クリシェ

トリヤマケイ

文字の大きさ
41 / 73
魔王編

ファルコネッリ御一行様

しおりを挟む




 さてさて。世界のことは世界に任せておいて、自分たちの出来ることをしようというわけで、こちらではたったいま切り倒した巨木から切り出しました、みたいな風の丸いテーブルで円卓会議が行われている。

    何の加工もしていない丸太の切り口に美しい円形の縞模様が広がっている。この年輪をいくつあるのか数えるとその樹齢がわかるらしい。樹齢百年ならば、百の輪っかがあるわけだ。

 今日の議題は、次のミッションをどんなシナリオにしたいか。ナビの画面にはそう出ている。

 そんなこと知ったこっちゃないが、自分的には、プリンセス救出劇とかがいいんじゃないかなと思ってるとファルコネッリ。

 落武者サイボーグのカッシーニ・ジェラルド・ハースがそれに応えて、

「まーわるくないけどな。ところで世界征服を目論む輩が南の丘陵地帯に都市を築こうと着々と準備を進めているようだぞ?」

 姿が半透明のフーマ・マキアスが反応する。

「ああ、風の噂で聞いた。召喚されたヤツがなぜかネクロマンサーのスキル持ちで、アルケミストとつるんで世界征服を虎視眈眈と狙っているらしい。秘密裡にやってはいるが、その計画を人間の世界で洩らしているやつがいる。ま、秘密はどこから漏洩するか、わからんもんだな」

「ふーん」とファルコネッリ。「で、どうするよ、まだまだ先の話だろ、それ」

「まあな、すぐに世界征服できるわけもないが、早めに叩き潰しておくに越したことはない」と落武者カッシー。

「それよりさ、プリンセスだけど」と話に割り込んできたのは、カサブランカの大輪の花でデコルテと下半身を隠し女優帽を被ったアンドロイドのメグ・グレイス。

「もちろんうちが、プリンセス役よね?」

 メグの頭の上にゆらゆら浮いている電飾プレートにはプリンセスの文字。

「ワーオ、ゴブリンのお姫様や~」と落武者カッシー。

「誰がゴブリンのお姫様じゃい!」とすぐさま念話で、お約束のツッコミを入れるメグ。

 実は、つい最近までなんやかやと争い事が続いていたのに、ここにきて夕方の凪いだ海のように静かでのんびりとした牧歌的な日々が身体をなまらせ、思考を腐らせ、辟易していたので実戦を兼ねての演習を周辺にいくつかあるゴブリンの集落というか村をターゲットにして行っていた。

 ただ、そのゴブリンは突然変異した亜種らしく、ごく普通のゴブリンに比べ身体がハンパなくデカく、加えて凶暴だった。それに、ゴブリンの王はかなりの魔術の手練れだった。

 なので、ちょっとでも気をぬくと痛い目にあう。山岳地帯のさほど高くない山腹にある洞穴を住まいにしたり、いたるところにゴブリンはいたが、そのお陰でかなりの経験値を稼ぐことが出来、ステータスアップしたことは否めない。



 ファルコネッリと落武者カッシーが雄叫びと共に鬨の声をあげる。

 時代錯誤はなはだしいが、カッシーは元お侍さんなので、イクサの前には士気を鼓舞するためにエイエイオーがあたりまえなのだ。

 ファルコネッリも異を唱えずにやっているが、彼の場合アルファベットのAAOに近い感じで発音していた。

「よーし、我らがプリンセスを奪還しにいくぞー!」

 プリンセスなんて実はいないんだけど、士気を高めモチベを上げるためには、シナリオが必要だった。

   確かに経験値が上がるというのは、うれしいことには違いないけれど、それは副産物的なものだ。

 火器をぶっ放して屍累累というのは、ゲーム内では、小気味よくてスカッとするが、実際ゴブリンの首を自分の手ではねるとなると、やはり気分のいいものではない。

 それは、夏場とかに出てくる最上級に嫌われているあの羽のあるGを踏み潰すのが快感などと絶対思わないのに似ている。

 殺らなければ殺られる、それ以上でもそれ以下でもない、行動心理はそれだけだった。

 今回の討伐は、ちょっと遠出して今までまだ行ったことのない、山あいにあるゴブリンの棲家を狙うことにした。

 途中の丘陵地帯で、クラス転移したらしきブレザーを着た集団を見かけたが、どうやら仲間割れしてヤンキー系と非ヤンキー系に二分してしまったらしい。笑えた。

 とりあえずゴブリンのいる目的地まで3日の旅程を組んだ。少し拓けたといっても大小さまざまな岩がある岩場を一日目の野営地とした。

 幅20メートルはあるだろうか、大岩がなぜかそこだけ砂地の部分に、少しだけ斜めに突き刺さるように横たわっている場所に4人は陣取った。

 夕食は、フーマが、かすみ網という仕掛けで昼間とった野鳥を焼き鳥にし、さらにカッシーが川で釣ってきた鮎に似た川魚も食べた。

 ファルコネッリが、焚き火を見ながらいった。

「ゴブリンを淡々と退治していくだけの奴らもいるみたいだけど、どうなんだろうね、オレはもうぶっちゃけ虚しいとか思っちゃうんだよ。確かに最底辺転生者のオレらには、さほど強くないゴブリンを倒すことで、死なずに経験値を上げることが出来て、そこそこ力やスキルを獲得できたのは、わかってるんだけどね」

「それはそう。だから、次の段階に進む時がきているということじゃないかな」と落武者カッシー。

 フーマも頷く。
「それは言えてる。ゴブリン退治じゃもう物足りなくなってるんだよね。何か次の目標、ミッションが俺たちには必要だね」

 ファルコネッリたちのテリトリーは、東の山岳地帯にあり、西に行くことは滅多にない。西は死霊の国に繋がっているという噂で、ゴブリンなど一切いなかった。

 なので、命がけで西に行くような理由がない限り、西に行こうとする者などいない。

「西にはさ、ゴブリンじゃない、わけのわからない魑魅魍魎が跋扈しているらしいけど、俺らはどうするよ?」そう言いながら、カッシーはふたりを見やる。

「風の精霊の話によると、西だけは別物らしい」とフーマ。

「別物?」ファルコネッリが聞き返す。

「何か、半端ない数の階層があるらしい。それに、その階層を縦と考えるとして、横には無数のパラレルワールドが広がっているという話だよ」

「なんじゃそれ」とファルコネッリ。

 超絶美女アンドロイドのメグが、アホ毛を気にしながら「それもこれも身の毛もよだつような超弩級の魔王の霊力らしいわよ。ま、触らぬ神に祟りなしってね、今のウチらじゃ到底太刀打ちできやしない」


 バチバチと焚き火が勢いよく爆ぜた。


しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

彼の言いなりになってしまう私

守 秀斗
恋愛
マンションで同棲している山野井恭子(26才)と辻村弘(26才)。でも、最近、恭子は弘がやたら過激な行為をしてくると感じているのだが……。

春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話

登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処理中です...