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第一章 救世主と聖女
第1話 異世界アリウス
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ここは地球とは違う異世界アリウス。
三人の女神と三人の魔王に統治された世界。
この世界に人が住む国は六つ。それを女神と魔王それぞれが統治していた。
そして、世界の中心には女神も魔王も手を出せない大きな島が一つ。強力な魔物が生息しているルーディスコア。
この島にはある伝承が残っている。
この世界が出来て代替わりを繰り返して来ている女神と魔王に残された伝承……。
世界の中心ルーディスコア。この島を手に入れた者こそが、この世界アリウスの統一者になると……。
もう一つ、全く正反対の伝承。この島には手を出してはならない。手を出せば世界が終わると……。
ルーディスコアに行くには、広大な海を渡るか、空から行くかのどちらかしかない。
だが、海にも空にも島へと向かう者の障害となる魔物が生息している。
女神達の住む国は自然に恵まれ、世界の統一など考える事は無かった。だが、魔王達は違った。魔王達の治める国は、凍てついた大地、荒れ果てた荒野、広大な砂漠と厳しい環境であった。
そのため、世界を手に入れるため、虎視眈々と他の国を狙っていた。
だが、奇しくも三人の女神、三人の魔王の力は互角。誰かが他の国を攻めようとすれば、その国を他の誰かに奪われる可能性があり、六つ巴の膠着状態だったのだ。
そんな中、魔王セドニーはルーディスコアに行き、世界を統一しようと画策していた。
「ルーディスコアに渡るための船を造る材料はまだ揃わないのか!?」
未だに船を準備することも出来ない世話人兼行政を任せているアゲートに怒る。
「セドニー様、申し訳ございません。何分、我らの国は、乾いた大地。砂漠には木材が十分にございませんので、隣国バラトレストに頼んでいますが……」
「ふん、どうせあの女神が足元を見て、吹っ掛けているのだろう」
「その通りでして……」
セドニーの治めるサウザートは砂漠の国。セドニーの住む魔王城はオアシスの傍であるため、水や緑はあるが、国としては水不足に苦しんでいる。
国民の生活を豊かにするために、ルーディスコアを手にし、セドニーは、自分が世界の統治者になろうと考えていた。
だが、そのためには広大な海を渡る必要があり、海を渡るための船を造るための木材が必要だ。
一方、女神デイジーの治める隣国バラトレストはジャングルの国。ジャングルというだけあって、木材が豊富である。
そのため、木材を譲ってほしいと打診をしているが、デイジーはセドニーを毛嫌っているから、木材を譲る気はなく高額な要求をしているのだろう。
「ならば、俺が直々にあそこにある木を伐採して来てやるわ」
「お止め下さい。セドニー様がご不在の際にブラッドが攻めて来ようものなら、私たちでは手に負えません」
「うるさい。俺が留守というのがバレなければ良いであろう」
セドニーは、アゲートの静止も聞かず、城から飛び出していった。
「ああ、何も起きなければ良いが……」
国境を越えバラトレストへと侵入すると、すぐに大きく育った木々が見えてくる。
「これだけ生えているのだ。多少持って行った所で困る訳ではないだろうに。あのケチババアが」
セドニーは次から次へと素手で木を切り倒していく。魔王の腕力であれば、木を切り倒すぐらい造作もない。十本程切り倒した所で背後から人の気配を感じ、手を止めた。後ろを向くと、一人の女が立っている。
「セドニー、私の領地で何をしているのかしら」
「デイジーか。お前が木材を譲らないから、こうして俺が直々に貰いに来たのだ」
「ふざけた事を言わないで欲しいわね。さあ、切り倒した木を置いて、すぐに立ち去りなさい」
「断る」
「あら、いいのかしら? 今頃あなたの国がどうなっていても知らないわよ」
「どういう事だ? 貴様、何をした!?」
デイジーの言葉にセドニーは声を荒らげ、デイジーを威圧する。だが、セドニーの威圧を屁とも思わず冷めた口調でデイジーは返答した。
