「……!!」

(だからどうしてこうなるのよ!!)


今度こそ柔らかく触れた唇はローズの唇を食み、逃げ回る舌を絡め取ってレジナルドの方へ持って行った。吸って甘噛みされて撫でるように舌を合わせられてローズはブルリと身体を震わせた。


(う、気持ちいい……)


さり気なく胸元を押し返したローズの手を掴んだレジナルドは骨の髄まで響くような低い声で囁いた。


「好きにさせてもらうぞ。お前が自分で言ったんだからな」

「……えっ?あっ…!やだっ…」


スカートの中に手が入って来たと同時に噛み付くように唇を塞がれた。

キスの回数を重ねるごとにローズの弱点を掴んでいたレジナルドはさほど時間をかけずにローズの思考回路を麻痺させた。


「……ン」


酸素を求める純粋な息継ぎに徐々に甘い声が混じり出すと、更にそれを引き出させようと、露わになったスラリと伸びた脚を大きな手が撫でる。レジナルドはやっと口を解放すると今度は耳を食み出した。


「……っ、あっ、んんっ」

「いい声だな。堪らない」

(いい声なのはあなたの方でしょう!耳を舐めながら話されると腰が砕けそうになる……!)


レジナルドがビクビクと震えるローズの肩から衣類を腰まで下げると、綺麗に曲線を描いた胸が零れ落ちそうに現れた。標準よりもひとまわり大きなローズの胸の先は白い肌に映える薄いピンク色だ。


「先程渡したバラみたいだな」


軽く指先で形をなぞった後、レジナルドは唇でそこを覆った。キス同様レジナルドの口は有能な働きでローズの気持ちいい部分を探し出し、どんどん乱れさせていった。


「あっ……あ…はあっ、ンンッ」

「ローズ……可愛すぎる……」


レジナルドは露わになっている滑らかな肌に手当たり次第チュッチュとキスをしながらソファーにローズを横たえ、衣類を全て剥ぎ取った。
ずっとふわふわと流されていたローズは、レジナルドが自分の服を脱ぎ出した光景にハッと我に返った。


「えっ、まさか本当にする気なの……?」

「抱いていいと言っただろ?今更撤回は聞かないぞ」

「こ、こんな所で?」

「狭いが出来なくはない。ベッドがいいなら寝室に移動するが」

「ダメ!絶対寝室には入らないで!」

「わかったよ。ほら、ちょっと腰浮かせて」


レジナルドが脱いだ自分の上着をソファーに敷くのをローズは不思議そうに眺めた。


「何してるの?」

「何って、ソファーが汚れないようにしてるんだが」

「汚れる?」

「……ローズお前……」


キョトンとしたままのローズを前にレジナルドは顔が緩むのが抑えられなかった。ふっと笑うとローズに覆いかぶさり唇を重ねた。

逞しく鍛えられたレジナルドの胸板がローズの柔らかくも弾力のある胸を押しつぶして抱き締めると、初めての時以来の肌の感触に二人同時に熱い息を吐いた。

初めての時はよくわからない間に終わってしまい、ローズにとってはこれが初めてレジナルドに抱かれるような気分だった。好きでもないのに肌を重ねるのは如何なものかと思ったが、相手は初めてを掻っ攫ったレジナルドだから何度しても同じだろうと許してしまった。一瞬カルロスの顔が頭をよぎったが、彼に気持ちを伝えてどうにかなりたいわけでもないので罪悪感も生まれなかった。

何て酷い女だろうと自分で客観視しながらレジナルドのキスを受ける。ドキドキも緊張も特になく、妙な照れ臭さの中、大きく支配するのはレジナルドに触れられるたびに膨れ上がる甘い痺れだった。


「こんなに濡れてる。中も……こんなに柔らかい」

「ああっ、……あっ、ああんっ」

力が抜けてしまうほどの甘いキスと、秘部を長い指で掻き回されてローズは全身をふるふる震わせた。レジナルドは肌にキスをしながら身体をずらすとローズの脚を持ち上げ股に顔をうずめた。


「レジナルド様!それ嫌!」

「昔みたいに愛称で呼んでくれ」

「っ……きゃああっ!」


散々指で弄られた陰核を強く吸われローズは喉を逸らした。


「ローズ?ああ、イッたのか。なんて可愛い顔をしてるんだ」


うっとりとローズの髪を撫でるレジナルドに、生理的な涙を流しながらローズは息も絶え絶えに文句を言った。


「……そんなに…強くしないで」

「相変わらず感じやすいんだな。わかった、もう少し優しく舐める」

「嫌って言ってるのに!……っああ!」

「身体は嫌がってない」


達したばかりのローズにはどれだけ弱く触れられても過激なものに感じてしまい、もう文句の言葉を口にする余裕はなくなった。

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