17 / 73
ハンスのレクチャー
しおりを挟む
ホテルの部屋からは、そそり立つキリストの巨大な像が手を広げているであろうコルコバードの丘が見えた。ケンはソファから立ち上がって窓辺に向かい、ベランダへと出た。いや、バルコニーか?
かなりの距離があり小さいけれど、あの巨大なキリスト像がくっきりと見えた。まさにコルコバードに違いなかった。触れるほど間近に見えるわけではないが、距離によって縮小されたキリスト像は、逆にケンには強烈なリアルさを感じさせるのだった。
実はコルコバードのキリスト像と、アントニオ・ガウディのサクラダファミリアは死ぬまでに一度でいいから見てみたいとケンは思っていたのだ。
その一つめの夢が、あっさりともう叶いそうだった。それに、それどころの話じゃなかった。あのテレポーテーションのスキルを身につけたら、瞬時に世界中のどこへでも好きな時に移動できるのだ。
あれは、飛ぶという感じじゃなくて、文字通り瞬間移動だなとケンは、一瞬すぎてわけわからないなりに、このホテルの一室へと移動してきたあの時の感覚が蘇ってきたように感じ、ぶるっと身震いしてしまった。
周りの景色が一瞬にして変わってしまう様子は、TVでザッピングしている感じに近いものがあるかもしれないとケンは思った。
しかし、この部屋はいったい? 部屋のカードキーらしきものがテーブルに置いてあるし、闇雲に空いてる部屋に侵入したわけではないらしい。
ケンは、もう驚かなかった。リアルにテレポーテーションを経験したのだ。窓から望むキリスト像のある絶景もリアルだ。ハリボテやら書割りじゃない。
つまり、さっきのハンスだっけか、ここを根城にしているわけもないが、ここからケンを連れに日本へとジャンプしたか、あるいは、彼は時間を遡行してホテルの部屋をとった。そういうことであるにちがいなかった。
それにしてもとケンはかなり高級そうなスイートからの美しい眺めに、うっとりするばかりなのだった。しかし、つい30分ほど前にはヒトがこんなに自由であるとは思ってもみなかった。
他の子はどうなのか知らないが、少なくともケンは子どもの頃、空を飛べるとか妖精がいるとか、魔法が使えるようになるのは当たり前のように思っていた。
その夢のある想像力を、一枚また一枚と大人になるに従い引き剥がされていくのだ。ヒトは空を飛べるわけもないし、妖精がいるわけもない、スプーン曲げはイカサマだし、異世界転生なんてトンデモ過ぎて話しにもならない。
それが常識というものらしい。でも、世界の、そして全人類の英知が生み出した珠玉の科学の常識も、ひとつのウイルスの存在によりいともたやすく覆されてしまった。
そのことを考えると、今までに常識とされていた絶対的なものも、絶対ではないことがわかってきたわけだ。なので、ヒトはその術を知らないだけであり、実は空を飛べるかもしれないし、妖精は見えないだけでそこら中を飛び回っているかもしれない。それにスプーンやフォークを曲げるなんて実は簡単すぎるかもしれないのだし、異世界やら並行世界も無限にあるのかもしれない。
そんなことを考えていると、何か気配を感じケンは部屋の中を振り返った。するとハンスがソファにゆったりと座っているのだった。
「お待たせ。それじゃ、ちょっとしたレクチャーはじめましょうかね」そう言ってハンスはケンを手招きした。
「レクチャーって、つまり」
「そう。このスキルの話。でもその前に肝心なことを話さなきゃならない。おれらは、いわゆる超能力、普通の人間が持つと言われている知覚以外にテレパシー、サイコキネシス、テレポーテーションといった能力を持つ者をエスパーと呼んでいるけど、それらの特別な能力は使うとエスパーには、わかってしまうもんなんだよ」
「あー。なんとなくわかるような気がします」とケン。
「目には見えないんだけどね、もう少し科学が進歩したら、科学的にも証明されるはず。まあ、とにかく今はまだ常識から逸脱した荒唐無稽なトンデモ話に思われるのがオチだけれど、ヒトには最初からそういう能力が備わっているんだよ。でも、勉強にしてもスポーツにしても、なんでもそうでしょ、その能力を伸ばしていくためには訓練しなくてはならない」
「訓練すれば、誰でもできる?」
「ある程度はね。でももちろん、誰もがオリンピックで金メダル取れるわけじゃないし、ノーベル賞も誰でも取れるわけもない。どんな人にも得手不得手があるわけで、得意なこと、好きなことを伸ばしていけばいいと思うんだよね」
「なるなる。サッカーの好きな人は、その技を磨いて伸ばしていげばいいのだし、別にノーベル賞狙わなくていい」
「ひとつのことでも極めたら、すごいことだからね。そんな風に超能力にも適正があって、ケンくんにはそれがあるとわかったんだよね。実は、なんていうの緊急事態的な非日常なことが起こって、危険に晒されるとヒトって素の潜在能力が顕現しパワーを発動したりするわけだよ。だから、あんな拉致みたいな乱暴なことしたんだけどね。いや、あの時は済まない事をしたね、いまさらだけど謝ります」
「はあ。そういうことだったんですね。それは、まあ、いいんですけど、ナオトはどうなりましたかね?」
「それなんやけど、ナオトくんはまあ、エスパー的には適正なかったかな。ハハハ」
「え? それで?」
「彼はまあ、ケンくんの巻き添えみたいなことやったんやけど、彼本人は、やりたいということなので彼には、別のカリキュラムを組みました」
「別のカリキュラム?」
「せやで。うちらとしても初めての試みなんやけどね、ハハハ」
