パサディナ空港で

トリヤマケイ

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#170 脱毛は正義

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 脱毛サロンにいった。










 職場ではもう脱毛していないのは俺だけだった。







 なので、ほんとうは痛いって聞いているし、なぜ毛があることがダサかったり、悪なのかまったくわからなかったが、ツルンツルンの集団の中にひとりだけ鬼瓦権造みたいなのがいるという、肩身が狭い状況に耐えられなくなったのだ。











 
 ピンサロにも行ったことはないオレは、サロンと名のつくものにはこれまでまったく縁はなかった。
 












 ネットで調べるのもめんどいし、いつも前を通る雑居ビルに脱毛サロンというネオンが光っていたのを思い出して、予約もせずにそこに突撃した。













 突撃がまさに自分の中では正しい表現なのだ。なぜまた激痛を我慢しながら毛根組織を破壊しなければならないのか。













 理不尽だと誰も思わないのだろうか。しかし、村八分にされるよりはマシなのだろう。













 とにかくオレはきょう、全身脱毛をしてもらい、ツルンツルンのピカピカ、小学生みたいな肌に戻るのだ。















 綺麗なおねいさんの笑顔に救われながら、オレは先ず脚を裏表やってもらった。痛くて涙が出たが、しばらくしたら何も感じなくなった。















   そして、Vゾーン。恥ずかしかったが仕方ないパンツを脱いだ。しかし、おねいさんの動きがピタリと止まった。














「あー、お客様。いわゆる包茎でいらっしゃいますね。では、脱毛の前に包茎手術を受けていただきます。じゃ、麻酔打ちますね」














「はー!!!  聞いてないんですけど?」













「すいません。私どももお客様がまさか包茎だとは知りませんでしたので」















「はー!!!!」













   蔓延する感染症と大災害、そしてロシアのウクライナ侵攻という信じられない事態こそ、現代を最も象徴しており、それらは、まさに何が起こっても不思議ではないという、新世界線そのものを反映している。














   ツルンツルンのピカピカ。パイパンで且つ包茎ではなくなったオレは、もう怖いものなしだった。矢でも鉄砲でも美女でも持って来い!















 その日からオレは正義のヒーローとなり世界を救っている。















   脱毛は正義だ!















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