パサディナ空港で

トリヤマケイ

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#76 アランフェス協奏曲

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*月*日

   視線を感じた。

   ねばりつくような感じで、ずっとまとわりついてくる。バスを待つ列に並んでいる時も本屋で立ち読みしている時にもそれは続いていた。

   気のせいかと思っていたのだが、そうではないようで、振り返ってみるとその嫌な感じは一瞬消えるのだが、また暫くすると、見つめられている気がするのだ。

   もしかしたら、昨夜の酒がまだ残っているのかもなんて思ってみたりした。そんなバカな事はないとわかってはいるのだけれど、自分が予想できるある答えに逢着したくはないから、なんだかんだ別な理由を考えている。

   例えばマリファナとかやると虫が身体中を這いまわるような、幻触といわれる感覚を味わうなんてことがあるとか聞いた。

   聞いた話なのでホントかウソかはわからない。あと下肢の上を虫が這いまわったり、蟻走感とかいうのを感じたりする、むずむず足症候群というのがあるらしい。

   他に可能性としては統合失調症、或いは更年期障害も考えられるようだ。自分の場合やはり統合失調症くさいw

   話が、いつの間にか視線から蟻走感になってるけど、ねばりつくような視線を感じるのも、肌の上を蟻が這いまわるような幻触もなんらかの病いの一環ではないのかと思っているわけです。

   でも、自分が一番気にしているというか、怖れている理由をぶっちゃけるなら、いわゆるオカルト系の話になってしまう。

   なので、笑われてしまうかもしれないんだけど、みんなも一度くらいは信じられない怖い思いをしたことがあると思う。

   まあ、相手はヒトではないわけだけれど、その因果関係さえわかるなら対策も立てられるわけで、実はかなりスッキリした話であるはずなのだと思う。

   つまり、触らぬ神に祟りなしというのは真理なんだと思う。触れてはいけないものに触れてしまったのだから、それが祟るわけであり、触れなければ何も起こるわけもない。

   いわゆる人の身体に現象として起こるさまざまな病気が、何らかのサインであるように、身の周りに起こる不可思議な出来事も、何かを訴えているにちがいないと思っている。

   実のところ、そんな考えは退けてしまいたい。臭いものには蓋をしろ。しかし、いつまでも逃げてはいられないのだ。いつかは必ずやツケを支払わなければならない。

   そのいつかは人それぞれなわけだが自分の場合は、ついに来たかという感じだ。つまり幻触も粘りつくような視線も何かを伝えようとする意思をどうしても、そこに感じとってしまうのだ。

   まあ、所詮は統合失調症だからなと笑ってほしい。そういえば今これを書きながらジム・ホールのアランフェスを聴いてるんだけれど泣きたいくらいだよ。

   嘔吐のおっちゃんが言ってたけど絶えず流転する悲喜こもごもの人生の背景で、音楽は常に美しく鳴っているね。
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