転生した王妃は親バカでした

ぶるもあきら

文字の大きさ
58 / 77

酒屋のパウロ

しおりを挟む

は?
誰って?

意味のわからない恵里奈の答えに私は多分これ以上ない間抜けな顔をしていただろう。


「バネッサ様ー!」


そこに男を引き連れたゲンが食堂に入って来た


「ご命令通り、酒屋にいた男を連れてまいりました」


ゲンがパウロを捕獲して連れて来てくれた。

だけどその男、パウロを見て私は血の気が引くのがわかった。


「え?…うそ…」


ゲンが連れてきたのはパウロ、でも私にはわかるこの人は


「あ、パパー!解毒薬ちょうだーい」


恵里奈の声に我に返る
この人までここにいるのか…

酒屋のパウロの姿をしたその人はあかりの実父、その人だった


「も、もう渡した分しか無い…」


ゲンに相当脅されたのかオドオドはなすパウロ。

ねぇそのあんたの首根っこを掴んでるの、あんたの孫だよ?


「えーー!それじゃぁ困るぅー!」


パウロにかけよる恵里奈
腹立たしい口調だが、言ってる事は恵里奈と同意するわ


「ばら撒いた病原菌はなんなの?」


パウロを睨みながら問い詰めると、下を向いたパウロはボソッと答えた


「イ、インフルエンザウィルス…」


はぁぁー?
インフルエンザー?

おいおい、そんなもんなんで持ってんの?

インフルエンザの意味がわかるゲンとマザールもポカンとしてるわ!!

じゃあなに?解毒薬はタミフル系かなにかですかい?

しかし確かにこの世界でインフルエンザは未知の病気なのは間違いない

予防接種なんかあるわけないし、広場で倒れてた人達は、抵抗力の弱い年配者や子供だったのだろう

比較的体力のある、若い者や男性が恵里奈に群がっていたのだ

どうする…
たしか発症から48時間以内に薬を摂取しないとダメじゃなかった?


「い、一応自分が病気になったら困るから一個だけ持ってる…けど…」


と、恵里奈がごそごそポケットから取り出した紙の包み


「こ、これを吸えばいいんでしょ?」


吸引薬!リレンザ系かいっ!!

どちらにしろ一個しか無い、と諦めかけた時ひらめく。

あ、ああっ!待って…

そもそもバネッサは闇属性で毒薬系には強い…


まだ大ボスになる前は力が使えずに聖女への嫌がらせでパウロを頼ったけど、もしかして今なら…

私は薬の包みを恵里奈の手から引ったくり鑑定をかける

薬も毒も紙一重っていうし、これなら…


「作れるわ!」


それからは闇魔法の(毒精製)をつかってリレンザを大量生産した。

元々は吸引薬だし、とりあえず風魔法を使って領地全体に行き届くようにばら撒いた

広場で倒れている人々には個別で吸引させて、比較的元気な領民やマザールの騎士団を派遣して自宅へ帰した。

こうやって何とか疫病騒ぎは解決するのだが…

風魔法でリレンザを撒き、倒れた人々に吸引させるバネッサの姿を見て


「まるで聖女様…」


と口々に噂されて

(バネッサ王妃は聖女だった)

と国中に伝わるのはもう少し後の話



さて、残るは恵里奈ことエリーゼと違法の薬を売っていた父親ことパウロの身の振り方を決めなくてはいけないが…


我が国の絶対的な存在であるレオナルド国王、彼の判断に全てが託されるわけだけど…


ああ、あれは相当怒ってますね


バネッサが最後、国を滅ぼそうとした時と同じ表情ですわ…


聖女と災害を乗り越えながら立派な国王に成長していく設定だけど、レオってば一人でも立派に成長したのね…



と、我が子の成長を見るかのような気持ちになった


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

夫は私を愛してくれない

はくまいキャベツ
恋愛
「今までお世話になりました」 「…ああ。ご苦労様」 彼はまるで長年勤めて退職する部下を労うかのように、妻である私にそう言った。いや、妻で“あった”私に。 二十数年間すれ違い続けた夫婦が別れを決めて、もう一度向き合う話。

王太子妃は離婚したい

凛江
恋愛
アルゴン国の第二王女フレイアは、婚約者であり、幼い頃より想いを寄せていた隣国テルルの王太子セレンに嫁ぐ。 だが、期待を胸に臨んだ婚姻の日、待っていたのは夫セレンの冷たい瞳だった。 ※この作品は、読んでいただいた皆さまのおかげで書籍化することができました。 綺麗なイラストまでつけていただき感無量です。 これまで応援いただき、本当にありがとうございました。 レジーナのサイトで番外編が読めますので、そちらものぞいていただけると嬉しいです。 https://www.regina-books.com/extra/login

私たちの離婚幸福論

桔梗
ファンタジー
ヴェルディア帝国の皇后として、順風満帆な人生を歩んでいたルシェル。 しかし、彼女の平穏な日々は、ノアの突然の記憶喪失によって崩れ去る。 彼はルシェルとの記憶だけを失い、代わりに”愛する女性”としてイザベルを迎え入れたのだった。 信じていた愛が消え、冷たく突き放されるルシェル。 だがそこに、隣国アンダルシア王国の皇太子ゼノンが現れ、驚くべき提案を持ちかける。 それは救済か、あるいは—— 真実を覆う闇の中、ルシェルの新たな運命が幕を開ける。

【完結】転生したらラスボスの毒継母でした!

白雨 音
恋愛
妹シャルリーヌに裕福な辺境伯から結婚の打診があったと知り、アマンディーヌはシャルリーヌと入れ替わろうと画策する。 辺境伯からは「息子の為の白い結婚、いずれ解消する」と宣言されるが、アマンディーヌにとっても都合が良かった。「辺境伯の財で派手に遊び暮らせるなんて最高!」義理の息子など放置して遊び歩く気満々だったが、義理の息子に会った瞬間、卒倒した。 夢の中、前世で読んだ小説を思い出し、義理の息子は将来世界を破滅させようとするラスボスで、自分はその一因を作った毒継母だと知った。破滅もだが、何より自分の死の回避の為に、義理の息子を真っ当な人間に育てようと誓ったアマンディーヌの奮闘☆  異世界転生、家族愛、恋愛☆ 短めの長編(全二十一話です) 《完結しました》 お読み下さり、お気に入り、エール、いいね、ありがとうございます☆ 

【完結】母になります。

たろ
恋愛
母親になった記憶はないのにわたしいつの間にか結婚して子供がいました。 この子、わたしの子供なの? 旦那様によく似ているし、もしかしたら、旦那様の隠し子なんじゃないのかしら? ふふっ、でも、可愛いわよね? わたしとお友達にならない? 事故で21歳から5年間の記憶を失くしたわたしは結婚したことも覚えていない。 ぶっきらぼうでムスッとした旦那様に愛情なんて湧かないわ! だけど何故かこの3歳の男の子はとても可愛いの。

側妃契約は満了しました。

夢草 蝶
恋愛
 婚約者である王太子から、別の女性を正妃にするから、側妃となって自分達の仕事をしろ。  そのような申し出を受け入れてから、五年の時が経ちました。

私は貴方を許さない

白湯子
恋愛
甘やかされて育ってきたエリザベータは皇太子殿下を見た瞬間、前世の記憶を思い出す。無実の罪を着させられ、最期には断頭台で処刑されたことを。 前世の記憶に酷く混乱するも、優しい義弟に支えられ今世では自分のために生きようとするが…。

処理中です...