パサディナ空港で

＃１９ あなたのニセモノ

＊月＊日

   そう。それからあなたのニセモノを作ったわ。あなたと瓜二つのニセモノ。

   そんなの簡単に作れるものなのか？

   簡単よ。システムは、まあ想像つくけど、どうやってるか知らない。とにかくコピーしちゃうのよ。誰だって、電話が、その声のまま、相手に聴こえる仕組とか原理がどうなってるか知っていても、どうしてそれが可能なのかしらないでしょ？   糸電話ならともかくね。それといっしょよ。

   だから、最初あなたが来たとき、本物のあなただと思ってびっくりしたの。

   本物って？

   たぶん、永遠にあの鏡の迷路から抜け出せないと思う。

   で、おれは、どっちなんだろう？
   さあ……たぶん……


   ていうか、本物を閉じ込めてしまったのは、なぜ？

   なぜっていわれても困っちゃうんだけど、生身のヒトなんてウザいだけでしょ。
女ならば、やれ生理だ、妊娠だとか騒いで面倒くさすぎる。男は男で、頑強そうに見えて、実は女よりもぜんぜん脆弱。殊に精神面は、弱すぎてお話にならない。そんな、ポンコツいらないでしょ？
   だから、コピーで充分ていうか、コピーがいいの。だめになっても、いくらでもコピーできるんだから。たとえば、自動車事故に遭っても

   そのきみのいうコピーって、細胞の持つ遺伝子から作り出した、ほらなんだっけ、羊のドリーは憶えてるんだけど、あれのことだろ？

   そうじゃない。体細胞クローンなんかじゃないの。いうなれば影というか、分身ね。
ドッペルゲンガーみたいなもの？