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第六章 勝利を目指して
意外な来訪者
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「グレックさん!」
ミリアはそう言って、椅子から立ち上がると心配そうにグレックを見た。
アキがグレックを迎えに行ってから十数分後。
グレックは、右手首にテーピングをしてミリアたちの元へやって来た。
「ようミリア、アキ、それにエマも。わざわざありがとな」
いつものように愛想よくそう言うものの、グレックは手首を気にしつつそう言った。
そんなグレックに、エマは眉を顰めてこう尋ねる。
「それより、手……大丈夫なの」
エマのその問いに、グレックは複雑な表情をすると、少し考えるようにこう言った。
「そうだな……さっき会場にいる医者にテーピングはしてもらったんだが。どうだろう。こればっかりは、試合をしてみない事には……」
「ったく、あいつったら……」
憎々し気にそう言って、片掌に拳を打ち付けるエマを横に。
ミリアは、腑に落ちないとばかりに、ひとり、ぼそりとこう呟いた。
「グリフォードさん、何であんなこと……」
(グレックさんを怪我させたからって、自分が決勝戦へ行ける訳じゃないのに)
そう言って、悔しそうに下を向くミリアに。
エマは、苦々し気にこう言い放った。
「プライドよ」
「プライド、ですか」
「そう。自分が上に行けない事への腹いせに、元々気に入らなかったグレックにわざと怪我を負わせたの。グレックが優勝出来ないようにするためにね」
「そんな……」
そう言って、言葉を失うミリアに。
グレックは、平然とした様子で椅子に腰を下ろすと、会場の真ん中をじっと見つめながらこう言った。
「まあ、たとえそうだとしても。今回のことは、俺にも責任がある。試合の後に気を抜いていた俺のミスだ。反省してるよ」
そう言って薄く笑うと、ふつと黙り込むグレック。
アキは、そんな辛気臭い空気を払拭しようと思ったのだろう、グレックの前の椅子に腰を下ろすと後ろを向いてこう言った。
「なあ、グレック、次の対戦相手……」
「ああ、フェリクス・シールズだろ」
「対策とか、なんかある感じ?」
そのアキの問いに、グレックは苦笑気味にこう言った。
「対策も何も……俺はいつも通り自分に出来る事を精いっぱいやるだけだ」
暗に、「対策は無い」と言ったグレックは、エマから差し出されたエビピラフを、黙々と口に運ぶ。
その答えに、エマはグレックをまじまじ見つめると、意外そうににこう言った。
「でも、結構余裕そうに見えるけど?」
と、そんなエマの感想に。
グレックは、口をへの字に曲げると何とも言えない渋い顔をしつつこう言った。
「余裕なんかないさ。さっき、ロブナントとの試合を見せつけられて、内心、冷や冷やしているところだ」
そう言って、グレックはミリアの作ったムニエルにもかぶり付く。
それでも平然として見えるグレックに、ミリアは興味本位から尋ねて言った。
「そんなに凄いんですか。フェリクスさんって」
ミリアのその問いに。
グレックは、少し興奮気味にこう答える。
「技出しも早いし、動きも機敏だ。それに、ここぞという時の判断の素早さにも舌を巻くものがある。正直、勝てるかどうか……俺にも分からん」
そう言って、またピラフを口に運ぶグレックに。
ミリアは笑顔でこう言った。
「でも、何だか楽しそうですね、グレックさん」
「そうかな。でも……一度は手合わせしてみたいと思わせる男だよ、彼は」
そう言って、不敵な笑みを浮かべて試合会場中央を見つめるグレック。
と、その時――。
「それは……お褒め頂き光栄です。グレック・ワイズナーさん」
その声に、後ろを振り返るグレック。
「君は……」
そう言ったグレックの、その視線の先に映るのは。
栗色の髪を顎のラインで綺麗に切り揃えた一人の青年。
その姿に、ミリアは小さく声を上げる。
「あ……」
そう言って、思いもよらない来訪者に軽く目を見開くミリアに続くように。
やはり、驚きで瞳を大きく見開いたアキが、声を裏返しつつこう言った。
「え? フェリクス・シールズ……?」
そう言って、唖然とするアキを前に。
フェリクスはくすりと笑うと、グレックに向き直り、深い敬意を払うようにこう言った。
