153 / 222
#152 言うことを聞かないのなら、ぶっ殺せ!
しおりを挟む
*月*日
おそらく、どんな文豪であっても完璧な小説というものは、存在しないし、存在してはならないと思うんですね。それが、尺度となってしまうからですし、ものの捉え方、考え方、表し方、それらを限定してしまうことこそ、最も恐れなければならないことだと思います。
ちょっと古いですが2011年の中学入試問題として、竹田青嗣『中学生からの哲学「超」入門-自分の意志を持つということ』 筑摩書房から引用し、出題されたものを読みました。
それによると、互に批評しあうということは、自己ルールを交換しあうことだというんですね。自己ルールというのは、「良い・悪い」と「美醜」というふたつの価値感で、それらは、高校生くらいまでに形成されるというのです。
で、批評し合うことで、互いに自分の眼鏡のくもりや、歪み、色のつき具合なんかを初めて認識する。そして、それを微調整していくのだ、みたいなことが書いてある。
そして、設問は、なにかを批評し合うことによって、自分の偏りであるとか、傾向みたいなものがわかったとき、どうしたらいいのか、ということでした。それを筆者の考えをもとに答えを導き出しなさい。
そんな設問でした。
しかし、どうも誘導尋問のような気もしないではないのですが、これはテストですから、頭のいい子は、こういう答えを望んでいるのだろう、となります。
自分なりの考えがあり、ちょっと異議を唱えたくとも、減点の対象になってはたまりませんから、模範回答を出して、それはむろんひっこめる。
しかし、まあ人格形成の大切な時期ですから、あまりにも偏りがあり過ぎると判断した際には、微調整なりをしてゆくべきなのでしょう。
それは人として生きてゆくための、いわばグローバルスタンダードみたいなもので、それを基準にすればいいのだなと表面上は、合わせてゆく。つまりは、協調性というものを学んでゆく。
これの模範回答は、むろん、偏りがあったならば、微調整をしてゆく、ということなのでしょうが、あくまでもそれは、表面上のことであって、つまりは、理解できない他者という存在も例外ではなく確かに在るという認識を持つこと、そして、そういった自分とは異なる人たちともなんとか折り合いをつけて共に生きてゆくために協調し合ってゆくことが大切であることを学ぶこと。
たとえば、食人族の子どもと自己ルールを交換しあった場合、ありえないと全否定するのではなく、それを理解すること。
他者を知ること。それは即ち、己を知ることにほかならない。
ということですね。
ですが、歯ではないのですから矯正ということはありえない。問題は、根っこなのです。
他人の自己ルールと自分のルールを照らし合わせてみて、自分の偏向やら問題点を知り……。
しかし。
たがいの自己ルールを突き合わせてみて、多くの人たちが、白といっているのだから、自分は黒と思っていても、白だと言おうということ。あるいは、擦り合わせて灰色という答えを出すべきだ、ということにもなりはしないでしょうか。
それはさておき、世の中には、自分と正反対な考えを持っている人などざらにいるわけです。
価値観は、ひとそれぞれ異なって当然なのですし、人と自分が異なる自己ルールを持っているとわかったとしても、そのことを認識することは重要ですが、擦り合わせやら微調整するのは非常に難しいことだと思うのです。
それほど乖離しているわけです。
大多数の自己ルールが自分と異なるのだから、自分の自己ルールは誤っていて、大多数の自己ルールが正しいのだとすると、長いものには巻かれろ式に微調整することが得策でしょうが、どちらが、正しい、誤っているというレベルではなく、異なる自己ルールを有する物同士が、個々人の自由を侵すことなく、どのようにしたら互いに快適に暮らしてゆけるのか、そのことこそを考えなければならない。
要は、微調整やら擦り合わせなどといった単純な話では済まされないことなのです。ですから、世の中から差別やら排他やら、さらには戦争が後を絶たないわけです。
微調整やら擦り合わせで済まないから、それでは民族ごと、国家ごと皆殺しにしてしまおう、という結局は、武力で解決することしか人類には出来なかったわけです。
言うことを聞かないのなら、ぶっ殺せ。ですね。今まではそうでした。これからは、どうなるだろうと思っていたのですが、ロシアのウクライナ侵攻を見ていると、まったく人類は進化していないことがよくわかります。
言うことを聞かないのなら、ぶっ殺せ。これは、石器時代の合言葉。ま、その頃は言語すらなかったでしょうけれど。しかし現代でもまったく同様、人類は野蛮のままなのですね。
