クリシェ

トリヤマケイ

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エクスプロージョン〜ケンの覚醒

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   なんといえばいいだろうか。

   子どもの頃、頭をグルングルン回しまくって、宙に浮いてゆっくり回転していたあの感じと、射精する際の頭の中が真っ白になる、あの男子ならみんな知っている、女子のイク感覚はわからないから同じかどうかまったくわからないけれど、そんな頭が爆発して身体から魂みたいなものが弾き飛ばされるように抜け出るような、別の世界線へグワーンって持ってかれるような感覚。

   そんな感じで知らぬ間にケンは、マジに宙に浮いていた。サイコキネシスで自分の身体を浮かせているのだろうか。わけがわからない。わけがわからないけれど、なんかケンは泣きそうだった。

   椅子ごと床に倒されているナオトをドローンのカメラから見ているように俯瞰した。気を失っているのか、眠ってるのかわからないが、ナオトはぴくりとも動かない。

   そして、ケンは部屋のたぶん正面であろう天井近くまである大きなガラス戸に向かって、人差し指を突き立てながら「エクスプロージョン!」と声高に言う、自分の声を聞いた。なんじゃこれと思いながら。

   と同時に、正面の大きな磨りガラス戸は、爆発音とともに一気に吹っ飛んだ。

   わけがわからない。やっているケン自身が吹っ飛んだガラス戸を眺めて呆気にとられ茫然としていた。そして未だに宙に浮いている自分に、なるほど夢を見ているわけかと思った。

   夢を見ていると自覚している、つまりこれが明晰夢というやつなんだなとケンは合点がいった。だが、そうだとしても、どこからが夢なのかよくわからない。

   ナオトとふたりして拉致られたのは、間違いなくリアルだったという思いは強い。八つ墓村の鬼気迫る、それでいておマヌケなコスプレのまま、ケンは拉致られたのだ。

   まあ、とりあえずいまは、そんな事を考えている場合じゃなかった。問題はナオトだった。ケン自身は発動した意識はないけれどシールドで爆風を避けられたようだが、椅子に縛り付けられたままのナオトは、横倒しのまま部屋の奥の方へと爆風で押しやられ移動していた。

   落ち着いて見てみると、やはりここはちょっと広めの町工場のようだった。大方、多額の負債を抱え、ついには工場閉鎖に追い込まれてしまった零細企業のひとつだったのかもしれない。

   ナオトは、AMADAのシャーリングの前に横になっていた。ケンは椅子に縛り付けられたままのナオトにツツーと浮遊したまま近づいていき、手を伸ばしたところで、テレキネシスだかサイコキネシスをまたぞろ発動したっぽい。

   なんとナオトがゆっくりと床から浮き上がり、頭からこちらへと起き上がってくると、静かに床に着地したのだった。

   ケンは明晰夢スゲーとか思いながら、自分も緑っぽい床にふわりと着地して、ナオトに声をかけた。

   すると、椅子にまだ縛り付けられたままのナオトは、よく見てみるとなぜなのかあの『エクソシスト』のリンダ・ブレアを意識したみたいな白いネグリジェのような衣装を身につけていて、それにブルネットだかブロンドだかの長い髪のヅラを被っていて、ゆっくりと首を左に回しはじめたかと思うと、あれよあれよと言う間にやすやすと真反対にまで回してしまい、頚椎がねじ切れる音が聞こえるような気がしたが、グルングルングルンと3回転させてから、はじめて気づいたみたいにケンを見つけると、「ヨオ!  ケン」といった。

   たしかにその声は、ケンの知っているナオトの声にちがいなかったし女装はしていているものの、なんとなくナオトっぽいところもあるにはあるので、ケンもナオトだと疑わなかったが、なんでまたエクソシストのコスプレをしているのか、いつナオトは着替えたのかというあまりにも不気味な疑問で頭が割れそうになった。

   ヤバイこのままじゃまた何か発動しないと、自分自身が爆発しそうだとケンは思って、咄嗟にさっきやったばかりの駅員さんがプラットホームで指差し確認しているみたいなジェスチャーと共に「エクスプロージョン!」と唱え、部屋の反対側の高いところにある窓に向けて、勢いよくパワーを放った。

   しかし。

   ははは。何も起こらない。
   もう一度。
「エクスプロージョン!」  

「アハハハ」という笑い声が上の方から聞こえ、ケンが見ると、天井を白いからGには見えないが、デカいGみたいなナオトもどきが、カサカサカサカサという感じで外の方へと這っていったかと思うと、すぐまたこちらへと戻ってきて「ケン、おまえには確かにエスパーとしての才能がある、だからさっきパイロキネシスを体験させてやったのさ。あの感覚忘れるなよ」

   はあ?   となってケンは思い切り脱力し、思わずすかしっぺがスーッと出た。

   つまり、なに?   さっきまでのは全部アイツがやってたってこと?   「てかさー、オタク誰よ?」

   カサカサカサカサとそいつは、猛スピードで天井を這い回る這い回る這い回る。見ているケンの方が目が回ってきた。吐き気がする。

   そして。

   気が狂いそうだとケンは独りごちた。 
「もう勘弁してくれよ、誰なん?   オタク、ナオトはどこよ?」









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