知ってるけど言いたくない!

るー

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その26

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「死ぬ?そんな事は……綴られてなかった」


エティは気の抜けた声で何とか言葉にした。

クリフォードの身体に蔓のように絡んでいた文字には子孫が残せない事と、彼が女性を抱いても満足できないという2つだけだった。


「そうよ、エティが見たその呪いの呪文にはないわ。彼の命を脅かすのはその後、依頼主から最近オプションで付けられた呪いの方よ」

「……依頼主?」


どこか集中力がかけているような様子のエティに、ローズは丁寧にゆっくりと語った。


「あたしが個人的に、彼に呪いをかけたと思ってたの?あたしはあんたの彼の顔を見た事もないし、会った事もないわよ」


ローズは15歳で魔力を持って、20歳になる頃には高い魔力を十分に使いこなしていた。表向き菓子屋を営みながら裏では占いの商売を始めた。そのうち呪いの類いの依頼が入るようになり、稀にそれを受けていた。


「髪と名前、生まれ月日の情報があれば呪いなんて簡単にできてしまうのよ。ただ呪いを破られた場合は呪いを送った主に返ってきちゃうから危険なんだけど」


今のところ魔女はリリアンと娘であるローズとエティの3人だけで、呪いを破られる事はあり得ない。ローズが平然と呪いの商売をしていたのはそれが理由だった。


「誰?依頼をしたのは誰なの?」

「悪いけどエティ相手でも、それは口を割れないわ。そういう契約なの」


エティは動揺を隠しきれずに目線をさ迷わせた。そして思い出したようにハッと我に返った。


娼館の歳上の女性……!!


クリフォードの話からその女性の可能性が高い。

エティは自分が知っている全てをローズに話し、教えてもらえる範囲で答えを求めた。ローズは依頼主と呪いを解く方法は口にできないと宣言した上で、エティが思った以上に色々教えてくれた。


「その、寝室に入ってくる紫銀の女が追加のオプションよ。へぇ、あんたに似てるの?……ぷっ」


紫銀の女の見た目を説明したら、ローズは何故か吹き出した。それまでの張り詰めた空気が一気に崩れた。


「えっ、何!?どうして笑ったの!?」

「な、何でもない」

「そんなにお腹抱えて笑うくらいだから何かあるんでしょ!?」

「わかった、後で教える」

ローズはふぅ、と息を整えると再び話を戻した。

「彼が次に誰かを抱いた時、その紫銀の女に殺されるわ」

「今まで、何もしてこなかったのに?」

「じわじわ追い詰めるようにしてあるのよ。多分彼も危険を感じてるんじゃない?」


最初の宿に泊まった夜、クリフォードは「紫銀の女が来るから最後まではしない」と確かにエティに触っただけで終わらせた。

どうすればいいかなんてローズからは教えてもらえない。紫銀の女から回避するには、今後女性を抱かなければいいだけだ。


「でも、どうしてオプションなんてつけたの?最初からそのように依頼すればいいのに」

「最初の呪いにあんたの彼がヘコむ様子もなく、次から次へと女に手を出したからよ。エティ、そんなのと付き合ってるの?」

「恋人じゃないって言ってるでしょ!」

「だったらどうしてここに来たの?」


エティはローズのその言葉に返事が出来なかった。自分でもわからない、そんな表情で顔を背けた。


「その紫銀の女だけど、依頼主からの希望でモチーフは彼の好みの女性にしてあるのよ」

「……え?」

「その紫銀の女だけど、依頼主からの……」
「いや、聞き取れなかったんじゃなくて……」


意味がわからないとばかりに、エティは額に手を当て思考を巡らせた。


「自分好みの女性に殺されるのよ。依頼主は鬼畜ね」

「私、そっくりなんだけど……」

「それはさっきエティから聞いて、あたしも初めて知ったわ。以前、依頼主が彼と街で会ってる時に、彼にどんな女性が好みか尋ねたら、遠くを指差して “ あの紫銀の髪の奴、あいつがもっと大人になったら俺好みだな ” って言ったそうよ。それって多分エティよね?」


たまたま髪が目立っていたせいか、それとも本気で言ったのかはわからないが、これだけ似てるとなるとその紫銀の奴とはエティだったのだろう。


「ねぇ、まだ関係ないなんて言えるの?色々な偶然が重なって、今こうして答えが見えてるわ」

「答えなんて、全然わかんない……」


エティは頭の中がぐちゃぐちゃになってパンクしそうだった。悲しくもないのに自然と涙が頬を伝った。


「あらら、泣かしちゃった」


ローズはエティの隣に座ると、声も無く涙を流すエティを抱き寄せた。


「別に意地悪しようとか思ってないからね。あたしはエティを愛してるし大切に思ってる。ただ、これはエティ自身で答えを組み合わせてエティがやらないと意味がないの。わかって」


解決法を知ってるのに口にできない。ローズも心苦しいのだと感じ、エティは黙って頷いた。

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