「さあ? 私は何も知らないわ。私はあなたが切り倒した木を元に戻すために来たのだもの。貴方の国がどうなっていようと知ったことではないわ」
セドニーはすぐに念話でアゲートに連絡を取ろうとした。
『アゲート。そっちは大丈夫なのか? おい、アゲート。返事をしろ』
だが、アゲートからの返事がない。
向こうで何か起きているのかどうかも分からない。もし、アゲートの言っていたようにブラッドが攻めて来ていたら……。
「ちっ。覚えていろ」
セドニーは急いで城へと引き返し、国境を越え再び念話を用い、アゲートに連絡を取る。
『おい、アゲート返事をしろ』
だが、自国の領地に戻ったというのにアゲートとの念話が繋がらない。何かがおかしい。暫くすると城から煙が上がっているのが見えた。
「城から煙だと!」
セドニーが城へ着いた時、城の一部が燃えていた。城中の者が慌てて火を消そうとオアシスから水を汲んで来ては、火元にかけていた。
「おい、何があった。説明しろ!」
消火活動をしている男を捕まえ質問すると、男は慌てて返事をしてきた。
「セドニー様! サウスバレンが。サウスバレンが攻めて来ました」
「ブラッドが! アゲートはどうした!?」
「アゲート様は、サウスバレンの軍隊を退けた際に怪我をして意識を失っております」
「生きてはいるのだな」
「はい」
セドニーの留守にサウスバレンが攻めてくるとは、タイミングが良すぎる。
ケチババアの口ぶりからするとあいつがブラッドに報せたに違いない。絶対に許さない。こうなったらルーディスコアに行く前にバラトレストもサウスバレンも攻め落としてやる。
だが、セドニー自身がこの場を離れれば、再び留守の間にここが攻められる可能性があるため、ここから離れられない。
とはいえ、あの二人を倒せるとしたら、それが出来るのもセドニーだけ。この国にあの二人に対抗出来るような奴はいない。
どうすればいい……。
どうすれば、あの二人を殺せる……。
いや、この際だ。あの二人だけじゃない。
他の女神、魔王を全て殺し、世界を我が手にしてやる。そうすれば、世界中が救われるじゃないか。
どうすれば、全員殺せる。この俺と同等の力を持つ者達を。
そうだ。殺せる者を準備すればいいのだ……
三人の女神と三人の魔王に統治された世界。
この世界に人が住む国は六つ。それを女神と魔王それぞれが統治していた。
そして、世界の中心には女神も魔王も手を出せない大きな島が一つ。強力な魔物が生息しているルーディスコア。
この島にはある伝承が残っている。
この世界が出来て代替わりを繰り返して来ている女神と魔王に残された伝承……。
世界の中心ルーディスコア。この島を手に入れた者こそが、この世界アリウスの統一者になると……。
もう一つ、全く正反対の伝承。この島には手を出してはならない。手を出せば世界が終わると……。
ルーディスコアに行くには、広大な海を渡るか、空から行くかのどちらかしかない。
だが、海にも空にも島へと向かう者の障害となる魔物が生息している。
女神達の住む国は自然に恵まれ、世界の統一など考える事は無かった。だが、魔王達は違った。魔王達の治める国は、凍てついた大地、荒れ果てた荒野、広大な砂漠と厳しい環境であった。
そのため、世界を手に入れるため、虎視眈々と他の国を狙っていた。
だが、奇しくも三人の女神、三人の魔王の力は互角。誰かが他の国を攻めようとすれば、その国を他の誰かに奪われる可能性があり、六つ巴の膠着状態だったのだ。
そんな中、魔王セドニーはルーディスコアに行き、世界を統一しようと画策していた。
「ルーディスコアに渡るための船を造る材料はまだ揃わないのか!?」
未だに船を準備することも出来ない世話人兼行政を任せているアゲートに怒る。
「セドニー様、申し訳ございません。何分、我らの国は、乾いた大地。砂漠には木材が十分にございませんので、隣国バラトレストに頼んでいますが……」
「ふん、どうせあの女神が足元を見て、吹っ掛けているのだろう」
「その通りでして……」
セドニーの治めるサウザートは砂漠の国。セドニーの住む魔王城はオアシスの傍であるため、水や緑はあるが、国としては水不足に苦しんでいる。
国民の生活を豊かにするために、ルーディスコアを手にし、セドニーは、自分が世界の統治者になろうと考えていた。