「初めまして。私は、フェリクス・シールズと言います。以後、お見知りおきを」
フェリクスはそう言って右手を胸に当てると、グレックに深々と頭を下げるのであった。
ミリアはそう言って、椅子から立ち上がると心配そうにグレックを見た。
アキがグレックを迎えに行ってから十数分後。
グレックは、右手首にテーピングをしてミリアたちの元へやって来た。
「ようミリア、アキ、それにエマも。わざわざありがとな」
いつものように愛想よくそう言うものの、グレックは手首を気にしつつそう言った。
そんなグレックに、エマは眉を顰めてこう尋ねる。
「それより、手……大丈夫なの」
エマのその問いに、グレックは複雑な表情をすると、少し考えるようにこう言った。
「そうだな……さっき会場にいる医者にテーピングはしてもらったんだが。どうだろう。こればっかりは、試合をしてみない事には……」
「ったく、あいつったら……」
憎々し気にそう言って、片掌に拳を打ち付けるエマを横に。
ミリアは、腑に落ちないとばかりに、ひとり、ぼそりとこう呟いた。
「グリフォードさん、何であんなこと……」
(グレックさんを怪我させたからって、自分が決勝戦へ行ける訳じゃないのに)
そう言って、悔しそうに下を向くミリアに。
エマは、苦々し気にこう言い放った。
「プライドよ」
「プライド、ですか」
「そう。自分が上に行けない事への腹いせに、元々気に入らなかったグレックにわざと怪我を負わせたの。グレックが優勝出来ないようにするためにね」
「そんな……」
そう言って、言葉を失うミリアに。
グレックは、平然とした様子で椅子に腰を下ろすと、会場の真ん中をじっと見つめながらこう言った。
「まあ、たとえそうだとしても。今回のことは、俺にも責任がある。試合の後に気を抜いていた俺のミスだ。反省してるよ」
そう言って薄く笑うと、ふつと黙り込むグレック。
アキは、そんな辛気臭い空気を払拭しようと思ったのだろう、グレックの前の椅子に腰を下ろすと後ろを向いてこう言った。
「なあ、グレック、次の対戦相手……」
「ああ、フェリクス・シールズだろ」
「対策とか、なんかある感じ?」
そのアキの問いに、グレックは苦笑気味にこう言った。
「対策も何も……俺はいつも通り自分に出来る事を精いっぱいやるだけだ」
暗に、「対策は無い」と言ったグレックは、エマから差し出されたエビピラフを、黙々と口に運ぶ。
その答えに、エマはグレックをまじまじ見つめると、意外そうににこう言った。
「でも、結構余裕そうに見えるけど?」
と、そんなエマの感想に。
グレックは、口をへの字に曲げると何とも言えない渋い顔をしつつこう言った。
「余裕なんかないさ。さっき、ロブナントとの試合を見せつけられて、内心、冷や冷やしているところだ」
そう言って、グレックはミリアの作ったムニエルにもかぶり付く。
それでも平然として見えるグレックに、ミリアは興味本位から尋ねて言った。
「そんなに凄いんですか。フェリクスさんって」
ミリアのその問いに。
グレックは、少し興奮気味にこう答える。
「技出しも早いし、動きも機敏だ。それに、ここぞという時の判断の素早さにも舌を巻くものがある。正直、勝てるかどうか……俺にも分からん」
そう言って、またピラフを口に運ぶグレックに。
ミリアは笑顔でこう言った。
「でも、何だか楽しそうですね、グレックさん」
「そうかな。でも……一度は手合わせしてみたいと思わせる男だよ、彼は」
そう言って、不敵な笑みを浮かべて試合会場中央を見つめるグレック。
と、その時――。
「それは……お褒め頂き光栄です。グレック・ワイズナーさん」
その声に、後ろを振り返るグレック。
「君は……」
そう言ったグレックの、その視線の先に映るのは。
栗色の髪を顎のラインで綺麗に切り揃えた一人の青年。
その姿に、ミリアは小さく声を上げる。
「あ……」
そう言って、思いもよらない来訪者に軽く目を見開くミリアに続くように。
やはり、驚きで瞳を大きく見開いたアキが、声を裏返しつつこう言った。
「え? フェリクス・シールズ……?」
そう言って、唖然とするアキを前に。
フェリクスはくすりと笑うと、グレックに向き直り、深い敬意を払うようにこう言った。
「初めまして。私は、フェリクス・シールズと言います。以後、お見知りおきを」
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