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大団円はバッドエンドで
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ランヌと別れ、帰路に着くブラント。
彼の家はスルタン田舎町の郊外である。町へ歩いて出向くには時間がかかるため数日分の物資を買って帰る必要があるが、慣れれば道は平坦だし苦になるような道のりではないと最近思えてきた。
「帰った、ビビ」
「お帰り。遅かったね」
「町で古い友人と会った」
家に帰ると反乱後に結婚した妻のビビが出迎えの代わりに声をかけてくる。
「古い友人?私も知ってる人?」
「どうだろう、君は知らないかも」
「そう言われると気になる……」
ビビの追求に根負けし、ブラントは話すことにする。
「ランヌっていう名前の、君のお父さんの部下だった……いや、今も部下の人さ」
「ランヌ、あぁ知ってるわよ。なんかあの笑顔が胡散臭いおっさんね」
「胡散臭いって……君の部下のような立場でもあるはずだけれど」
偽名で名前が変わっても、彼女の高飛車なところは本当に変わっていない。まるで王女だった時のままだ。
「それで、そのおっさんがなんでブラントに?」
「君の行方を探しているようだった。君のお父さんが帝国の支援を得て王家復活を目指していて、君のことを心配しているとも。あと私にも、王家を復活する手伝いをしないかと」
「ふーん……それで?」
「言われた通りに答えておいたよ。言われたとおり半分真実を、半分は嘘を」
「半分の真実?」
「だから、王女は新しい政策の見せしめとして無理やり平民と結婚させられたってくだりさ。事実平民である私と結婚してるんだし嘘はついてない」
「無理やり平民と結婚ねぇ……ふふ」
「……」
意味ありげな笑みを浮かべる元ヴァラ王女。
「そうそう、私は反乱軍に捕らえられて、無理やり望みもしない平民と結婚させられた不憫な王女……ふふ」
「なんだその笑いは……。一応国内ではそういうことになっているんだから、わかったらさっさとご飯の支度」
「ブラントがやってよ、給仕でしょ」
「それは昔の話。今は夫婦」
二年前のあの日、ブラントとヴァラ王女の二人は謁見の間に再び連れ戻された。
ケマラがそこで告げた処遇はヴァラ王女から王女の権限を剥奪。反乱軍への恭順を示す意志として平民であるブラントと結婚するというものであった。
「わ、私がブラントと……」
「そうだ、まずは我らの思想に協調することを態度で示してもらう。それなら命は助けてもいい」
ケマラのその言葉にお互い顔を見合わせるブラントとヴァラ。だが、ブラントが前を向き、
「わかった、それで王女殿下の命を助けてもらえるなら仕方がない」
「んなっ!仕方がないって、ブラントあなたね!」
そう言ってブラントを蹴り始めるヴァラ王女を見てケマラは呆れながらため息をつく。
「結婚したあと二人は首都に住むことを禁止して田舎町に移ってもらう。ヴァラ王女に関しては俺が許可するまで自宅謹慎。引越しももちろん禁止」
「……わかったわよ、あなたの指示に従う」
いやいやそうにそう答えるヴァラ王女。だが、その口元がニヤついていることのをケマラは見逃さなかった。
「ブラントは……」
食事の準備をしつつ蚊の鳴くような声でブラントに尋ねるビビ。だが、いつもその次の言葉を言うことがどうしてもできない。
「あなたはどうなの?本当に仕方なくだったの?」
もし仕方なくだったと言われたら自分は……とそう考えてしまうのだ。
「ビビ?どうかした?」
「別に?何でもない」
と誤魔化すが、ブラント相手には誤魔化しきれなかったようだ。ブラントは何かを察したかのようにニヤニヤしながらヴァラの隣に座る。
「いかがいたしましたか?王女殿下」
「な!なにその呼び方……」
「そんなに心配しなくたって、仕方なく結婚したなどと思っていませんよ。ヴァラ王女」
「うっ……」
すべてを見透かされていたことに気がつき怒りと恥じらいで顔を紅潮させるヴァラ。
「あ、当たり前でしょ!私と結婚できたんだから」
そう強がるのが精一杯であった。
「それより、体の調子はどうだ?ヴァラ」
ブラントがヴァラの下腹部のあたりを見つめ、心配そうにいう。
