四度目の正直。

Majun

文字の大きさ
1 / 1

雨は嫌いだ。

しおりを挟む
 雨が嫌いだ。
 朝アイロンをかけた前髪が割り箸を乗せられるほどにカールする。癖毛の人間には湿気と雨は大敵だ。何をどうしても髪が決まらず、終いには全てを悟り、諦める。雨はどうしても好きになれない。
 折角の一張羅であるセレクトショップで買った艶のある灰っぽいセットアップに水滴が付く。雨宿りするたびにハンカチで水滴を飛ばすがそれもあまり意味がないように思える。ハンカチが徐々に水を含んでいく。

 「雨なんてツいてない。こんな人がいるのに雨男の方が多いなんてことある?」

 待ち合わせているグループにメッセージを送る。

 「それな」
 「だるいわ」

 なんて返信が次々画面に表示されるのを横目に携帯をポケットに入れる。孤独感を拭う。
 袴を着て髪を盛った女子大生とスーツ姿の男子大学生が武道館に向かって押し寄せる。片手には大学からもらえる卒業祝い、もう片手には最近「エモい」と言われブームになっている写ルンですを持っている。名前も知らない顔見知り達と目が合い、挨拶を交わす。名前が出ないから適当にあしらって人混みを掻き分ける。
 待ち合わせをしていた友人達と合流し、武道館の前で写真を数枚取り満足したのか卒業式には参列せず、昼食を食べることにした。
 一度行ったら忘れない、声に特徴を持つオヤジとその息子夫婦の3人でやっているイタリアンだ。日替わりとは書いてあるが大体いつも同じランチメニュー。それぞれが学生時代食べていたメニューを注文し、そこに懐かしさを覚える。酸味の効きすぎた前菜のサラダと何度も水のおかわりを持ってくる店主もまた懐かしい。いつもと違うのはパスタのソースがシャツに付かないように丁寧に食べていることくらいだ。

 「イタリアだとスプーンを使ってパスタ食べないらしいよ。あの方法は上手に食べられない人がする方法らしいよ」

 「へぇ~」

各々反応はするもののリアクションは薄い。
 お互いの職場の話、彼女の話、パチンコ、車、時計の話をする。去年一昨年みんなでやっていたソシャゲの話は一切でない、合宿でよくやっていた家庭用ゲーム機に新作がでるなんて話もしない。会話の内容に変遷に、寂しさと大人に近づいているという感覚を与えられる。
 中学、高校の頃はもっと今の時期は大人びていると思っていた。現実はというとあの頃と精神年齢はまるで変わっていない。変わったといえば酒タバコを嗜むことができるようになったことと、人に話せないどうしようも無い失恋が増えたことだろうか。
 趣味にバイトに就活にゼミ、卒論、当たり障りのないそれなりに充実した大学生活を送り、それが終わりを迎える。
 これから待っているのは奨学金という名の借金の返済とスーツに身を包み週5で身を粉にし、残りの決まったレールを歩み続けるだけだ。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...