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愛国者ケマラ
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スーデル王国の王女ヴァラ。その給仕を務めるブラントだが、生まれは孤児院である。教会が管理している孤児院に捨てられていたところを発見され、十二になるまで育てられてきた。
十二歳の頃。奇遇にもお忍びで城下に訪れていたヴァラを助けた経験がある。どうもその時にヴァラ王女はブラントのことが気に入ったらしく、王族の権力丸出しのヴァラのわがままにより、それ以来宮廷で給仕として召抱えられることになる。
それから十年近く宮廷内で仕事をした今でこそ宮廷内の友人も増えたが、ブラントが本当に信頼しているのはやはり孤児院時代の友人である。
「おぉ、ブラント来てたみたいだな」
宮廷の南西部に位置する城下を一望できる小高い丘にてブラントが定期的に会っている気のおけない男友人ケマラである。ブラントより七歳年上で、幼い頃からいろんな意味で優秀な少年であり、そして愛国者だった。
五年前に隣国の産業国スルトリア共和国に留学しに行くまでは傭兵をしていたが、その留学も一年で終えて今は国防軍に所属し、かれこれ四年になる。
そんな多才な人間だが、どういうわけかブラントと会う時間に関しては何をおいても優先していた。
「国王陛下不在だが、宮廷内は変わりはないか?」
「あぁ、陛下がいないのをいいことに好き勝手する人が多くてかなわないよ。特にこの前の王女殿下ときたら……」
そう言ってブラントはヴァラ王女が料理の好き嫌いでぐずりだした話をする。それをケマラが静かに聞く。毎回このような感じである。会って特別な話をするというわけでもない、ブラントが愚痴をこぼしケマラがそれを黙って聞く。
「そろそろどこかの家に嫁いでもおかしくはない年齢だというのに全く落ち着きというものが身につくどころおか……。って、すまん。また私ばかり話してしまってるな」
「いやいや、ブラントの王女殿下の話は聞いてて飽きない。もっと話していてくれ」
ケマラはどうにも不思議な人物で、あまり自分のことを話したがらない。基本はブラントの宮廷内のことや王女の話をただ黙って聞き、口を開けばもっと話すよう促すだけだ。
「実は今回の国王陛下の隣国訪問だが、実は王女殿下の婿探しだという噂があってな」
「ほぉ……」
ブラントの言葉にケマラは興味ありげに相槌を打つ。
「もしそうなれば私もようやくお役御免になれるかもしれない」
「そうか、ならばそのときは……」
ケマラが右手で杯を傾ける仕草をしたものでブラントが吹き出す。
「いいじゃないか、まだ一緒に飲んだことなかっただろ?」
「ははは、酒保の管理はしているが味を知らなくてな。是非とも頼むよ」
十二歳の頃。奇遇にもお忍びで城下に訪れていたヴァラを助けた経験がある。どうもその時にヴァラ王女はブラントのことが気に入ったらしく、王族の権力丸出しのヴァラのわがままにより、それ以来宮廷で給仕として召抱えられることになる。
それから十年近く宮廷内で仕事をした今でこそ宮廷内の友人も増えたが、ブラントが本当に信頼しているのはやはり孤児院時代の友人である。
「おぉ、ブラント来てたみたいだな」
宮廷の南西部に位置する城下を一望できる小高い丘にてブラントが定期的に会っている気のおけない男友人ケマラである。ブラントより七歳年上で、幼い頃からいろんな意味で優秀な少年であり、そして愛国者だった。
五年前に隣国の産業国スルトリア共和国に留学しに行くまでは傭兵をしていたが、その留学も一年で終えて今は国防軍に所属し、かれこれ四年になる。
そんな多才な人間だが、どういうわけかブラントと会う時間に関しては何をおいても優先していた。
「国王陛下不在だが、宮廷内は変わりはないか?」
「あぁ、陛下がいないのをいいことに好き勝手する人が多くてかなわないよ。特にこの前の王女殿下ときたら……」
そう言ってブラントはヴァラ王女が料理の好き嫌いでぐずりだした話をする。それをケマラが静かに聞く。毎回このような感じである。会って特別な話をするというわけでもない、ブラントが愚痴をこぼしケマラがそれを黙って聞く。
「そろそろどこかの家に嫁いでもおかしくはない年齢だというのに全く落ち着きというものが身につくどころおか……。って、すまん。また私ばかり話してしまってるな」
「いやいや、ブラントの王女殿下の話は聞いてて飽きない。もっと話していてくれ」
ケマラはどうにも不思議な人物で、あまり自分のことを話したがらない。基本はブラントの宮廷内のことや王女の話をただ黙って聞き、口を開けばもっと話すよう促すだけだ。
「実は今回の国王陛下の隣国訪問だが、実は王女殿下の婿探しだという噂があってな」
「ほぉ……」
ブラントの言葉にケマラは興味ありげに相槌を打つ。
「もしそうなれば私もようやくお役御免になれるかもしれない」
「そうか、ならばそのときは……」
ケマラが右手で杯を傾ける仕草をしたものでブラントが吹き出す。
「いいじゃないか、まだ一緒に飲んだことなかっただろ?」
「ははは、酒保の管理はしているが味を知らなくてな。是非とも頼むよ」
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