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第一章 救世主と聖女
第22話 対決!ファイアリザード
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ファイアリザードはまだこちらの様子を窺うようにじっとしている。ポーラとミコトは俺の問いかけにファイアリザードを見ながら考えている。最初に口を開いたのはポーラだった。
「あれは今の私たちじゃ相手にならないわよ。逃げるしかないわね」
「そうですよね。私も逃げるのに賛成です」
ミコトもポーラの意見に賛成のようだ。大きく頷き答えた。そうだよな。俺もあいつを殴って、攻撃を受けてはっきり分かった。今の俺じゃあいつとはレベルが違い過ぎる。ここは逃げの一手しかないだろう。だけど……
「俺も逃げるのには賛成なんだけど、一つ問題がある」
「「何?」」
俺はファイアリザードを睨みながら答えた。
「あいつの方が俺達より速い。追いかけられたらあっという間に追いつかれてしまうぞ」
「そうね。でも、それについては私に考えがあるわ」
ポーラが俺達にその考えを説明する。
それはこうだ。まずは全力で逃げる。奴が俺達を追いかけて来なければそれで問題ない。だけど間違いなく追いかけてくるだろう。追いかけてきたら、ポーラが<ファイアアロー>で牽制。奴の手前の地面に命中させ爆発で視界を遮る。
その後に俺達の足元に穴を作る。奴の知能はそこまで高くないらしい。そのまま真っすぐ突っ込んでくる可能性が高い、まず十中八九穴に落ちるだろうという事だ。穴に落ちて時間を稼げている間に逃げてしまうという算段だ。
「上手くいくかな?」
「大丈夫よ。上手くいくはずよ」
ミコトも不安なのか少し俯き加減に何か考えているようだ。そして、数秒考えると口を開く。
「そうですね。でしたら、私も少しでも確率が上がるようにお手伝いします。<アサルトギア>」
「これは。ありがとう、ミコト」
<アサルトギア>。対象の素早さを十パーセント上昇させる補助系魔術。
「よし! 行くぞ! 無事に逃げるんだ」
俺達が逃げるために奴に背を向けた瞬間、こっちに向かって走り出した。やっぱり逃がすつもりはないようだ。そして思った通り速い。
「やるわよ! <ファイアアロー>!」
ポーラがファイアリザードに向けて5発の炎の矢を放つ。矢は予定通りファイアリザードの手前に着弾すると爆発と煙でファイアリザードの視界を遮った。
「<双牙>、<疾風>!」
「<パワースラッシュ>!」
俺とポーラが足元に向けてアーツを放つと三メートル程の深さの穴が出来る。
「いいわ。このまま真っすぐ走るわよ」
俺達は、穴がファイアリザードと俺達の直線状に入るように再び駆け出す。煙が晴れて、ファイアリザードも再び走り出した。みるみる俺達との距離が詰まっていく。
「もう穴の所まで。頼む。上手くいってくれ!」
そして、ふっとファイアリザードの姿が消えた。
「落ちた! 今のうちよ!」
ポーラの目論見通り、ファイアリザードは穴に落ちた。こんなにあっさり行くものなのか。でも、今が逃げるのに絶好のチャンス。必死に俺達が走っていると、脇に抱えていた子竜が目を覚ましたようだ。
「クルル?」
「お、目が覚めたか? 頼むから襲ったりしないでくれよ」
「どうしたの? アスカ?」
走りながらポーラが質問してくる。ミコトもこっちをちらっと見るとすぐに向き直り逃げるのに全力を尽くす。
「子竜が目覚めたんだ」
「そうなの。なら、放したらどう?」
助け出したとはいえ、子竜はモンスターだ。危険回避のためには確かにそうした方がいいのかもしれない。でも、俺はこの子竜を手放さない方がいい。そんな気がしてならなかった。
「いや、このまま一緒に連れていくよ。この子竜には何かある。そんな気がする」
「そうなの? でも……。まあ、いいわ。今はあれから逃げる事に集中しましょう」
穴に落ちたファイアリザードは穴から出てくる気配がない。動きを上手く封じる事が出来たのだろうか?なら、このまま突っ走るのみ。
『駄目ぇ。止まってぇ。アスカ!』
「え? 誰だ?」
『早くぅ! 止まってぇ』
俺の頭に直接声が聞こえる。この慌てた声に俺は何か不安を感じてしょうがない。
「ポーラ、ミコト、ちょっと待って。止まるんだ!」
「「え?何?」」
二人は俺の声に逃げる足を止め、立ち止まる。すると、俺達の前方五メートルくらいの地面から炎が噴き上がる。走るのを止めていなかったら今の炎で俺達は丸焦げにされていたに違いない。
