182 / 189
第9章 神谷謙との出会い
182
しおりを挟む
夜で普通のお店も閉まっている中、謙兄が連れて行ってくれたのは付き合いの濃いストリートの人間が経営してる個室の店だった。
久々にお腹いっぱいになるまでたらふく食べ、俺はただただ幸せを感じていた。
「颯斗は、母さんが好きか?」
口いっぱいに頬張る俺を眺めながら、謙兄はどこか暗い顔をして問いかけた。
「何で?」
「何でか。そうだな、その答えによって、聞き方変えようかと思って。」
「何を聞くの?」
そう問いかけながらも、半分察しはついていた。
話をしようと言っていたのも、そういうことなのだろうと。
「話したくないなら答えなくても構わない。だけど、少しでも話したいと思ってくれるなら、正直に答えて欲しい。母さんに、嫌なことされてないか?」
その質問には、俺はいつも決まった言葉を返していた。
されていない。否定するたった一言。
そうしなければ、また児相の人が来るかもしれないから。今度こそ智たちと会えなくなるかもしれないから。また幼少期と同じ苦しみを味わいたくないから。
「されてる。」
そう思っていたはずなのに、俺の口からは真実が零れ落ちた。
ほぼ無意識のその言葉に慌てて否定しようと思ったが、謙兄の顔を見たらそんなことも馬鹿らしく思えた。
謙兄のように強くなれば、そんなことも怯えなくて済むのだろうかと、謙兄なら手伝ってくれるのではないかと期待したから。
「だよな。ごめんな、颯斗。本当は、ずっと気づいてたんだよ。声をかけたあの日から、颯斗が育児放棄に遭ってるのも、虐待に遭ってることも。だけど俺は気づかないふりをした。悪に染めた俺の手じゃ、颯斗を悪い方に連れていくことしか出来ないから。助けたくても、こっちに引きずり込むわけにはいかないって、ずっと見て見ぬふりをしてた。ごめん、一人で苦しかったよな。ごめんな。」
謙兄は力強く拳を握り、苦しそうに顔を歪ませた。
気づいていたんだと、その時少し残念に思った。それは見て見ぬふりをしたことにではなく、俺が惨めな子だからという同情から気にかけてくれていただけなのではないかと思ったから。
久々にお腹いっぱいになるまでたらふく食べ、俺はただただ幸せを感じていた。
「颯斗は、母さんが好きか?」
口いっぱいに頬張る俺を眺めながら、謙兄はどこか暗い顔をして問いかけた。
「何で?」
「何でか。そうだな、その答えによって、聞き方変えようかと思って。」
「何を聞くの?」
そう問いかけながらも、半分察しはついていた。
話をしようと言っていたのも、そういうことなのだろうと。
「話したくないなら答えなくても構わない。だけど、少しでも話したいと思ってくれるなら、正直に答えて欲しい。母さんに、嫌なことされてないか?」
その質問には、俺はいつも決まった言葉を返していた。
されていない。否定するたった一言。
そうしなければ、また児相の人が来るかもしれないから。今度こそ智たちと会えなくなるかもしれないから。また幼少期と同じ苦しみを味わいたくないから。
「されてる。」
そう思っていたはずなのに、俺の口からは真実が零れ落ちた。
ほぼ無意識のその言葉に慌てて否定しようと思ったが、謙兄の顔を見たらそんなことも馬鹿らしく思えた。
謙兄のように強くなれば、そんなことも怯えなくて済むのだろうかと、謙兄なら手伝ってくれるのではないかと期待したから。
「だよな。ごめんな、颯斗。本当は、ずっと気づいてたんだよ。声をかけたあの日から、颯斗が育児放棄に遭ってるのも、虐待に遭ってることも。だけど俺は気づかないふりをした。悪に染めた俺の手じゃ、颯斗を悪い方に連れていくことしか出来ないから。助けたくても、こっちに引きずり込むわけにはいかないって、ずっと見て見ぬふりをしてた。ごめん、一人で苦しかったよな。ごめんな。」
謙兄は力強く拳を握り、苦しそうに顔を歪ませた。
気づいていたんだと、その時少し残念に思った。それは見て見ぬふりをしたことにではなく、俺が惨めな子だからという同情から気にかけてくれていただけなのではないかと思ったから。
0
あなたにおすすめの小説
モテる兄貴を持つと……(三人称改訂版)
夏目碧央
BL
兄、海斗(かいと)と同じ高校に入学した城崎岳斗(きのさきやまと)は、兄がモテるがゆえに様々な苦難に遭う。だが、カッコよくて優しい兄を実は自慢に思っている。兄は弟が大好きで、少々過保護気味。
ある日、岳斗は両親の血液型と自分の血液型がおかしい事に気づく。海斗は「覚えてないのか?」と驚いた様子。岳斗は何を忘れているのか?一体どんな秘密が?
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
兄貴同士でキスしたら、何か問題でも?
perari
BL
挑戦として、イヤホンをつけたまま、相手の口の動きだけで会話を理解し、電話に答える――そんな遊びをしていた時のことだ。
その最中、俺の親友である理光が、なぜか俺の彼女に電話をかけた。
彼は俺のすぐそばに身を寄せ、薄い唇をわずかに結び、ひと言つぶやいた。
……その瞬間、俺の頭は真っ白になった。
口の動きで読み取った言葉は、間違いなくこうだった。
――「光希、俺はお前が好きだ。」
次の瞬間、電話の向こう側で彼女の怒りが炸裂したのだ。
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
イケメンに惚れられた俺の話
モブです(病み期)
BL
歌うことが好きな俺三嶋裕人(みしまゆうと)は、匿名動画投稿サイトでユートとして活躍していた。
こんな俺を芸能事務所のお偉いさんがみつけてくれて俺はさらに活動の幅がひろがった。
そんなある日、最近人気の歌い手である大斗(だいと)とユニットを組んでみないかと社長に言われる。
どんなやつかと思い、会ってみると……
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
【幼馴染DK】至って、普通。
りつ
BL
天才型×平凡くん。「別れよっか、僕達」――才能溢れる幼馴染みに、平凡な自分では釣り合わない。そう思って別れを切り出したのだけれど……?ハッピーバカップルラブコメ短編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる