異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第三章 女神と親友

第98話 新アーツ

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 バラトレストに入るなり、キラーアントと戦った。戦力増強をと思い、ロックバードの羽とロックバードの嘴の欠片、この二つの素材を<錬装>しようとしたが出来なかった。更に<鑑定>してみれば、二つの素材が同じ武器になるという結果。

「この素材は、ゴブリンの武器と同じようなものなのか?」
「どういう事?」
「いや、あいつらの持っていた武器を<錬装>したら、アイアンナックルとか、アイアンクローっていう武器に変わるんだけど、素材によって攻撃力とか耐久値が変化するんだ」
「へぇ」

 質問してきた割にあまり関心が無さそうな返事をミサオはしてきた。

「そして、この二つの素材も同じ武器が出来るはずなんだけど……」
「出来ないんだ?」
「ああ」

 どういう訳なのか分からない。悩んでいると、ミコトが何か思いついたように、声を上げる。

「あっ!」
「どうした? ミコト」
「アスカ、その二つを一つの手に持ってやったら、どうかな?」

 成程。同じ武器が出来るのではなく、二つの素材が必要な武器という可能性もあるか。

「分かった。試してみよう」

 俺は右手に羽と嘴の欠片を摑んで<錬装>を使うと、反応があって、ニードルのようなフェザーピックルが出来た。

「お。両方の素材が無いと作れなかったのか。性能は?」

 キマイラブロウには攻撃力は劣るけど、Agiが上がる上にスキル付き。中々の性能だ。

「でも、素材が二つの割にはちょっとしょっぱい性能だな」

 そう言えば左手はストレンジナックルの熟練度を上げている最中だった。左手のストレンジナックルに<鑑定>を掛けてみたら、キラーアントとの戦いでどうやら熟練度が最大になっていたみたいだ。

「丁度良かった。これでフェザーピックルを装備出来るな。<修練>を使わずに済んだし」
「良かったね」
「ミコトのアドバイスのお陰だな」

 ストレンジナックルが熟練度最大になったということは、アーツを習得したはずだ。

「そう言えば、ミサオ。フォレストパレスまではどれ位かかるんだ?」
「うぅん? 三日くらい?」
「何故、疑問系?」
「だって、距離は結構あるよ。それで、どれ位かかるかはよく分からないんだもん」
「まぁいいか。新しいアーツを試しながら進もう」

 アーツを習得出来たかステータスプレートを確認すると、俺は驚いた。アーツの欄に二つのアーツ、スキルが追加されていた。

 一つはストレンジナックルで習得出来た<気弾>、そしてもう一つは全く心当たりの無いスキル、<フラッシュムーブ>。

 <気弾>は、闘気を球状に圧縮し、相手に飛ばす。遠距離アーツ。しかも、幽体などの物理攻撃が無効の相手にもダメージを与える事が出来るみたいだ。難点は、威力が魔力に依存する所か。魔力なんて大したことが無いぞ。使えるのか、使えないのか検証がいるのは確かだ。

 そして、もう一つのスキル<フラッシュムーブ>。これは、ヒデオとの戦った時、無意識に発動していたみたいだ。任意の相手との距離を一瞬で詰めるというスキルだった。

「あの時、突然サウザート軍の兵士の目の前に移動したのが、これだとすると、何で習得してもいなかったスキルが使えた?」

 それまでの出来事を振り返る。何か変わった事があったか? あ、そう言えばブーツ。ブラッドの試練の洞窟で、魔器を手に入れた。もしかして、これか? 俊傑のブーツを<鑑定>してみると、性能が上がっている。

 この魔器の隠れスキルだったのか。ヒデオとの戦いは、無意識に発動していたけど、習得してアクティブになったと思えば良いのかな?