だが、そのためには広大な海を渡る必要があり、海を渡るための船を造るための木材が必要だ。
一方、女神デイジーの治める隣国バラトレストはジャングルの国。ジャングルというだけあって、木材が豊富である。
そのため、木材を譲ってほしいと打診をしているが、デイジーはセドニーを毛嫌っているから、木材を譲る気はなく高額な要求をしているのだろう。
「ならば、俺が直々にあそこにある木を伐採して来てやるわ」
「お止め下さい。セドニー様がご不在の際にブラッドが攻めて来ようものなら、私たちでは手に負えません」
「うるさい。俺が留守というのがバレなければ良いであろう」
セドニーは、アゲートの静止も聞かず、城から飛び出していった。
「ああ、何も起きなければ良いが……」
国境を越えバラトレストへと侵入すると、すぐに大きく育った木々が見えてくる。
「これだけ生えているのだ。多少持って行った所で困る訳ではないだろうに。あのケチババアが」
セドニーは次から次へと素手で木を切り倒していく。魔王の腕力であれば、木を切り倒すぐらい造作もない。十本程切り倒した所で背後から人の気配を感じ、手を止めた。後ろを向くと、一人の女が立っている。
「セドニー、私の領地で何をしているのかしら」
「デイジーか。お前が木材を譲らないから、こうして俺が直々に貰いに来たのだ」
「ふざけた事を言わないで欲しいわね。さあ、切り倒した木を置いて、すぐに立ち去りなさい」
「断る」
「あら、いいのかしら? 今頃あなたの国がどうなっていても知らないわよ」
「どういう事だ? 貴様、何をした!?」
デイジーの言葉にセドニーは声を荒らげ、デイジーを威圧する。だが、セドニーの威圧を屁とも思わず冷めた口調でデイジーは返答した。
「さあ? 私は何も知らないわ。私はあなたが切り倒した木を元に戻すために来たのだもの。貴方の国がどうなっていようと知ったことではないわ」
セドニーはすぐに念話でアゲートに連絡を取ろうとした。
『アゲート。そっちは大丈夫なのか? おい、アゲート。返事をしろ』
だが、アゲートからの返事がない。
向こうで何か起きているのかどうかも分からない。もし、アゲートの言っていたようにブラッドが攻めて来ていたら……。
「ちっ。覚えていろ」
セドニーは急いで城へと引き返し、国境を越え再び念話を用い、アゲートに連絡を取る。
『おい、アゲート返事をしろ』
だが、自国の領地に戻ったというのにアゲートとの念話が繋がらない。何かがおかしい。暫くすると城から煙が上がっているのが見えた。
「城から煙だと!」
セドニーが城へ着いた時、城の一部が燃えていた。城中の者が慌てて火を消そうとオアシスから水を汲んで来ては、火元にかけていた。
「おい、何があった。説明しろ!」
消火活動をしている男を捕まえ質問すると、男は慌てて返事をしてきた。
「セドニー様! サウスバレンが。サウスバレンが攻めて来ました」
「ブラッドが! アゲートはどうした!?」
「アゲート様は、サウスバレンの軍隊を退けた際に怪我をして意識を失っております」
「生きてはいるのだな」
「はい」
セドニーの留守にサウスバレンが攻めてくるとは、タイミングが良すぎる。
ケチババアの口ぶりからするとあいつがブラッドに報せたに違いない。絶対に許さない。こうなったらルーディスコアに行く前にバラトレストもサウスバレンも攻め落としてやる。
だが、セドニー自身がこの場を離れれば、再び留守の間にここが攻められる可能性があるため、ここから離れられない。
とはいえ、あの二人を倒せるとしたら、それが出来るのもセドニーだけ。この国にあの二人に対抗出来るような奴はいない。
どうすればいい……。
どうすれば、あの二人を殺せる……。
いや、この際だ。あの二人だけじゃない。
他の女神、魔王を全て殺し、世界を我が手にしてやる。そうすれば、世界中が救われるじゃないか。
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そうだ。殺せる者を準備すればいいのだ……
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