「まぁ心配ご無用よ」
「それならいいけど……身重な体で無理は禁物だからな」
(完)
彼の家はスルタン田舎町の郊外である。町へ歩いて出向くには時間がかかるため数日分の物資を買って帰る必要があるが、慣れれば道は平坦だし苦になるような道のりではないと最近思えてきた。
「帰った、ビビ」
「お帰り。遅かったね」
「町で古い友人と会った」
家に帰ると反乱後に結婚した妻のビビが出迎えの代わりに声をかけてくる。
「古い友人?私も知ってる人?」
「どうだろう、君は知らないかも」
「そう言われると気になる……」
ビビの追求に根負けし、ブラントは話すことにする。
「ランヌっていう名前の、君のお父さんの部下だった……いや、今も部下の人さ」
「ランヌ、あぁ知ってるわよ。なんかあの笑顔が胡散臭いおっさんね」
「胡散臭いって……君の部下のような立場でもあるはずだけれど」
偽名で名前が変わっても、彼女の高飛車なところは本当に変わっていない。まるで王女だった時のままだ。
「それで、そのおっさんがなんでブラントに?」
「君の行方を探しているようだった。君のお父さんが帝国の支援を得て王家復活を目指していて、君のことを心配しているとも。あと私にも、王家を復活する手伝いをしないかと」
「ふーん……それで?」
「言われた通りに答えておいたよ。言われたとおり半分真実を、半分は嘘を」
「半分の真実?」
「だから、王女は新しい政策の見せしめとして無理やり平民と結婚させられたってくだりさ。事実平民である私と結婚してるんだし嘘はついてない」
「無理やり平民と結婚ねぇ……ふふ」
「……」
意味ありげな笑みを浮かべる元ヴァラ王女。
「そうそう、私は反乱軍に捕らえられて、無理やり望みもしない平民と結婚させられた不憫な王女……ふふ」
「なんだその笑いは……。一応国内ではそういうことになっているんだから、わかったらさっさとご飯の支度」
「ブラントがやってよ、給仕でしょ」
「それは昔の話。今は夫婦」
二年前のあの日、ブラントとヴァラ王女の二人は謁見の間に再び連れ戻された。
ケマラがそこで告げた処遇はヴァラ王女から王女の権限を剥奪。反乱軍への恭順を示す意志として平民であるブラントと結婚するというものであった。
「わ、私がブラントと……」
「そうだ、まずは我らの思想に協調することを態度で示してもらう。それなら命は助けてもいい」
ケマラのその言葉にお互い顔を見合わせるブラントとヴァラ。だが、ブラントが前を向き、
「わかった、それで王女殿下の命を助けてもらえるなら仕方がない」
「んなっ!仕方がないって、ブラントあなたね!」
そう言ってブラントを蹴り始めるヴァラ王女を見てケマラは呆れながらため息をつく。
「結婚したあと二人は首都に住むことを禁止して田舎町に移ってもらう。ヴァラ王女に関しては俺が許可するまで自宅謹慎。引越しももちろん禁止」
「……わかったわよ、あなたの指示に従う」
いやいやそうにそう答えるヴァラ王女。だが、その口元がニヤついていることのをケマラは見逃さなかった。
「ブラントは……」
食事の準備をしつつ蚊の鳴くような声でブラントに尋ねるビビ。だが、いつもその次の言葉を言うことがどうしてもできない。
「あなたはどうなの?本当に仕方なくだったの?」
もし仕方なくだったと言われたら自分は……とそう考えてしまうのだ。
「ビビ?どうかした?」
「別に?何でもない」
と誤魔化すが、ブラント相手には誤魔化しきれなかったようだ。ブラントは何かを察したかのようにニヤニヤしながらヴァラの隣に座る。
「いかがいたしましたか?王女殿下」
「な!なにその呼び方……」
「そんなに心配しなくたって、仕方なく結婚したなどと思っていませんよ。ヴァラ王女」
「うっ……」
すべてを見透かされていたことに気がつき怒りと恥じらいで顔を紅潮させるヴァラ。
「あ、当たり前でしょ!私と結婚できたんだから」
そう強がるのが精一杯であった。
「それより、体の調子はどうだ?ヴァラ」
ブラントがヴァラの下腹部のあたりを見つめ、心配そうにいう。
「まぁ心配ご無用よ」
「それならいいけど……身重な体で無理は禁物だからな」
(完)
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