「炎!?」
炎が噴き上がって出来た穴の中から奴が出てきた。
「そんな、まさか地面の中を走って来たの!」
ポーラの言った通りだった。奴は穴に落ちるとそのまま地面の中を土竜のように進んで来ていたのだ。
「どうやら逃げられないようね」
「ああ、やるしかないみたいだ……」
俺達に追いつき目の前に現れたファイアリザードに戦闘態勢を取る。
『気を付けてぇ。来るよぉ』
声が聞こえた瞬間、ポーラとミコトを押し飛ばし飛び退いた。二人は何故と言う顔をしていたが、それまで俺達が立っていた場所をファイアリザードのファイアブレスが通り過ぎる。
「危なかったわ。アスカ、ありがとう!」
ポーラがファイアリザードに向かって駆け出した。俺も合わせて駆け出す。ミコトは、その場に留まり魔力を練り始めた。
「<アドバンスフォース>!」
ミコトは俺達に力上昇の補助魔法をかけると、ファイアリザードの攻撃に備える。ポーラがファイアリザードの顔目掛けて袈裟斬りをするが、ファイアリザードは後ろに下がるとその斬撃を躱し、お返しと言わんばかりに尾をポーラに叩きつけた。
「ちぃっ」
ポーラは咄嗟にガードをしようとするが、間に合わずファイアリザードの尾は、ポーラの胸を強く打ち付け吹き飛ばす。ポーラと入れ替わるように俺がファイアリザードを殴る。今度はさっきと違い、今の俺が持つ最大の錬装武器。ゴブリンハイクロー。ゴブリンコマンダーの爪を素材に錬装したものだ。これは二個しか作れない貴重な物だが、多分これしか通用しないはず。
ポーラに注意がいっていた事もあり俺の攻撃は奴の横っ腹に当たった。当たったが、そんな……。全く効いていない。今の俺の力では奴の硬い皮膚にダメージを与える事が出来なかった……。
攻撃が通用しないと分かった俺はすぐに後ろに飛び退いた。そこを奴の尾が横薙ぎに通り過ぎる。
「危ねぇ。でも、参ったな……。俺の火力じゃあいつにダメージを入れる事は出来ないみたいだ」
ポーラのあの剣ならダメージが入りそうだが、ポーラはポーラであいつのスピードに追い付けない。俺の攻撃は通じず囮になろうにも、俺もあいつより遅い。しかも俺の防御力ではまともな一撃を喰らえば、下手をしたら即死。防御出来てもさっきみたいに動けなくなってしまい、結果やられてしまうのが目に見えている。
「くっ。どうすりゃいいんだよ」
八方塞がりのこの状況。どうにかならないのか。どうにもならないのか……。
「あれは今の私たちじゃ相手にならないわよ。逃げるしかないわね」
「そうですよね。私も逃げるのに賛成です」
ミコトもポーラの意見に賛成のようだ。大きく頷き答えた。そうだよな。俺もあいつを殴って、攻撃を受けてはっきり分かった。今の俺じゃあいつとはレベルが違い過ぎる。ここは逃げの一手しかないだろう。だけど……
「俺も逃げるのには賛成なんだけど、一つ問題がある」
「「何?」」
俺はファイアリザードを睨みながら答えた。
「あいつの方が俺達より速い。追いかけられたらあっという間に追いつかれてしまうぞ」
「そうね。でも、それについては私に考えがあるわ」
ポーラが俺達にその考えを説明する。
それはこうだ。まずは全力で逃げる。奴が俺達を追いかけて来なければそれで問題ない。だけど間違いなく追いかけてくるだろう。追いかけてきたら、ポーラが<ファイアアロー>で牽制。奴の手前の地面に命中させ爆発で視界を遮る。
その後に俺達の足元に穴を作る。奴の知能はそこまで高くないらしい。そのまま真っすぐ突っ込んでくる可能性が高い、まず十中八九穴に落ちるだろうという事だ。穴に落ちて時間を稼げている間に逃げてしまうという算段だ。
「上手くいくかな?」
「大丈夫よ。上手くいくはずよ」
ミコトも不安なのか少し俯き加減に何か考えているようだ。そして、数秒考えると口を開く。
「そうですね。でしたら、私も少しでも確率が上がるようにお手伝いします。<アサルトギア>」
「これは。ありがとう、ミコト」
<アサルトギア>。対象の素早さを十パーセント上昇させる補助系魔術。
「よし! 行くぞ! 無事に逃げるんだ」
俺達が逃げるために奴に背を向けた瞬間、こっちに向かって走り出した。やっぱり逃がすつもりはないようだ。そして思った通り速い。
「やるわよ! <ファイアアロー>!」
ポーラがファイアリザードに向けて5発の炎の矢を放つ。矢は予定通りファイアリザードの手前に着弾すると爆発と煙でファイアリザードの視界を遮った。
