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第5章 名前のない気持ち
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翌日になり、田中が学年トップの決勝戦をすると聞いて、俺は見に行こうかどうか1日ずっと悩んでいた。
結果は田中の勝利で目に見えているのだが、結果が分かるあいつの対決は本当に楽しくない。
たまに偵察で亮を向かわせることがあったが、全てが手加減をしたただの殴り合いだった。
俺が望んでいるような対決でないものを態々見に行くのも面倒であり、決勝戦でありながら、俺は結局放課後たまり場でいつものように二人と過ごしていた。
ただ、他の奴らはその決勝戦を見に行くと思われるので、今日は対決の申し込みは来ないだろう。
それでも俺がたまり場にいるのは、ただの暇つぶしだった。
家に帰っても特に何かすることがあるわけでもないし、残暑が厳しい中出歩くのも気が引けるので、クーラーの効いたたまり場で遊んでいたのだ。
2人とそこで話していると、階段の方が何やら騒がしくなってきた。
複数人の駆け上がってくる音が聞こえ、俺たちは3人揃って扉のほうへと注視する。
すると、突然扉は開かれ、そこから顔を出したのは亀城だった。
「おねがいっ、助けてっ。」
かなり息が上がっており、何かから逃げてきたのは一目瞭然だった。
「お前ら、行け。」
亀城は俺の座っているソファーに飛び込んでくるので、二人に短い指示を出せば直ぐに動き出した。
「やばいっ、逃げろ!」
「逃がさないのねーん。」
相手はここがどこかを認識したのか、顔を出す前に引き返して行ったようだが、その後を追ったあの二人から逃げられるはずはない。
直ぐに解決するだろうと思い、俺は亀城に意識を向ける。
「お前相当走ってきたんだな。ひっでぇ汗。」
階段をずっと駆け上がってきたのか、亀城はかなり息を上げて汗を滲ませていた。
2人が居なかったこともあり、俺は素で喋りながらそいつの汗を服の袖で拭った。
「やめてよっ、汚いでしょっ。」
亀城はびっくりした顔をしながら俺の腕を引き剥がす。
正直汗を拭ったのは無意識だった。
自分でも少しびっくりしつつ、引き剥がされた腕を素直に下げる。
「鬱陶しそうだったから。」
「ハンカチあるから、いいよ。」
そう言ってぽっけからハンカチを取り出し汗を拭う姿を見ながら、ろくな噂のない俺に向かってよくこんなに遠慮なく喋れるものだと感心してしまう。
本来なら、さっきの奴らみたいに場所を認識しただけで走って逃げ出すような場所だ。
物怖じしないのか、それとも朝比奈育ちで無知なだけか、どちらだろう。
結果は田中の勝利で目に見えているのだが、結果が分かるあいつの対決は本当に楽しくない。
たまに偵察で亮を向かわせることがあったが、全てが手加減をしたただの殴り合いだった。
俺が望んでいるような対決でないものを態々見に行くのも面倒であり、決勝戦でありながら、俺は結局放課後たまり場でいつものように二人と過ごしていた。
ただ、他の奴らはその決勝戦を見に行くと思われるので、今日は対決の申し込みは来ないだろう。
それでも俺がたまり場にいるのは、ただの暇つぶしだった。
家に帰っても特に何かすることがあるわけでもないし、残暑が厳しい中出歩くのも気が引けるので、クーラーの効いたたまり場で遊んでいたのだ。
2人とそこで話していると、階段の方が何やら騒がしくなってきた。
複数人の駆け上がってくる音が聞こえ、俺たちは3人揃って扉のほうへと注視する。
すると、突然扉は開かれ、そこから顔を出したのは亀城だった。
「おねがいっ、助けてっ。」
かなり息が上がっており、何かから逃げてきたのは一目瞭然だった。
「お前ら、行け。」
亀城は俺の座っているソファーに飛び込んでくるので、二人に短い指示を出せば直ぐに動き出した。
「やばいっ、逃げろ!」
「逃がさないのねーん。」
相手はここがどこかを認識したのか、顔を出す前に引き返して行ったようだが、その後を追ったあの二人から逃げられるはずはない。
直ぐに解決するだろうと思い、俺は亀城に意識を向ける。
「お前相当走ってきたんだな。ひっでぇ汗。」
階段をずっと駆け上がってきたのか、亀城はかなり息を上げて汗を滲ませていた。
2人が居なかったこともあり、俺は素で喋りながらそいつの汗を服の袖で拭った。
「やめてよっ、汚いでしょっ。」
亀城はびっくりした顔をしながら俺の腕を引き剥がす。
正直汗を拭ったのは無意識だった。
自分でも少しびっくりしつつ、引き剥がされた腕を素直に下げる。
「鬱陶しそうだったから。」
「ハンカチあるから、いいよ。」
そう言ってぽっけからハンカチを取り出し汗を拭う姿を見ながら、ろくな噂のない俺に向かってよくこんなに遠慮なく喋れるものだと感心してしまう。
本来なら、さっきの奴らみたいに場所を認識しただけで走って逃げ出すような場所だ。
物怖じしないのか、それとも朝比奈育ちで無知なだけか、どちらだろう。
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