おそらく、どんな文豪であっても完璧な小説というものは、存在しないし、存在してはならないと思うんですね。それが、尺度となってしまうからですし、ものの捉え方、考え方、表し方、それらを限定してしまうことこそ、最も恐れなければならないことだと思います。
ちょっと古いですが2011年の中学入試問題として、竹田青嗣『中学生からの哲学「超」入門-自分の意志を持つということ』 筑摩書房から引用し、出題されたものを読みました。
それによると、互に批評しあうということは、自己ルールを交換しあうことだというんですね。自己ルールというのは、「良い・悪い」と「美醜」というふたつの価値感で、それらは、高校生くらいまでに形成されるというのです。
で、批評し合うことで、互いに自分の眼鏡のくもりや、歪み、色のつき具合なんかを初めて認識する。そして、それを微調整していくのだ、みたいなことが書いてある。
そして、設問は、なにかを批評し合うことによって、自分の偏りであるとか、傾向みたいなものがわかったとき、どうしたらいいのか、ということでした。それを筆者の考えをもとに答えを導き出しなさい。
そんな設問でした。
しかし、どうも誘導尋問のような気もしないではないのですが、これはテストですから、頭のいい子は、こういう答えを望んでいるのだろう、となります。
自分なりの考えがあり、ちょっと異議を唱えたくとも、減点の対象になってはたまりませんから、模範回答を出して、それはむろんひっこめる。
しかし、まあ人格形成の大切な時期ですから、あまりにも偏りがあり過ぎると判断した際には、微調整なりをしてゆくべきなのでしょう。
それは人として生きてゆくための、いわばグローバルスタンダードみたいなもので、それを基準にすればいいのだなと表面上は、合わせてゆく。つまりは、協調性というものを学んでゆく。
これの模範回答は、むろん、偏りがあったならば、微調整をしてゆく、ということなのでしょうが、あくまでもそれは、表面上のことであって、つまりは、理解できない他者という存在も例外ではなく確かに在るという認識を持つこと、そして、そういった自分とは異なる人たちともなんとか折り合いをつけて共に生きてゆくために協調し合ってゆくことが大切であることを学ぶこと。
たとえば、食人族の子どもと自己ルールを交換しあった場合、ありえないと全否定するのではなく、それを理解すること。
他者を知ること。それは即ち、己を知ることにほかならない。
ということですね。
ですが、歯ではないのですから矯正ということはありえない。問題は、根っこなのです。
他人の自己ルールと自分のルールを照らし合わせてみて、自分の偏向やら問題点を知り……。
しかし。
たがいの自己ルールを突き合わせてみて、多くの人たちが、白といっているのだから、自分は黒と思っていても、白だと言おうということ。あるいは、擦り合わせて灰色という答えを出すべきだ、ということにもなりはしないでしょうか。
それはさておき、世の中には、自分と正反対な考えを持っている人などざらにいるわけです。
価値観は、ひとそれぞれ異なって当然なのですし、人と自分が異なる自己ルールを持っているとわかったとしても、そのことを認識することは重要ですが、擦り合わせやら微調整するのは非常に難しいことだと思うのです。
それほど乖離しているわけです。
大多数の自己ルールが自分と異なるのだから、自分の自己ルールは誤っていて、大多数の自己ルールが正しいのだとすると、長いものには巻かれろ式に微調整することが得策でしょうが、どちらが、正しい、誤っているというレベルではなく、異なる自己ルールを有する物同士が、個々人の自由を侵すことなく、どのようにしたら互いに快適に暮らしてゆけるのか、そのことこそを考えなければならない。
要は、微調整やら擦り合わせなどといった単純な話では済まされないことなのです。ですから、世の中から差別やら排他やら、さらには戦争が後を絶たないわけです。
微調整やら擦り合わせで済まないから、それでは民族ごと、国家ごと皆殺しにしてしまおう、という結局は、武力で解決することしか人類には出来なかったわけです。
言うことを聞かないのなら、ぶっ殺せ。ですね。今まではそうでした。これからは、どうなるだろうと思っていたのですが、ロシアのウクライナ侵攻を見ていると、まったく人類は進化していないことがよくわかります。
言うことを聞かないのなら、ぶっ殺せ。これは、石器時代の合言葉。ま、その頃は言語すらなかったでしょうけれど。しかし現代でもまったく同様、人類は野蛮のままなのですね。
0
あなたにおすすめの小説
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる