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第二章 魔王と戦争
第96話 デザートドラゴン対デザートドラゴン
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デザートドラゴンに襲われ、反撃に出たが、全く歯が立たず逃げに回った俺たちだった。
悪い事は続くとはよく言ったものだ。
昨日のデザートドラゴンが直ぐそこまで近付いていた。俺の様子を見ていたミコトが走りながら声をかけてきた。
「アスカ、どうしたの? 様子が変だけど」
「昨日のデザートドラゴンも直ぐそこまで近付いて来ているんだ。一体だけでも手に負えないのに、もう一体増えてしまう」
「そんな」
アルに出てきてもらって、パラライズブレスをデザートドラゴンたちに放ってもらうか?
いや、通用するかも分からないのに、立ち止まるなんてのは以ての外だ。何とかこのまま逃げるしかない。
でも、どうやって?
昨日のデザートドラゴンが全力で向かって来ているのか、昨日とは段違いの速さでこっちに向かっている。今潜っているデザートドラゴンよりも速い。
「離れろ!」
砂の中から、デザートドラゴンが三度飛び出してくる。だが、<感知>を常に使っている俺には動きが全て分かっている。
出てくるタイミングさえ分かっていれば、いくら速くても躱すことは容易い。だけど、今近付いて来ているデザートドラゴンも加わるとそうはいかなくなるだろう。躱した後に、ガブリとやられかねない。
「あぁ、もう。嫌だぁ」
「ミサオ、泣き言言ってないで、走れ」
昨日から逃げてばかりで、ミサオの我慢も限界みたいだが、それは俺だって同じだ。デザートドラゴンの方を睨んでみると、様子がおかしい事に気付いた。俺たちの方を向かず、後ろを気にしている。その気にしている方向には、もう一体のデザートドラゴンがいる。もしかして、縄張り争いとか?
「おい、二人共。全力疾走だ。もしかしたら、チャンスかもしれない」
二人が走りながら不思議そうな顔をする。
「昨日のデザートドラゴンが近付いて来ているんだけど、こいつら、仲間とかじゃなくて、お互い縄張りに入った侵入者みたいな感じなのかもしれない」
「それって……」
ミコトが最後まで話す前に頷く。
「ああ。モンスター同士の争いになりそうだ」
デザートドラゴンが砂に潜る。そして、思った通り。俺たちの方ではなく、もう一体の方へと進み出した。
「向こうに行ったぞ。走れ!」
俺たちはバラトレストに向け、デザートドラゴンとは反対方向へと駆け出した。
一方、昨日からアスカ達を付け回していたデザートドラゴンは、自分の獲物を横取りしようとした愚か者に頭に来ていた。
『我の獲物を横取りしようなどという愚か者がまだこのエリアにいるとは』
しかも、こっちに気付き向かって来るとは。身の程知らずにも程がある。人間共に砂の悪魔と恐れられ、近隣のモンスター共も我に恐れを成して近寄りもしないというのに。
良いだろう。力の差というものを見せてやろう。
砂の悪魔と呼ばれるデザートドラゴンは、進路を自分の下へ向かって来るデザートドラゴンへと変える。もう一体のデザートドラゴンとの距離が詰まっていく。
残り二百メートルの所で、もう一体のデザートドラゴンは地上に向かって上がっていく。勢いよく地上へ飛び出したデザートドラゴンは、イルカのようにジャンプすると、砂の悪魔に向けて、角を突き立てる。
『ふん。無駄だ』
砂の悪魔は右に旋回すると突き刺しを躱す。躱した後、自分も地上へと上がった。
狙っていた人間が遠ざかっていくのが見える。ここからならブレスで塵と化すのも容易いだろう。
だが、それはしない。それではこれまで我慢してきた意味がない。あれは、食すのだ。食し、自身の力を強くする。己に力を与えてくれた神のためでもある。
神と言っても、邪神だが。自分よりも力のあるカオスドラゴンが破れているのを知っている。
女神のお陰という話もあるが、慎重に事を進めるのは悪くない。まずは、邪魔な同族を始末する。
デザートドラゴンが二体揃って地上に姿を現す。
アスカは、その気配を<感知>で感じ、後ろを振り返ると、二体のデザートドラゴンが互いに向き合い、争おうとしているのが分かった。
「仲間割れ、いや、予想通りの縄張り争いといった所か。それにしても、あのデカい方。亜種なのか? 体の色が黒いぞ。だけど、チャンスだ」
そして、前を向けば遠くに小さいが砂漠には無い、緑の木が見えて来ていた。
「あれは」
「バラトレストとの国境が近いよ」
アスカが立ち止まる。
「どうしたの?」
アスカが立ち止まったため、二人も立ち止まった。
「二人共、ごめん。今がチャンスだ。ちょっと我慢してくれ」
「「え?」」
二人が首を傾げた瞬間、アスカの体が金色の光に包まれ、二人を両肩に担ぎ上げた。
「ちょっと、アスカ」
「何する……」
「喋ってたら舌噛むぞ」
「……のぉおおおおお」
アスカは二人を担ぎ上げたまま、駆け出す。<アクセルブースト>と加護の力を開放したアスカは、これまで走っていた速度の倍以上の速度で進む。
「えぇぇっ」
「ちょぉおおおっ」
二人の叫び声を無視して、国境に向け走っていった。
『我の邪魔をする貴様。当然、報いを受けることは覚悟の上なのであろう』
デザートドラゴンは答えない。いや、答えられない。砂の悪魔は邪神の力により念話の能力を得ている。通常のデザートドラゴンとは違うのだ。
返事とばかりにデザートドラゴンが咆哮を上げる。
「グォオオオオオオ!」
『愚かな。身の程を知れ!』
デザートドラゴンが砂の悪魔に向かって突進する。砂の悪魔は避ける素振りも見せず、ただ立ち尽くしている。
デザートドラゴンの角が砂の悪魔に当たろうという所で突進が止まった。前へ進もうとしても全く進めない。デザートドラゴンは鋭い爪で砂の悪魔を引っ掻こうとするが、やはり引っ掻くことが出来ない。
『無駄だ。貴様程度の力で我の<ドラゴニックバリア>は貫けぬわ』
砂の悪魔がデザートドラゴンに爪を突き刺すと硬い竜鱗をいとも容易く貫いた。
「ギャオォオオオオ」
『何だ? <ドラゴニックオーラ>も纏えぬ未熟者が我に挑むか?』
痛みに叫び声を上げながらデザートドラゴンは後ろに下がる。
そして、その大きな口を開き、砂の悪魔目掛けて<ヒートブレス>を吐く。その熱線は、あらゆる物を溶かす程の熱量を持っていたが、砂の悪魔の<ドラゴニックオーラ>を打ち破る事は出来なかった。
自身の最大の攻撃が通用しなかったデザートドラゴンは、逃げ出そうと砂の悪魔に背を向け、砂の中へと潜り始める。
『逃がす訳が無いだろう』
砂の悪魔がデザートドラゴンに向けて<ヒートブレス>を吐くと、辺りの砂を溶かしながらデザートドラゴンを焼き殺す。デザートドラゴンが光の粒子へと変わり、辺りの砂が高温により硝子のようにキラキラと輝いていた。
『さて、獲物を追うか?』
デザートドラゴンとの戦闘は然程時間は掛かっていない。しかし、アスカ達の気配が自分の索敵範囲から消えていた。
『馬鹿な? この短時間に砂漠を抜けたのか?』
砂の悪魔は、この砂漠に居るからこそ最大の力を発揮出来る。既に気配を感じないのであれば追う必要は無い。再び訪れた時に仕留めれば良いだけのことだ。砂の中へと潜り別の獲物が現れるのを待つことにした。
「だぁっ。流石に疲れたぁ」
「もう、アスカ。無理し過ぎ」
「いや、無理で済まさないでよ、ミコト。何なのよ。あたし達は荷物じゃないわよ!」
「いや、チャンスだったろ……。取り敢えず、何とか……、バラトレストに、着いたな……」
「そうだけど……」
「兎に角、もうあんなのは二度とごめんよ」
「分かった……」
何とか、逃げ切れたみたいだ。あの二体のデザートドラゴンの反応は無い。無茶した甲斐があった。取り敢えず、今日はゆっくり休もう。
悪い事は続くとはよく言ったものだ。
昨日のデザートドラゴンが直ぐそこまで近付いていた。俺の様子を見ていたミコトが走りながら声をかけてきた。
「アスカ、どうしたの? 様子が変だけど」
「昨日のデザートドラゴンも直ぐそこまで近付いて来ているんだ。一体だけでも手に負えないのに、もう一体増えてしまう」
「そんな」
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いや、通用するかも分からないのに、立ち止まるなんてのは以ての外だ。何とかこのまま逃げるしかない。
でも、どうやって?
昨日のデザートドラゴンが全力で向かって来ているのか、昨日とは段違いの速さでこっちに向かっている。今潜っているデザートドラゴンよりも速い。
「離れろ!」
砂の中から、デザートドラゴンが三度飛び出してくる。だが、<感知>を常に使っている俺には動きが全て分かっている。
出てくるタイミングさえ分かっていれば、いくら速くても躱すことは容易い。だけど、今近付いて来ているデザートドラゴンも加わるとそうはいかなくなるだろう。躱した後に、ガブリとやられかねない。
「あぁ、もう。嫌だぁ」
「ミサオ、泣き言言ってないで、走れ」
昨日から逃げてばかりで、ミサオの我慢も限界みたいだが、それは俺だって同じだ。デザートドラゴンの方を睨んでみると、様子がおかしい事に気付いた。俺たちの方を向かず、後ろを気にしている。その気にしている方向には、もう一体のデザートドラゴンがいる。もしかして、縄張り争いとか?
「おい、二人共。全力疾走だ。もしかしたら、チャンスかもしれない」
二人が走りながら不思議そうな顔をする。
「昨日のデザートドラゴンが近付いて来ているんだけど、こいつら、仲間とかじゃなくて、お互い縄張りに入った侵入者みたいな感じなのかもしれない」
「それって……」
ミコトが最後まで話す前に頷く。
「ああ。モンスター同士の争いになりそうだ」
デザートドラゴンが砂に潜る。そして、思った通り。俺たちの方ではなく、もう一体の方へと進み出した。
「向こうに行ったぞ。走れ!」
俺たちはバラトレストに向け、デザートドラゴンとは反対方向へと駆け出した。
一方、昨日からアスカ達を付け回していたデザートドラゴンは、自分の獲物を横取りしようとした愚か者に頭に来ていた。
『我の獲物を横取りしようなどという愚か者がまだこのエリアにいるとは』
しかも、こっちに気付き向かって来るとは。身の程知らずにも程がある。人間共に砂の悪魔と恐れられ、近隣のモンスター共も我に恐れを成して近寄りもしないというのに。
良いだろう。力の差というものを見せてやろう。
砂の悪魔と呼ばれるデザートドラゴンは、進路を自分の下へ向かって来るデザートドラゴンへと変える。もう一体のデザートドラゴンとの距離が詰まっていく。
残り二百メートルの所で、もう一体のデザートドラゴンは地上に向かって上がっていく。勢いよく地上へ飛び出したデザートドラゴンは、イルカのようにジャンプすると、砂の悪魔に向けて、角を突き立てる。
『ふん。無駄だ』
砂の悪魔は右に旋回すると突き刺しを躱す。躱した後、自分も地上へと上がった。
狙っていた人間が遠ざかっていくのが見える。ここからならブレスで塵と化すのも容易いだろう。
だが、それはしない。それではこれまで我慢してきた意味がない。あれは、食すのだ。食し、自身の力を強くする。己に力を与えてくれた神のためでもある。
神と言っても、邪神だが。自分よりも力のあるカオスドラゴンが破れているのを知っている。
女神のお陰という話もあるが、慎重に事を進めるのは悪くない。まずは、邪魔な同族を始末する。
デザートドラゴンが二体揃って地上に姿を現す。
アスカは、その気配を<感知>で感じ、後ろを振り返ると、二体のデザートドラゴンが互いに向き合い、争おうとしているのが分かった。
「仲間割れ、いや、予想通りの縄張り争いといった所か。それにしても、あのデカい方。亜種なのか? 体の色が黒いぞ。だけど、チャンスだ」
そして、前を向けば遠くに小さいが砂漠には無い、緑の木が見えて来ていた。
「あれは」
「バラトレストとの国境が近いよ」
アスカが立ち止まる。
「どうしたの?」
アスカが立ち止まったため、二人も立ち止まった。
「二人共、ごめん。今がチャンスだ。ちょっと我慢してくれ」
「「え?」」
二人が首を傾げた瞬間、アスカの体が金色の光に包まれ、二人を両肩に担ぎ上げた。
「ちょっと、アスカ」
「何する……」
「喋ってたら舌噛むぞ」
「……のぉおおおおお」
アスカは二人を担ぎ上げたまま、駆け出す。<アクセルブースト>と加護の力を開放したアスカは、これまで走っていた速度の倍以上の速度で進む。
「えぇぇっ」
「ちょぉおおおっ」
二人の叫び声を無視して、国境に向け走っていった。
『我の邪魔をする貴様。当然、報いを受けることは覚悟の上なのであろう』
デザートドラゴンは答えない。いや、答えられない。砂の悪魔は邪神の力により念話の能力を得ている。通常のデザートドラゴンとは違うのだ。
返事とばかりにデザートドラゴンが咆哮を上げる。
「グォオオオオオオ!」
『愚かな。身の程を知れ!』
デザートドラゴンが砂の悪魔に向かって突進する。砂の悪魔は避ける素振りも見せず、ただ立ち尽くしている。
デザートドラゴンの角が砂の悪魔に当たろうという所で突進が止まった。前へ進もうとしても全く進めない。デザートドラゴンは鋭い爪で砂の悪魔を引っ掻こうとするが、やはり引っ掻くことが出来ない。
『無駄だ。貴様程度の力で我の<ドラゴニックバリア>は貫けぬわ』
砂の悪魔がデザートドラゴンに爪を突き刺すと硬い竜鱗をいとも容易く貫いた。
「ギャオォオオオオ」
『何だ? <ドラゴニックオーラ>も纏えぬ未熟者が我に挑むか?』
痛みに叫び声を上げながらデザートドラゴンは後ろに下がる。
そして、その大きな口を開き、砂の悪魔目掛けて<ヒートブレス>を吐く。その熱線は、あらゆる物を溶かす程の熱量を持っていたが、砂の悪魔の<ドラゴニックオーラ>を打ち破る事は出来なかった。
自身の最大の攻撃が通用しなかったデザートドラゴンは、逃げ出そうと砂の悪魔に背を向け、砂の中へと潜り始める。
『逃がす訳が無いだろう』
砂の悪魔がデザートドラゴンに向けて<ヒートブレス>を吐くと、辺りの砂を溶かしながらデザートドラゴンを焼き殺す。デザートドラゴンが光の粒子へと変わり、辺りの砂が高温により硝子のようにキラキラと輝いていた。
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「だぁっ。流石に疲れたぁ」
「もう、アスカ。無理し過ぎ」
「いや、無理で済まさないでよ、ミコト。何なのよ。あたし達は荷物じゃないわよ!」
「いや、チャンスだったろ……。取り敢えず、何とか……、バラトレストに、着いたな……」
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