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#113 メシア降臨
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*月*日
その日は誰もいないからという事でトオルの住むマンションに行くことになっていた。
どうやら駒沢公園の近くらしい。するとトオルからLINEが来て別な場所を指定してきた。
嘘をつくようなヤツではなかったが嫌な予感がした。そして現場に着くと確かにトオルはそこにいた、アスファルトに横たわって。
何やってんだよとトオルに訊くと「いや、おまえらもやってみろよ。こうやってねっころがって空見上げてると雲が流れていくのがよくわかるし地球って本当に回転してるんだなって思うぞ」としたり顔で言った。
しかし、この場所でなぜ? 渋谷スクランブル交差点のど真ん中だった。
トオルの胸ポケットからはスマホがのぞいていた。どうやら動画を撮っているらしい。YouTuberかよ。命がけである。ていうか犯罪ギリギリ。
「で、今日の撮れ高はどう?」
「後のお楽しみw」
渋谷スクランブル交差点で寝転がってミニスカ盗撮という三面記事が脳裏をよぎった。
しかし、当然そんな危ないヤツの近くに誰もよっくるはずもない。ましてやミニスカの女子ならばなおさらのこと。
トオルもまるっきりのバカではないだろうから、そんな事は百も承知で別な目的があるのだろうと思っていた。
その通りなのだった。小雪の散らつく大晦日のこの夜に、スクランブル交差点を渡りかけていると、トオルの頭に神の啓示のような、それがどんなものなのか、知るわけもないがとにかくトオルの伽藍堂みたいな頭のお鉢の中で、荘厳な何者かの声が響き渡ったのだった。
トオルはいきなりスクランブルのど真ん中で立ち止り、というか金縛りにあったように直立不動の姿勢のまま、しばらくは動くことが叶わなかった。
声が響き終わり呪縛が解かれれるように身動きできるようになったが、ぶっちゃけトオルはその時、まばゆい閃光の真っ只中にあり、これは間違いなく異世界転生のフローじゃんと思って、泣きそうになった。
そして、ほんとうに一瞬だけどこかまったく知らない地球でもなく太陽系でもない宇宙の最果てのどこかの銀河の中のひとつの星に転生し、地球時間で瞬きする間の一瞬で100年の一生を終えて再び地球の北半球のJapanの渋谷のスクランブルのど真ん中に回帰したのだった。
だから、誰も信じてくれるわけもないのだけれど、あまりにも懐かしい我が地球のぬくもりを感じたくて、大の字で寝転んでいたのだった。
「トオル、なんか目がキラキラしてんけど? おまえ、そんなにどスケベだったけか?」
「バカやろ、キミたちもこうやって寝っ転がって、星を見てみなさい。心が洗われるようだから」
「は? トオル、渋谷で星なんか見えるかよ?」
「うっセー、心眼だよ、心眼。憐れな仔羊たちよ、心の眼で見るのだよ」
「わかった、わかった。でもそろそろヤバいぞ、トオル、おまわりがこっち見てる」
そういって、友人のひとりであるジローがトオルに手を伸ばしたその時
「トオルはふんわりと渋谷の暗い矩形に切り取られた夜空に舞い上がり、空中で静止したまま、手を広げ十字架のようになって燦然と輝きはじめた。
誰かが「メシア降臨だー!」と叫ぶと、一斉にメシア! メシア! メシア! と夜空を揺るがすほどの大合唱になった。
ていうのは、どうよ?」
「はいはい。もうやってらんねー。おれらはもう帰っから」とジローたちは、駅の方へと歩きだした。
「悪くないと思うんだけど」
その背中に向けて呟くようにトオルはいった。
眼の端に交番の巡査が向かってくるのが見えた。
その日は誰もいないからという事でトオルの住むマンションに行くことになっていた。
どうやら駒沢公園の近くらしい。するとトオルからLINEが来て別な場所を指定してきた。
嘘をつくようなヤツではなかったが嫌な予感がした。そして現場に着くと確かにトオルはそこにいた、アスファルトに横たわって。
何やってんだよとトオルに訊くと「いや、おまえらもやってみろよ。こうやってねっころがって空見上げてると雲が流れていくのがよくわかるし地球って本当に回転してるんだなって思うぞ」としたり顔で言った。
しかし、この場所でなぜ? 渋谷スクランブル交差点のど真ん中だった。
トオルの胸ポケットからはスマホがのぞいていた。どうやら動画を撮っているらしい。YouTuberかよ。命がけである。ていうか犯罪ギリギリ。
「で、今日の撮れ高はどう?」
「後のお楽しみw」
渋谷スクランブル交差点で寝転がってミニスカ盗撮という三面記事が脳裏をよぎった。
しかし、当然そんな危ないヤツの近くに誰もよっくるはずもない。ましてやミニスカの女子ならばなおさらのこと。
トオルもまるっきりのバカではないだろうから、そんな事は百も承知で別な目的があるのだろうと思っていた。
その通りなのだった。小雪の散らつく大晦日のこの夜に、スクランブル交差点を渡りかけていると、トオルの頭に神の啓示のような、それがどんなものなのか、知るわけもないがとにかくトオルの伽藍堂みたいな頭のお鉢の中で、荘厳な何者かの声が響き渡ったのだった。
トオルはいきなりスクランブルのど真ん中で立ち止り、というか金縛りにあったように直立不動の姿勢のまま、しばらくは動くことが叶わなかった。
声が響き終わり呪縛が解かれれるように身動きできるようになったが、ぶっちゃけトオルはその時、まばゆい閃光の真っ只中にあり、これは間違いなく異世界転生のフローじゃんと思って、泣きそうになった。
そして、ほんとうに一瞬だけどこかまったく知らない地球でもなく太陽系でもない宇宙の最果てのどこかの銀河の中のひとつの星に転生し、地球時間で瞬きする間の一瞬で100年の一生を終えて再び地球の北半球のJapanの渋谷のスクランブルのど真ん中に回帰したのだった。
だから、誰も信じてくれるわけもないのだけれど、あまりにも懐かしい我が地球のぬくもりを感じたくて、大の字で寝転んでいたのだった。
「トオル、なんか目がキラキラしてんけど? おまえ、そんなにどスケベだったけか?」
「バカやろ、キミたちもこうやって寝っ転がって、星を見てみなさい。心が洗われるようだから」
「は? トオル、渋谷で星なんか見えるかよ?」
「うっセー、心眼だよ、心眼。憐れな仔羊たちよ、心の眼で見るのだよ」
「わかった、わかった。でもそろそろヤバいぞ、トオル、おまわりがこっち見てる」
そういって、友人のひとりであるジローがトオルに手を伸ばしたその時
「トオルはふんわりと渋谷の暗い矩形に切り取られた夜空に舞い上がり、空中で静止したまま、手を広げ十字架のようになって燦然と輝きはじめた。
誰かが「メシア降臨だー!」と叫ぶと、一斉にメシア! メシア! メシア! と夜空を揺るがすほどの大合唱になった。
ていうのは、どうよ?」
「はいはい。もうやってらんねー。おれらはもう帰っから」とジローたちは、駅の方へと歩きだした。
「悪くないと思うんだけど」
その背中に向けて呟くようにトオルはいった。
眼の端に交番の巡査が向かってくるのが見えた。
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