かなりの距離があり小さいけれど、あの巨大なキリスト像がくっきりと見えた。まさにコルコバードに違いなかった。触れるほど間近に見えるわけではないが、距離によって縮小されたキリスト像は、逆にケンには強烈なリアルさを感じさせるのだった。
実はコルコバードのキリスト像と、アントニオ・ガウディのサクラダファミリアは死ぬまでに一度でいいから見てみたいとケンは思っていたのだ。
その一つめの夢が、あっさりともう叶いそうだった。それに、それどころの話じゃなかった。あのテレポーテーションのスキルを身につけたら、瞬時に世界中のどこへでも好きな時に移動できるのだ。
あれは、飛ぶという感じじゃなくて、文字通り瞬間移動だなとケンは、一瞬すぎてわけわからないなりに、このホテルの一室へと移動してきたあの時の感覚が蘇ってきたように感じ、ぶるっと身震いしてしまった。
周りの景色が一瞬にして変わってしまう様子は、TVでザッピングしている感じに近いものがあるかもしれないとケンは思った。
しかし、この部屋はいったい? 部屋のカードキーらしきものがテーブルに置いてあるし、闇雲に空いてる部屋に侵入したわけではないらしい。
ケンは、もう驚かなかった。リアルにテレポーテーションを経験したのだ。窓から望むキリスト像のある絶景もリアルだ。ハリボテやら書割りじゃない。
つまり、さっきのハンスだっけか、ここを根城にしているわけもないが、ここからケンを連れに日本へとジャンプしたか、あるいは、彼は時間を遡行してホテルの部屋をとった。そういうことであるにちがいなかった。
それにしてもとケンはかなり高級そうなスイートからの美しい眺めに、うっとりするばかりなのだった。しかし、つい30分ほど前にはヒトがこんなに自由であるとは思ってもみなかった。
他の子はどうなのか知らないが、少なくともケンは子どもの頃、空を飛べるとか妖精がいるとか、魔法が使えるようになるのは当たり前のように思っていた。
その夢のある想像力を、一枚また一枚と大人になるに従い引き剥がされていくのだ。ヒトは空を飛べるわけもないし、妖精がいるわけもない、スプーン曲げはイカサマだし、異世界転生なんてトンデモ過ぎて話しにもならない。
それが常識というものらしい。でも、世界の、そして全人類の英知が生み出した珠玉の科学の常識も、ひとつのウイルスの存在によりいともたやすく覆されてしまった。
そのことを考えると、今までに常識とされていた絶対的なものも、絶対ではないことがわかってきたわけだ。なので、ヒトはその術を知らないだけであり、実は空を飛べるかもしれないし、妖精は見えないだけでそこら中を飛び回っているかもしれない。それにスプーンやフォークを曲げるなんて実は簡単すぎるかもしれないのだし、異世界やら並行世界も無限にあるのかもしれない。
そんなことを考えていると、何か気配を感じケンは部屋の中を振り返った。するとハンスがソファにゆったりと座っているのだった。
「お待たせ。それじゃ、ちょっとしたレクチャーはじめましょうかね」そう言ってハンスはケンを手招きした。
「レクチャーって、つまり」
「そう。このスキルの話。でもその前に肝心なことを話さなきゃならない。おれらは、いわゆる超能力、普通の人間が持つと言われている知覚以外にテレパシー、サイコキネシス、テレポーテーションといった能力を持つ者をエスパーと呼んでいるけど、それらの特別な能力は使うとエスパーには、わかってしまうもんなんだよ」
「あー。なんとなくわかるような気がします」とケン。
「目には見えないんだけどね、もう少し科学が進歩したら、科学的にも証明されるはず。まあ、とにかく今はまだ常識から逸脱した荒唐無稽なトンデモ話に思われるのがオチだけれど、ヒトには最初からそういう能力が備わっているんだよ。でも、勉強にしてもスポーツにしても、なんでもそうでしょ、その能力を伸ばしていくためには訓練しなくてはならない」
「訓練すれば、誰でもできる?」
「ある程度はね。でももちろん、誰もがオリンピックで金メダル取れるわけじゃないし、ノーベル賞も誰でも取れるわけもない。どんな人にも得手不得手があるわけで、得意なこと、好きなことを伸ばしていけばいいと思うんだよね」
「なるなる。サッカーの好きな人は、その技を磨いて伸ばしていげばいいのだし、別にノーベル賞狙わなくていい」
「ひとつのことでも極めたら、すごいことだからね。そんな風に超能力にも適正があって、ケンくんにはそれがあるとわかったんだよね。実は、なんていうの緊急事態的な非日常なことが起こって、危険に晒されるとヒトって素の潜在能力が顕現しパワーを発動したりするわけだよ。だから、あんな拉致みたいな乱暴なことしたんだけどね。いや、あの時は済まない事をしたね、いまさらだけど謝ります」
「はあ。そういうことだったんですね。それは、まあ、いいんですけど、ナオトはどうなりましたかね?」
「それなんやけど、ナオトくんはまあ、エスパー的には適正なかったかな。ハハハ」
「え? それで?」
「彼はまあ、ケンくんの巻き添えみたいなことやったんやけど、彼本人は、やりたいということなので彼には、別のカリキュラムを組みました」
「別のカリキュラム?」
「せやで。うちらとしても初めての試みなんやけどね、ハハハ」
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛しているなら拘束してほしい
守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
屈辱と愛情
守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる