異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第6話 不遇職業? 拳士

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 俺にかかっている性別反転の呪い。教会で解呪をしてもらったが、残念ながら失敗に終わった。

「失敗みたいですね。私の力ではこの呪いは解呪出来ないようです。お力になれず申し訳ございません」
「いえ、ありがとうございました。知っていたらでいいのですが、他に解呪の方法は無いのでしょうか?」

 俺が神父に解呪方法を聞いてみると、神父は暫く考え込んでから俺の質問に答えた。

「そうですね。もっと大きな街の教会を訪れてみるのはどうでしょうか。この島の首都であるエスティの大教会であれば或いは。他には、そうですね。その呪いをかけた本人に解かせるとか」
「ありがとうございます」

 俺は、教会から出ると呆然と立ち尽くした。

 首都エスティか。ここからどれ位の距離があるのだろうか。そして、俺にこの呪いをかけた奴。この世界に来た時から俺は女になっていたという事は、俺をこの世界に召喚した奴の可能性が高い。異世界人を召喚出来る位の力を持った奴なら有名なんじゃないか?
俺にこんな呪いをかけやがって。絶対許さねぇ。見つけたらぶっ飛ばしてやる!

「大丈夫?」

 ポーラが心配そうに俺の顔を覗き込で来た。

「そうだな。大丈夫かと言われれば、大丈夫じゃないな。やっぱり元に戻りたい。この胸も邪魔だし……」

 ポーラの目が一瞬鋭くなったが、すぐに元に戻ると、

「そうね。うーん……」

 ポーラは何か暫く考え込むんでいると、決意した表情で俺の肩を掴んできた。

「決めた。あなたを放って置けないわ。私もあなたの呪いを解くのを手伝うわ」
「え、いいのか?」
「だって、この村じゃ呪いを解けなかったじゃない。いくらこの村の周りに強いモンスターはいないとは言え、レベル1じゃ死んでしまうかもしれない。出会って間もないとはいえ、死んでしまったら目覚めが悪いじゃないの」
「ありがとう。助かるよ。じゃあ、改めてよろしく!」
「こちらこそ、よろしくお願い」

 ポーラが手伝ってくれるというのは、異世界に来たばかりの俺には本当に心強い。俺は心からポーラに感謝の念を送った。

「それじゃあ、まずはその装備をどうにかしないとね」

 ポーラは俺の恰好を見て苦笑する。俺も自分のボロボロになった服を見て、苦笑する。

「そうだな。でも、俺は装備を買う金なんてないぜ」
「大丈夫。私がプレゼントするわ。行きましょう」

 ポーラは俺をこの村唯一の鍛冶屋に連れていく。

「まあ、ここじゃそんなに良い武器、防具は無いから、期待しないでね」

 店に入ると不愛想な店主が俺たちを出迎えた。

「…………、客か…………」

 ポーラは俺に合いそうな武器や防具を見て回っていると、俺に質問をして来た。

「そういえば、あなたの職業って拳士だったわね。どんな武器が装備出来るのかしら?」

 装備出来るってどういう意味なのか、俺は首を傾げた。

「うん? 武器って別に剣とか何でもいいんじゃないのか?」
「いいえ。職業によって使える武器が変わるの。剣士である私は剣全般ね。確認してみて。プレートの職業の所を触れば分かるわよ」

 俺は言われた通り、プレートの拳士の欄に触れてみる。

 拳士:己の拳を武器とする者。故にあらゆる武器を使う事は出来ない。

 は? 何このとんでもない情報。武器は使えない? そんな訳ないだろう。素手でモンスターと戦えってどうかしているぞ。

「どう?」
「武器は使えないって書いている」
「それは…………。参ったわね……」
「いや、ここに書いていても、別に剣を持つ位大丈夫だろ?」

 ゲームじゃないんだし。ところが、ポーラの口から出たのはあり得ない言葉だった。

「え、無理よ。その証拠に持ってみる?」

 ポーラが俺に売り物のロングソードを手渡す。それを俺は受け取ろうとしたが、受け取る事が出来なかった。持った瞬間、俺の腕に激痛が走る。俺の苦悶の表情を確認するとポーラがすぐに俺の手からロングソードを取り上げた。

「痛かったでしょ? この世界では決められた装備品以外の物を使おうとすると激痛がするの。まあ、その痛みを我慢すれば使えない訳じゃないのだけど、モンスターと戦っている時にそんな激痛がある状態で挑むのは無謀としか言いようがないわ」

 俺は呆然としていた。素手でモンスターと戦わないといけないとは。モンスターって、殴り殺すなんて出来るのか? 呪いを解除なんて出来ないのでは? そんな事を考えていると、ポーラが俺に話しかけてきた。

「武器を持てないとなると、防具はどうしよう……。重たい物だと動きが鈍くなるだろうし。そうだ、アスカ、これなんてどう?」
「え、ああ。これは?」

 ポーラが俺に見せて来たのは、布で出来た服。そして、ポーラが着けているのと同じ小手だった。

「これなら、身動きが取りやすいだろうし、小手くらいは丈夫な物を付けておいた方が身を守るのにもいいしね」

 殴りが主攻撃になる俺はヒットアンドアウェイが合いそうだ。そして、もしもの時は小手でモンスターの攻撃をガードに使うのに丁度いいか。有難い。俺の事をよく考えてくれている。

「そうだな。これならいけるかも」
「じゃあ、これを買いましょう」
「三百三十ゴルだ……。毎度……」

 ポーラが店主に金を支払い、俺は装備を受け取る。プレゼントしてくれるとは言っていたが、お金が出来たら返そう。

 俺たちは鍛冶屋を出ると、これからの行動についてゆっくり話そうということになり、宿屋のポーラの部屋に戻ってきた。俺はそこで買った装備に着替える。うん。ピッタリだ。何でも神の加護とやらで、防具は装備すると自分の体のサイズに大きさが変わるらしい。そのおかげで、ダンジョンに眠っている宝とか、防具が出てくるとサイズが合わず諦めるという事は無いそうだ。便利でいいな。
だが、武器はどうしても使用出来るものが決まっているのとサイズは変わらないらしく、こればかりは、どうしようもないらしい。

「じゃあ、今後の事を決めましょう」

 俺は頷く。

「呪いを解くには、首都エスティの大教会に行くか、呪いをかけた相手に解かせるか、だったわね」
「ああ」
「ここからエスティまでは結構かかるわ。小さい島と言っても、このアンファ村は島の外れの方にあるから。途中出てくるモンスターもここより強いし。今のあなたじゃ死んでしまうでしょうね」

 当然だろう。俺はレベル1だ。まずはレベルを上げて力を付けないと何も出来ない。

「だから、暫くはこの村の周りで力を付けましょう。でも、モンスターと戦う前に私が戦い方を教えてあげる。ある程度戦えるようになったらモンスターを退治して、レベル上げをしましょう」

 俺はポーラの提案を承諾する。それしかないだろう。向こうの世界じゃ戦いなんてないし、殴り合いの喧嘩だってまともにやりあった事もない。まずはこの呪いを解く。元の世界に戻れるかはその後だ。たとえ、戻れてもこんな女の体で戻りたくない。外を見れば、もう辺りが暗くなり始めていた。今日はゆっくり休み、明日からのポーラとの戦闘訓練に備えることにしよう……。
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