「<双牙>、<疾風>!」
「<パワースラッシュ>!」
俺とポーラが足元に向けてアーツを放つと三メートル程の深さの穴が出来る。
「いいわ。このまま真っすぐ走るわよ」
俺達は、穴がファイアリザードと俺達の直線状に入るように再び駆け出す。煙が晴れて、ファイアリザードも再び走り出した。みるみる俺達との距離が詰まっていく。
「もう穴の所まで。頼む。上手くいってくれ!」
そして、ふっとファイアリザードの姿が消えた。
「落ちた! 今のうちよ!」
ポーラの目論見通り、ファイアリザードは穴に落ちた。こんなにあっさり行くものなのか。でも、今が逃げるのに絶好のチャンス。必死に俺達が走っていると、脇に抱えていた子竜が目を覚ましたようだ。
「クルル?」
「お、目が覚めたか? 頼むから襲ったりしないでくれよ」
「どうしたの? アスカ?」
走りながらポーラが質問してくる。ミコトもこっちをちらっと見るとすぐに向き直り逃げるのに全力を尽くす。
「子竜が目覚めたんだ」
「そうなの。なら、放したらどう?」
助け出したとはいえ、子竜はモンスターだ。危険回避のためには確かにそうした方がいいのかもしれない。でも、俺はこの子竜を手放さない方がいい。そんな気がしてならなかった。
「いや、このまま一緒に連れていくよ。この子竜には何かある。そんな気がする」
「そうなの? でも……。まあ、いいわ。今はあれから逃げる事に集中しましょう」
穴に落ちたファイアリザードは穴から出てくる気配がない。動きを上手く封じる事が出来たのだろうか?なら、このまま突っ走るのみ。
『駄目ぇ。止まってぇ。アスカ!』
「え? 誰だ?」
『早くぅ! 止まってぇ』
俺の頭に直接声が聞こえる。この慌てた声に俺は何か不安を感じてしょうがない。
「ポーラ、ミコト、ちょっと待って。止まるんだ!」
「「え?何?」」
二人は俺の声に逃げる足を止め、立ち止まる。すると、俺達の前方五メートルくらいの地面から炎が噴き上がる。走るのを止めていなかったら今の炎で俺達は丸焦げにされていたに違いない。
「炎!?」
炎が噴き上がって出来た穴の中から奴が出てきた。
「そんな、まさか地面の中を走って来たの!」
ポーラの言った通りだった。奴は穴に落ちるとそのまま地面の中を土竜のように進んで来ていたのだ。
「どうやら逃げられないようね」
「ああ、やるしかないみたいだ……」
俺達に追いつき目の前に現れたファイアリザードに戦闘態勢を取る。
『気を付けてぇ。来るよぉ』
声が聞こえた瞬間、ポーラとミコトを押し飛ばし飛び退いた。二人は何故と言う顔をしていたが、それまで俺達が立っていた場所をファイアリザードのファイアブレスが通り過ぎる。
「危なかったわ。アスカ、ありがとう!」
ポーラがファイアリザードに向かって駆け出した。俺も合わせて駆け出す。ミコトは、その場に留まり魔力を練り始めた。
「<アドバンスフォース>!」
ミコトは俺達に力上昇の補助魔法をかけると、ファイアリザードの攻撃に備える。ポーラがファイアリザードの顔目掛けて袈裟斬りをするが、ファイアリザードは後ろに下がるとその斬撃を躱し、お返しと言わんばかりに尾をポーラに叩きつけた。
「ちぃっ」
ポーラは咄嗟にガードをしようとするが、間に合わずファイアリザードの尾は、ポーラの胸を強く打ち付け吹き飛ばす。ポーラと入れ替わるように俺がファイアリザードを殴る。今度はさっきと違い、今の俺が持つ最大の錬装武器。ゴブリンハイクロー。ゴブリンコマンダーの爪を素材に錬装したものだ。これは二個しか作れない貴重な物だが、多分これしか通用しないはず。
ポーラに注意がいっていた事もあり俺の攻撃は奴の横っ腹に当たった。当たったが、そんな……。全く効いていない。今の俺の力では奴の硬い皮膚にダメージを与える事が出来なかった……。
攻撃が通用しないと分かった俺はすぐに後ろに飛び退いた。そこを奴の尾が横薙ぎに通り過ぎる。
「危ねぇ。でも、参ったな……。俺の火力じゃあいつにダメージを入れる事は出来ないみたいだ」
ポーラのあの剣ならダメージが入りそうだが、ポーラはポーラであいつのスピードに追い付けない。俺の攻撃は通じず囮になろうにも、俺もあいつより遅い。しかも俺の防御力ではまともな一撃を喰らえば、下手をしたら即死。防御出来てもさっきみたいに動けなくなってしまい、結果やられてしまうのが目に見えている。
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