異世界呪われた救世主~異世界召喚されたら呪いで女に。呪った奴はぶっ飛ばす~

陽月純

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第一章 救世主と聖女

第18話 セティフの洞窟

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 俺はバーグの護衛をしながら、聖女さま御一行をセティフの洞窟へ向かって歩いていた。道中、スライムが現れたが、ビリーが倒してしまい俺は特に何もする事なく、セティフの洞窟へと辿り着いた。

 途中、聖女の子が俺に話しかけようとしてきたが、セレスがすぐに間に入り、話しかけるのを止める。

 そんなに俺と会話させたくないのか?俺ってそんなに怪しそうに見えるのか?女になっているとはいえど、そこまで怪しくは見えないと思うぞ。ちょっとショックだった。

「ほら、ここがその洞窟だ。隠し通路を通れるのかどうかは知らないが、そっちの道を真っすぐ進んだ突き当りがそうだ。じゃあ、バークさん、俺達はこっちに行こうか」
「あ、あの、ありがとうございました」

 聖女が俺に礼を言うと、他の四人も俺に頭を下げる。俺はそのまま何も言わず、バーグと一緒に隠し通路とは反対の道を奥へと進んで行った。

「あっちに隠し通路なんてあるのかい?ただの行き止まりじゃないのか?」

 バーグ自身、ここに隠し通路があるなんて思っていなかったため、俺があの5人をだましたんじゃないかと心配そうな顔をしている。

「それがあったんですよ。あっちに。まあ、通れずに後で俺に文句を言ってくるんじゃないかと思いますけどね」
「ふーん」

 バーグは半信半疑といった感じだが、ここには仕事で来たのだ。そんなことを気にしていてもしょうがないと思ったのだろう。採掘場所に来ると、ピッケルを取り出し、銅鉱石を掘り始めた。

「お、いつもの奴らが来たな。バーグさん、ケイブバットが来た。ダークアローの流れ弾には気を付けてください」
「分かっ……た……、任せ……たぞ……」

 ピッケルを振りながら、バーグはアスカに答える。まあ、いつもの事だから、気にも留めていないのだろう。俺はこっちに向かって飛んでくるケイブバットに向かって駆け出す。

 ケイブバットの前に黒い矢が生まれ、俺に向かって飛んで来るが、俺はそれを難なく躱す。俺は走りながら、スライムの核を両手に取り出し、<錬装>を使う。

 俺の拳が球状の青いゼリーで包まれ、スライムブロウを装着し、俺を咬みつこうと降下してくるケイブバットに向かって飛び上がった。

 これまでのクエストをこなし、モンスターを倒してきた俺は、二つのアーツを取得していた。その内の一つを起動する。

「<双牙>」

 俺の右拳が淡い光に包まれ、双牙の効果が宿る。そして、ケイブバットが拳の届く範囲に入った所で、もう一つのアーツを放った。

「<疾風はやて>」

 素で攻撃するよりも拳速が速くなり、更にアーツの効果で瞬間的にSTRが上がった俺の突きがケイブバットの顔面を捉えると、双牙の効果でケイブバットに二撃分の衝撃が入る。

「お、ダブルアーツで一撃になったな」

 今の攻撃でケイブバットが光の粒子となり消えていった。牙がそのまま地面に落ちていく。俺は着地すると牙を拾い上げ、<空納>で保管する。俺の戦闘を見ていたバーグが感心した様子で俺に声を掛けてきた。

「いやぁ、アスカさん。どんどん逞しくなっていくな。見事なもんだ。戦闘も」
「ありがとうございます」

 ん? 戦闘? ってなんだ?
 バーグをよく見たら、バーグの視線は俺の胸をじっと見ていた……。あ、こいつ、飛び上がって、着地した時に揺れていた俺のおっぱい見て、って言ったな……。やれやれだ。レベルが上がるとAP魅力もどんどん上がっていく。そのせいか、やたらと人の目を引くようになってしまった。しかも、これが人間だけではなく、モンスターにも影響しているみたいで、他のメンバーと一緒に居ても俺を狙ってくるモンスターが多い。

 もしかしたら、俺にこの呪いをかけた奴の狙いがこれなのかもしれない。ステータス弱体化とモンスターからのターゲティングアップ。俺がモンスターによって殺される確率を上げるための呪い。そんな気がする。

 呪いをかけた奴には、絶対後悔させてやる。俺の渾身の一撃を絶対入れてやる! そんな事を思っていると、洞窟中に響き渡る巨大な爆発音がなった。その爆発の影響で洞窟が揺れている。

「何だ? 何だ? 何が起こった!?」

 俺とバーグが目を丸くしていると、今の爆発に驚いたのか、奥から十体くらいケイブバットがこっちに向かって来るのが見えた。

 時を遡る事、一時間……

 アスカ達と別れ、隠し通路があるといわれた通路を聖女さま御一行のパーティは奥へと進んでいた。一行は、アスカが言っていた通路の最奥。アスカしか通れない通路の入り口である壁に辿り着いた。

「ここじゃないか。行き止まりだ」
「そうですね。ビリー。壁にスイッチのようなものはありますか?」

 マリーに言われ、ビリーが壁にスイッチが無いか探し始めると、セレス、セイラも辺りに何か無いか探し始めた。

「うーん。何も無いぜ。姉さん、あの子に騙されたのかな?」
「あの女性が嘘をついているようには見えませんでしたよ。あなたにはそのように見えたのですか?」
「いや、そんな風には見えなかったけど」
「はんっ。あんなたかが冒険者風情の言う事を信じる方がおかしかったんだよ」

 セレスがアスカの話を信じて馬鹿を見たという感じで腹を立てていた。

「セレスさん、そんな言い方はひどいですよ」

 聖女がセレスを諫めるが、セレスは聞こえないふりをして、周辺の調査を続ける。

「もう……。何であんなに冒険者の人を毛嫌いするのか分からない……」

 仕方なく聖女も周辺を調べ始め、三十分が経ったが一行は全く何も手がかりを得る事は出来ずどうしたものかと悩んでいた。

「さっきの女性、アスカさんにもう一度確認したらどうでしょうか?」
「それしかないかなぁ」

 聖女とセイラが諦めた時、ビリーが壁に剣を叩き付けた。

「くそっ!」

 ビリーの叩き付けた剣は壁に刺さるどころか、弾き返される。

「は? 何だこれ? 何で弾き返されるんだ?」

 その光景を見ていたマリーが、ビリーに退くように言うと、持っていた杖に魔力を込め始める。

「やはり、その壁は何か普通と違いますね。いきますよ。<ファイアランス>!」

 マリーの杖から巨大な炎の槍が現れ、壁に向かって真っすぐ飛んでいくと壁に命中した。だが、壁には傷一つ付くことは無かった。

「そんな、姉さんの<ファイアランス>で傷一つ付かないなんて……」
「なら、これでどうかしら。<ファイアボール>!」

 マリーの杖から炎の球が作り出されると、壁に向け飛ばした。着弾と共に巨大な爆発音が洞窟中に鳴り響き、爆発の衝撃で洞窟が揺れるが、壁には傷一つ付かなかった。

「この先に何かあるのは間違いないようですね。もう一度彼女に話を伺いましょう」

 聖女達は来た道を戻り、アスカ達の進んだ通路を進むと、ケイブバットの群れを相手に格闘しているアスカを目撃するのだった。
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