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#115 ザバン、ポルガトに出会うの巻
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ザバンとポルガトは、友達がいなかった。
しかし、それは今日まで運悪くなのか運良くなのかもしれないけれど、ピントくるようなヤツに出会えていないだけなのだと考えていた。
なので、いつか気の合う、それも大親友となる人物が必ず現われるはずだと、ふたりは考えていた。
ある日、ザバンは鈴を頭からいくつも垂らした危ないおじさんと角のタバコ屋さんのところですれ違った。
鈴は、おっちゃんのドレッドにした髪の束のひとつひとつに付けられていて、そのピンクや赤や金銀の大小の鈴は、おっちゃんが歩くたびにえもいわれぬ美しい音を響かせるのだった。
ザバンが、ポカンと口を開けたまま、おっちゃんさんを見ていると、ザバンをからかうように体を揺らし、おっちゃんは鈴をシャンシャン鳴らした。
「どうだい、気に入ったかい?」
おっちゃんは、ザバンにそんな風に聞いてきた。やけにフレンドリーなオッさんやなぁとザバンは思ったが、いやな感じはしなかった。
「なんで、またそんなに鈴付けてるんです?」
「いや、鈴なりってゆうやろ? あれ、いっぺんやってみたかったんや」
たしかに、たくさん一箇所にぶら下がっていることや、果実なんかが木にいっぱい生っていることを鈴なりというけれど、おっちゃんの言うのはそれだけではなさそうだった。
「つまりな、にーちゃん。鈴生りと鈴鳴りを掛けてあるんやで、どや、すごいやろ?」
おっちゃんの、ドヤ顔にザバンは乾いた愛想笑いをするしかなかったが、そこらあたりから、何かおかしいなとザバンは感じてはいたのだ。
だが、構わずズンズン商店街を歩いていった。別に誰かと待ち合わせしているわけでもないし、急ぐ必要もないのだけれど、なぜかザバンはウキウキしていた。
ウキウキするなんて、そんな感情がまだ自分にもあるんだと思い新鮮な気がした。
しかし。
なぜまたウキウキなんてしているのだろうか。よくはわからないのだが、さらによくわからない、オマエらありえないだろ! 的なわけわからない時代考証がめちゃくちゃなモブキャラや往年のスターみたいなのが右往左往しながら、坂を下りてくる。
ゾンビランドサガや転スラ、ベルセルクなんかのアニメのキャラもいたし、チョンマゲもいたし、ブレジネフ書記長やブリジット・バルドーもマルコムXもいた。珍しいところでは、ヒクソン・グレイシーとか? あ、音速の貴公子もいた!
もちろん、コスプレだが。
そして、昔懐かしいオート三輪がトコトコと走ってくるのが見えた。トコトコという音はむろん、ザバンには聞こえてはいないが、トコトコというのがオート三輪にふさわしいオノマトペであるような気がして、そんな風に聞こえてしまっているのかもしれなかった。
駅からは、坂のてっぺんが見えないくらいなのだ。その商店街の坂の上から水色のオート三輪が、トコトコと走ってくるのだった。
ザバンは、その車種名さえ古すぎて咄嗟には思い出せなかったが、その圧倒的に個性的なフォルムを見間違えるはずもない。たしかオート三輪といったはずだった。
しかし、なぜまた1950年代とかに走っていたらしいオート三輪が現役で街中を走っているのだろうか。
ザバンの住む街の商店街は、昔からアーケードみたいなものはないが坂の上から私鉄の小さな駅までかなりの長い道のりがあった。
もしかしたならとザバンは思った。
もしかしたら、さっきの風鈴おっちゃんのせいで、次元の裂け目だか歪みが生じてそこから、過去のものやら有象無象のモブキャラが、ノイズのように生まれてきたのかもしれない。
そういえば、おっちゃんとの出会いのシーンで世界が一瞬揺らいだような気もする。ザバン自身の眩暈かもしれないが。
ま、とりま、まるでチンドンの団体様御一行みたいな華やかな賑やかさは、コミケに匹敵する。
やがて、オート三輪はトコトコととまりそうな速度でザバンに近づいてくると、プスンと言って停車した。
そして、車窓で爽やかな笑顔を浮かべながら若い男がザバンに会釈した。
「はじめまして、おれポルガト。よろしくネ」
しかし、それは今日まで運悪くなのか運良くなのかもしれないけれど、ピントくるようなヤツに出会えていないだけなのだと考えていた。
なので、いつか気の合う、それも大親友となる人物が必ず現われるはずだと、ふたりは考えていた。
ある日、ザバンは鈴を頭からいくつも垂らした危ないおじさんと角のタバコ屋さんのところですれ違った。
鈴は、おっちゃんのドレッドにした髪の束のひとつひとつに付けられていて、そのピンクや赤や金銀の大小の鈴は、おっちゃんが歩くたびにえもいわれぬ美しい音を響かせるのだった。
ザバンが、ポカンと口を開けたまま、おっちゃんさんを見ていると、ザバンをからかうように体を揺らし、おっちゃんは鈴をシャンシャン鳴らした。
「どうだい、気に入ったかい?」
おっちゃんは、ザバンにそんな風に聞いてきた。やけにフレンドリーなオッさんやなぁとザバンは思ったが、いやな感じはしなかった。
「なんで、またそんなに鈴付けてるんです?」
「いや、鈴なりってゆうやろ? あれ、いっぺんやってみたかったんや」
たしかに、たくさん一箇所にぶら下がっていることや、果実なんかが木にいっぱい生っていることを鈴なりというけれど、おっちゃんの言うのはそれだけではなさそうだった。
「つまりな、にーちゃん。鈴生りと鈴鳴りを掛けてあるんやで、どや、すごいやろ?」
おっちゃんの、ドヤ顔にザバンは乾いた愛想笑いをするしかなかったが、そこらあたりから、何かおかしいなとザバンは感じてはいたのだ。
だが、構わずズンズン商店街を歩いていった。別に誰かと待ち合わせしているわけでもないし、急ぐ必要もないのだけれど、なぜかザバンはウキウキしていた。
ウキウキするなんて、そんな感情がまだ自分にもあるんだと思い新鮮な気がした。
しかし。
なぜまたウキウキなんてしているのだろうか。よくはわからないのだが、さらによくわからない、オマエらありえないだろ! 的なわけわからない時代考証がめちゃくちゃなモブキャラや往年のスターみたいなのが右往左往しながら、坂を下りてくる。
ゾンビランドサガや転スラ、ベルセルクなんかのアニメのキャラもいたし、チョンマゲもいたし、ブレジネフ書記長やブリジット・バルドーもマルコムXもいた。珍しいところでは、ヒクソン・グレイシーとか? あ、音速の貴公子もいた!
もちろん、コスプレだが。
そして、昔懐かしいオート三輪がトコトコと走ってくるのが見えた。トコトコという音はむろん、ザバンには聞こえてはいないが、トコトコというのがオート三輪にふさわしいオノマトペであるような気がして、そんな風に聞こえてしまっているのかもしれなかった。
駅からは、坂のてっぺんが見えないくらいなのだ。その商店街の坂の上から水色のオート三輪が、トコトコと走ってくるのだった。
ザバンは、その車種名さえ古すぎて咄嗟には思い出せなかったが、その圧倒的に個性的なフォルムを見間違えるはずもない。たしかオート三輪といったはずだった。
しかし、なぜまた1950年代とかに走っていたらしいオート三輪が現役で街中を走っているのだろうか。
ザバンの住む街の商店街は、昔からアーケードみたいなものはないが坂の上から私鉄の小さな駅までかなりの長い道のりがあった。
もしかしたならとザバンは思った。
もしかしたら、さっきの風鈴おっちゃんのせいで、次元の裂け目だか歪みが生じてそこから、過去のものやら有象無象のモブキャラが、ノイズのように生まれてきたのかもしれない。
そういえば、おっちゃんとの出会いのシーンで世界が一瞬揺らいだような気もする。ザバン自身の眩暈かもしれないが。
ま、とりま、まるでチンドンの団体様御一行みたいな華やかな賑やかさは、コミケに匹敵する。
やがて、オート三輪はトコトコととまりそうな速度でザバンに近づいてくると、プスンと言って停車した。
そして、車窓で爽やかな笑顔を浮かべながら若い男がザバンに会釈した。
「はじめまして、おれポルガト。よろしくネ」
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