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父と息子初対面その2
しおりを挟むもう何が何だかわからんっ!!
テラスから部屋に戻り、話をしたいと言うマザール伯爵の優に言われ、ゲンと一緒に3人で別室にいる。
お茶の用意をしてくれた使用人に人払いをした優は、ひと口お茶を飲んでから話し出した。
「まさか今世で会えるとはな…」
視線はゲンに向けられている。
前世、優と元太は会う事は無かった。
そうか、だからさっきゲンは気が付かなかったんだ…
何を今更そんな目で元太を見るのかわからないが、ゲンも薄々勘づいているだろう。仕方ない紹介しておくか…
「元太の生物学上の父親よ。」
ゲンからの返事は無かったが複雑そうな顔をして目の前の男を見ていた。
生まれて初めて会った父親、しかも異世界って確かに何も言えないわね。
そしてゲンも座ってくれと優に言われたが、
「自分は護衛ですので…」
と頑なに拒否する。
少し寂しそうな表情をする優につい親としては同情しそうになった。
向かい合って座る私と優。
私の後ろに立つゲンと言う形で本題ははじまるのだった。
「聖女は恵里奈だぞ。」
はああぁー!?
突然の爆弾発言に私は王妃らしからぬ声を上げた。
「な、なんであの子がいるの!?」
優にもわからないと言うが、とにかく恵里奈は私と優が離婚してからもなぜか私に酷く執着していたみたいだと言う。
「どうやって調べたのか知らないがあかりの事、色々知ってたぞ。」
産まれた子供が男の子で元太という名前だという事。
プログラミングの仕事をはじめて、実家を出てから住んでいたアパートから引越した事。
元太の幼稚園からの通う学校や進路。
作家の仕事を始めてそこそこ売れていた事。
「この世界もあかりの作品の中だと恵里奈は言ってる。」
俺は作家になった事すら知らなかったのになと苦笑いをする優。
そりゃペンネームを使っているし、顔出しもしてない。私が作者だと知る事の出来る要素はほぼ無いはず。
いやいや怖い怖い…
何で知ってるの?
「自分は聖女でヒロインだからこの領地を救えるのは自分だけだと言うから邸に置いてはいるが、まあ相変わらずだよ…」
おっとぉ!まさか原作の内容も把握してるって事?
ちょっとそれは面倒臭い方向に話が進みそうね…
「恵里奈って母さんの義妹だった人?」
ゲンが聞いてきたので素直に頷く。
前世、元太にはある程度の事は話していた。
元太には祖父母も父親もいないのだ。
その説明はしてあげないといけないと思い、理解出来そうな年齢になった頃に実家の話も父親の話もしてある。
直接会った事は無いが、恵里奈の存在も知っているのだった。
もちろん私の義妹であり、父親の浮気相手でもあると…
「とにかく、私達もグレイン領をなんとかする為にここに来たのよ。」
事実、この世界は私の小説の世界に酷似している事。
原作の中では恵里奈の言う通りの災害が起こるのは間違いない事。
でも現状、原作とは違う行動をしているせいで、ストーリー通りに進んではいない事などを話した。
「道理で…恵里奈も聖魔法が使えなくておかしいんだと言っていた。」
え?
使えないの?
全く?
じゃあ何しにグレイン領に来たの?
まあ、そもそも元から私の理解出来る子じゃなかったけど…
と、私は深くため息をついた。
「恵里奈の狙いはレオナルド陛下じゃないか?」
ゲンの言葉にハッとする。
そうね、原作通りならここにいれば陛下と出会えると思った?
聖魔法は取得出来てなくても陛下と出会いさえすればお互い好意を抱くはずだと思っていてもおかしくない。
はぁ…
私は前世でも現世でもあの子に夫を取られる運命なのか。
とりあえず、聖女がいても聖魔法が使えないのであれば当初の予定通りに先に雨を降らせてしまおうと言う事で私達3人の意見はまとまったのだった。
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