「何にせよこのスキル、俺にドンピシャだな」

 ステータスプレートを見ていた俺を気持ち悪そうにミサオが話しかけてきた。

「アスカ、ニヤニヤしながらプレート見てるのは良いけど、さっさと進もうよ」
「うん? あぁ、そうだな。先に進もうか」

 モンスター相手にこの新しい二つのスキルと、フェザーピックルを試すにも先に進んだ方がいい。俺たちはフォレストパレス目指して再び歩き始めた。

 やがて日も暮れて来たので、野営の準備を進めたが、その日は新たにモンスターと遭遇することも無く、終わってしまった。

 翌日、朝早くから出発すると、昨日に続きキラーアント三体と遭遇した。

「またこいつらか」
「うぅ。やっぱり虫は苦手だよ」
「私もあまり得意じゃないよ……」

 二人共、虫が苦手らしく後退りをしていた。

「任せろ。木を気にしながら戦うんだし、魔術を使えないんだ。俺がやるよ」

 ミサオはFDを使えば直接触れることは無いだろうが、どうもFDにも触らせたくないみたいだ。

「さてと、やっと試せるな」

 先ずはこいつだ。俺は右手に闘気を集中させる。

「行くぞ。<気弾>! はぁっ」

 右手に拳大の光弾が現れ、それをキラーアントに向けて放つ。光弾は一直線にキラーアントへと向かい直撃すると、小さな爆発と共に、キラーアントの前足を吹き飛ばしていた。

「へ?」

 これ、魔力依存のアーツだったよな? 昨日ステータスを確認した時、明らかに物理攻撃力の方が上だった。

「どう見ても、こっちの方が威力があるようにしか見えないけど……、まぁいいか。次だ!」

 前足を吹き飛ばしたキラーアントを意識して、<フラッシュムーブ>を使ってみれば、一瞬で間合いを詰める。突然目の前に俺が現れ、キラーアントは対応が取れないようだ。

「これでも喰らえ」

 キラーアントの顔面に左右の連打を当てる。

「硬っ。物理の方が効いてない」

 直ぐに後ろに飛び、距離を取る。すると、俺がさっきまで立っていた所を別のキラーアントの前足が地面を突き刺す。

「危なかった。こいつらのステータスが、魔術に弱いと言うことなのかな?」
「アスカ、大丈夫?」
「え? 大丈夫、大丈夫」

 <気弾>の方が明らかにダメージが入っている。だったら、使わない手は無い。

「さてと、こうなったら<気弾>の実験だな」

 キラーアントに右手を向け闘気を集中する。

「まずは、連射性能だ! <気弾>」

 拳大の光弾がキラーアントへ向かって放たれる。

「次!」

 すぐに、<気弾>を使おうとしたが、発動しない。

「やっぱり。連射は出来ないのか。撃つまでに溜めもいるし、そこはしょうがないか」

 放たれた光弾はキラーアントに躱され、すこし離れた木に向かって真っ直ぐ飛んでいく。

「しまった。木に当たる!」
「馬鹿! 何してるの!」

 ミサオが罵声を上げるが、躱されたのだからしょうがない。くそっ。曲がってくれれば良いのに! 強くそう願ったら、光弾が右に少し反れ、木の幹に掠った程度で更に奥へと進んでいく。

「曲がった! 今なら間に合うか。ミコト頼む」
「分かった。<ホーリーバリア>」

 光弾の進む先にミコトが<ホーリーバリア>を展開し、木をなぎ倒す事なく、光弾は消えた。

「良かった。でも、これは俺の意思で曲げられるのかな?」

 試しに、再びキラーアントに向けて<気弾>を放つ。ただ、最初から少しキラーアントから逸した射線で。キラーアントは光弾が逸れたと思ったのか、無視してこっちに向かって来る。

 そして、俺は左に曲がるように意識すると、くくっとまるで変化球のカーブのような軌道でキラーアントに命中した。

「軌道は変化するけど、自由自在とはいかないんだな」

 そして、俺は三体のキラーアントを<気弾>で討伐した。<気弾>は、見た目の威力の割には、本体へのダメージは少ないようだ。一体倒すのに六発必要だった。

 しかも、最初の一発以外はキラーアントの体を吹き飛ばすような効果は無かった。たまたま当たりどころが良かっただけ、といった感じだ。

 分かったのは、左右で放てば、多少の連射は可能。弾道は野球の変化球程度には俺の意志で方向を変えられる。

 こんな所か。

 <空破>みたいに属性付与も出来そうだったけど、このジャングルを火事には出来ないから試さなかった。

 そして、俺たちはフォレストパレスを目指し出発をした。一時間程進むと、何やら爆発音が聞こえてきた。誰かが遠くで戦っているようだ。俺たちは顔を見合わせ、頷くと爆発音のした方向へと駆け出した。
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